イノセント・ラヴァー 〜クローン・トゥ・セラフ〜

*Nomad氏作「Clone」(99/12/8 ・http://www.mrdouble.com)
 を素材とする。




 私は、失った「自分」を取り戻しに行く…。

***

 いつもはこのメガロシティの都市ドームを押しつぶすかよう
に空を覆っている雲。なのに、今日はなぜか切れ間からまばゆ
い陽が射し込んでいました。
 もしその日射しが、ほとんどのオゾンを失った成層圏から強
烈な紫外線を運んでいなければ、もっと純粋に美しいと思えた
でしょうけれど。

 対紫外線防御を施した透明ドームによって、この超巨大都市
は守られています。あの忌まわしい大変動期を経て、人類はよ
うやく、繁栄を取り戻そうとしていました。
 でも、あの地獄の日々をくぐり抜けなければならなかった人
の心の傷は、まだまだ癒されはしなかったのです。
 そして、私も…。


 私は第3居住区のハイウェイチューブを抜けて、セントラル
プラザへ向かう道を、自動制御式のロボットカーを走らせてい
ました。一年中気温も湿度も調整されているシティを、私は人
目を避けるように黒いロングコートをまとい、サングラスまで
かけて、遠く見えてきたプラザビル群をぼんやりと眺めていま
した。

 そう、私は人目を恐れていたのです。
 この大都市で、誰も私の行動なんかに注意を払う人がいるは
ずもないことなんか、わかりきっているのに。それでもなお、
私はビクビクしていました。
 これから私がしようとしていることの異常さに、まるで全世
界の人々が嘲笑い、軽蔑の後ろ指をさしているような気がして
仕方なかったのでした。

 セントラルプラザの中央タワービルは、現代のバベルの塔の
ごとくにそびえ立っていました。その下を多くの人々がせわし
なく移動しているのが目に入ります。あの人々の多くも、あの
大変動を経験している。ほんの十数年前に過ぎないというのに、
まるで全てを忘れてしまったかのような街の喧噪。
 でも、私と同じようなトラウマを抱えている人はたくさんい
るはず。口には出さないだけで、きっと。

***

 やがて私のロボットカーは、セントラルプラザの外れにある
前時代的なクラシックビルの前に停まりました。大変動期の異
常気象と、それが引き金になって起こった戦争と、そして22
95年から始まった都市復興計画の荒波から生き残った、貴重
なビルの一つ。
 もちろんこのビルが、昔のままなのはファサードだけで、そ
の内部が最先端の科学的医療機能を備えたスーパーインテリジ
ェントビルであることは、このメガロシティの住人なら当然周
知のことです。それでもその外観を眺めながら、昔は自然石の
ブロックだけでビルを作った時代があったなんて、私にはなか
なか実感として信じられませんでした。

 車を駐車場に停めて、私はコートの裾をギュッとよせながら
車を降りました。あたりには人影はほとんどなかったのに、私
はあいかわらず人目を気にしたまま、うつむき加減で足早に御
影石造りの階段を登っていきました。顔が真っ赤に火照ってい
るのがはっきりわかるほどに、私は緊張し、羞恥心に苛まれて
いたのでした。

 中のロビーには、何人もの人が行き来しています。自分のこ
としか頭にないような無表情の人々の中、私は受付のセンサー
にカルテ・カードをかざしました。その中には自宅での遠隔ネ
ットによる精神科医の診断データが入っているのです。

 ロビーの待合室で椅子に座りながらも、私はずっと居心地の
悪さを感じずにはいられませんでした。そばを人が通るだけで
も、ビクッと身を固くしてしまうほどに。

 さいわいすぐに番号が呼ばれ、私は駆け込むように指定の問
診ブースのドアをくぐりました。私の心臓はすでに、口から飛
び出てしまいそうなほどに高鳴っていました。

***

 個室トイレほどしかない大きさのブースは、がらんとしてい
ました。椅子と、座った状態で目の高さの所にあるレーザーセ
ンサーと、肘掛けのところにある掌紋照合システムだけ。
 椅子に腰掛けた私は、この日初めて、ようやくサングラスを
外しました。

『市民医療サービスセンターにようこそ。ミス・エリカ・フジ
ワラ・エマーソン』

 レーザーセンサーが私の全身の健康状態をチェックし始める
のと同時に、柔らかな女性の声でコンピュータが語りかけてき
ました。

『掌紋照合システムに右手をかざしてください』

 指示に従ってシステムの液晶画面に手をかざしながら、私は
レーザーセンサーのまぶしさに思わず目を閉じました。

『あなたのカルテは確認されました。精神科の認証に従い、必
要なものを準備いたします。あなたのご希望をどうぞ』

「…これのプライバシー保護は、どうなってるの?」
 相変わらずの不安におののきながら、私は不必要なほど慎重
になって確認しようとしました。

『あなたの選択したキーワード、および128種類の音声パタ
ーンで、二重に暗号化されています。ご安心下さい』
 そう、コンピュータが保証しました。

 息が詰まりそうになって、私は無理に一回咳払いしました。


「…私自身の、クローン人間を造ってください。…12年前の、
10歳の時の私を」


 激しい心臓の鼓動の中、私は絞り出すように呟くのが精一杯
でした。

 短い沈黙の中、私の心音がやけに大きく響いていました。そ
れが10回目の脈を打った瞬間、返事がかえってきました。

『あなたのクローン体は、セントラルに保管されている遺伝物
質からすぐに提供できます。クローン体には基本的な知識を与
えておきますか?』

「!…お願いします」

『医療条例第361条により、あなたはクローン体を8時間、
自由に扱うことが許されます。なお、その後クローン体は化学
的に処分されます』

「…」
 化学的に処分、という言葉がやけに重く響きました。

『赤のエレベーターでレベル5に降り、5306号室にお入り
下さい』

 早鐘のように鳴り続ける心臓に耐えきれず、慌てて立ち上が
った私に、コンピュータが勧告してきました。
『少し気持ちを落ちつかせるよう、おすすめします』

 ハッとして我に返った私は、大きく深呼吸しました。レーザ
ーセンサーに私の身体の興奮を全て感知されていたことに気づ
き、私はまた赤面してしまいました。
 私は慌ててブースを出て、再びサングラスをかけながら、指
定の赤いエレベーターを探したのです。

***

 地下に降りたエレベーターの扉が開きました。廊下には人の
気配もなく、静まりかえっています。
 指定の部屋にたどり着くまで、私はまるで何キロも歩いたか
のような気がしていました。

 5306の番号がうたれた扉の前で、私はためらいに立ちつ
くしました。
 何度も何度も深呼吸しました。サングラスを外しました。
 もう一度深く息を吸って、私はやっとドアに近寄りました。

 識別システムのレーザーが私に焦点を合わせてきました。そ
して、ドアロックがガチャッと音を立てて外れました。
 ノブを握り、私はドアをゆっくりと開けたのです。
 私の、運命の扉を。

***

 小さな一人用病室くらいの大きさの部屋は、やや暗めのシー
リング照明で照らされていました。クリーム色の室内は、洋服
掛けスタンドとインターホン、そして、中央に固定されている
大きめの医療用ベッドだけの殺風景さ。

 そして、ベッドの上には、生まれたままの姿の幼い少女が、
身体を丸めるようにして横たわっていました。
 それが、かつての「わたし」だったのです。

 私と同じつややかなストレートの黒髪は、私よりはちょっと
短めの、肩越しまでの長さ。そして、日系人らしい幼げな顔立
ち。きめ細やかな白い肌は、しかし唯一、私の褐色の肌とは違
って、少しも陽に灼けてはいませんでした。

 息を呑み、おそるおそる、私はベッドに近寄りました。そし
て、天使のように愛くるしい少女の寝顔をそっと覗き込みまし
た。
 …ああ、私はその顔を、よく覚えています。
 それは、確かに12年前の自分でした。

 故郷からの逃避行の間に、たった一度だけ、小川に飛び込ん
で全身の汚れを全て洗い落とし、そしてふと見下ろした水面に
映っていた自分の顔。その一回だけが、10歳の自分を自覚し
た一瞬だったのです。

 私は眠る少女の傍らにそっと腰を下ろしました。その無垢な
寝顔を見つめているうちに、この少女への、許されるはずのな
い感情が胸の中に沸き上がってくるのを、どうしようもありま
せんでした。
 私は唇を噛んで、この少女をどうやって目覚めさせようかと
思案しながら、そっと手を差し伸べようとしました。

 その時、少女の口から「…ううん……」と微かな呻きが漏れ
ました。
 私は、伸ばしかけた手をハッと引っ込め、じっと見つめまし
た。
 少女は折り曲げていた両脚を伸ばして、軽くあくびをしなが
ら、ゆっくりと目を開きました。そして、いぶかしげに私を見
つめてきたのです。

「…おはよう。おねえちゃん、だれ?」
 ニッコリ笑って呼びかけてくる「わたし」。

「…おはよう、お嬢ちゃん」
 私も笑顔で答えました。二人の声は、12年の時を隔ててい
ても、よく似ていました。
「わたしはあなたを、長い間ずうっと探していたの…」

「ここ、どこなの?」

「私たち二人だけの、秘密のお部屋よ」

「ふうん…」と答えた少女は、ハッとして身を縮め、両脚を折
り曲げて膝を寄せ、両腕で胸を隠そうとしました。自分が全裸
であることに気がついたのです。

「あたし、どうしてハダカなの?」
 頬を赤く染めて、少女は目を逸らしました。

「ここでは、要らないからよ」
 そう言いながら、私は自分のコートを脱ぎました。
「女同士でも、やっぱり恥ずかしい?」

 少女はコクンとうなずきました。
 私は立ち上がって、コートをスタンドに懸けました。

「…あなた、とってもきれいよ」
 落ちついたふりをしながらも、ワナワナと手が震えてベスト
のボタンをなかなか外せなかった私は、それだけしか言えませ
んでした。

「そうかなあ?」
 少女は両腕をゆるめ、自分の身体を見なおそうとしました。
ふくらみかけたつぼみのような乳房と、桜色の乳首が腕の間か
らこぼれるのを、私はついうっとりと眺めていました。

 少女は自分の指先からひじ、肩口にと視線を移し、そして自
分の胸を見つめました。まだ幼いスレンダーな身体は、女性ら
しい豊満さにはほど遠く、それが少女には少々物足りなげでし
た。というのも、少女はすぐにベストを脱いだ私の胸をうらや
ましそうに見やったからです。

 肩パットの入ったレザーのベストをようやく脱いで脇に置い
た私は、今度はベルトを外してレザーパンツのジッパーを下ろ
しました。
 ロングブーツと一緒にパンツを脱いだ私の下着姿を、今度は
少女が突き刺すような目でじっと見つめる番でした。その熱い
視線を浴びた私は、大胆になって、黒いレースのブラとパンテ
ィを、わざとゆっくり脱いでいきました。

「わあ…、おねえちゃん、きれい!」
 少女が息を呑んで、そう言ってくれました。

「ありがとう」
 少女の言葉に、私は胸の奥がキュッと締めつけられるように
疼きました。
 少女と同じく生まれたままの姿になった私を見て、ようやく
少女もホッと安心したようでした。

「大きくなったら、あたしもおねえちゃんみたいにきれいにな
りたいな」

 無邪気なその言葉が持つ意味の重さに、私は思わず目を閉じ
ました。
 さっきのコンピュータの声が一瞬よみがえりました。

『8時間』
『化学的に処理』

 が、すぐにその想いを振り払って、私は少女に近寄ると、ベ
ッドに上がりました。

 それは不思議な光景だったでしょう。ベッドに横たわってい
る二人は、十年の時間を越えた同一人物。そして二人は、これ
から一つになろうとしているのです。

***

「くしょんっ」
 病室のひんやりした空気のせいでしょうか、少女が可愛いく
しゃみをしました。私は少女のそばに身体を寄せました。

「寒い?」

「うん、ちょっと」

「だいじょうぶよ。二人で、暖めあいましょうね」
 私は自分でも驚くほどに大胆になって、そう囁きました。私
はそっと右手を少女の太股に当てて、だんだん上へと撫でさす
っていきました。

 少女は頬を赤くしながら、不安げに私を見つめていました。
「おねえちゃん…」

「心配しないで。いっしょに気持ちよくなるの。私、あなたが
大好きなのよ」

 そう言いながら、私は少女に顔を寄せて、鼻の上に口づけし
ました。
 少女の息づかいが私の頬にかかり、それに応じるように私の
熱い息が少女を包みました。

 そして、私たちの唇が重なりました。最初は触れあう程度の
キス。でもすぐに、とまどいに震えている少女の小さな唇を、
私はむさぼるようにしゃぶり、舌を差し込みました。
 少女も舌をおずおずと絡めてくると、私の全身に火花が走っ
ていきました。そして、幼く未発達な身体をよじらせる動きか
ら、少女も私と同じ感覚を味わっていることに、私は気づきま
した。

 同時に私は、少女の身体を指で撫で上げていました。まだ骨
盤の感触がわかる細く肉薄の腰、なだらかな曲線を描くウエス
ト、そして脇腹からあばらの下端にと、順々に。
 最後に、二人で舌を絡み合わせたまま、私は指を少女の乳房
に這わせました。まだふくらみかけの乳房を下からやさしく揉
み上げるように、そして敏感なちっちゃな乳首を指先でくすぐ
りました。

「ん、むぐうっ!」
 キスしたままの私の口の中に、少女は激しく息を吐いて身を
よじりました。人差し指と中指で挟むようにして捏ねるように
揉みしだくと、少女のつぼみのような乳首は固くしこってきま
す。私には、10歳の自分が感じるところが手に取るようにわ
かりました。

「うくぅ…あああんっ!」
 我慢できなくなった少女が、とうとうキスする口を離して身
をのけぞらせ、大きく喘ぎ声をあげました。その姿と声を、私
は目と耳にしっかりと焼き付けていました。

 頬を上気させた少女に、私は耳打ちしました。
「ねえ、あなたも、さわってみる?」

「え?」

「さっき、ずっと私の胸を見てたでしょ?」

 その言葉に、思わず目を伏せる少女。でもそれが本当だった
ことは、少女がうなずきながら開いた瞳が、私の胸をまたじっ
と見つめたことで明らかでした。
 私は仰向けに横たわり、挑発するように両腕を頭の上にやっ
て、乳房を突き出すようにしました。

「さあ、いいのよ」

 身を起こした少女は、震える手をゆっくりと伸ばしてきまし
た。小さな白い掌が乳房の上に近づいてくるのを、ゾクゾクし
ながら待ちわびる私。
 ついに、その無垢な指先が触れ、そのまま乳房の曲線をなぞ
っていきます。私は思わず喘ぎ声を漏らしてしまいました。

「おねえちゃんのおっぱいって、とってもおっきくて、やわら
かいね…。あたしも大きくなったら、こんなきれいなおっぱい
に、なれるかな?」
 まるで夢を見ているかのように、少女がうっとりとつぶやき
ました。

「きっとなれるわ」
 そう、微笑みながら答えた私のお腹の上に、少女はまたがる
と、私の両方の乳房を両手を使って揉み始めました。まだヘア
も生えていない秘所が私のウエストに密着してきて、そこがま
るで火がついたように熱く感じてきました。

 少女は夢中になって、前屈みになって上半身の体重をかける
ようにしながら、小さな手で乳房を揉み続けました。激しい息
づかいのリズムに合わせるようにして、まるでパイ生地をこね
るように、少女が激しく私の乳房を揉みしだくたびに、私は快
感にむせび、嬌声をあげていきました。

「もっと、もっと力いっぱい、してぇ!」

「おねえちゃん、やわらかくって、気持ちいい!」

 そして私はとうとう、そのまま悦楽の波に全身を洗われ、身
をのけぞらせ、まだ何も知らない幼い少女の指によって、最初
の絶頂に導かれてしまったのでした。

***

「…おねえちゃん、だいじょうぶ?」

 私によく似た声が、呼びかけてきました。記憶の奥からよみ
がえった、無垢な声が。

 一瞬、意識を失いかけた私でしたが、何度もまばたきしてか
ら、私はニッコリと微笑みかけました。安心してほっとした顔
で微笑みを返す少女に手を伸ばし、その柔らかな髪と滑らかな
頬を私は撫でてやりました。

「よかった、心配しちゃったんだよ、おねえちゃん。急にぐっ
たりして動かなくなっちゃうんだもの。死んじゃったかと思っ
ちゃった」

 まだ瞳に不安を浮かべている少女の優しさと思いやりに、私
は胸が熱くなりました。

「とっても気持ちよかったの」
 そう言いながら私はゆっくり身を起こし、いきなり身体を入
れ替えて、少女の上にのしかかりました。

「きゃっ、おねえちゃん?」

「今度は、私の番よ。あなたも、気持ちよくしてあげる」

 さっきの少女と同じ体勢になって、私は少女の上にまたがり
ました。期待と不安に身を固くしている少女の小さな未発達の
乳房に、私は両手を伸ばして揉みほぐすように指を動かしなが
ら、愛らしい乳首を弄びました。その感触に喘ぐ少女を限りな
く愛おしげに見下ろしながら、自分も10歳の時には自分で乳
首をいじるのが密かにお気に入りだったことを、私はぼんやり
思いだしていました。

 少女にのしかかって密着すると、私は舌で可愛い乳房を舐め
ました。ハッと息を呑む少女の、今度は乳首をくわえて吸い、
何度もしゃぶりました。
 その行為に、私の心臓はまた鼓動を早めました。

 胸の谷間からゆっくりお腹にと顔を下げていき、おへそを舌
でねぶると、少女は大きく喘ぎました。

「これから、私がどうすると思う?」

「…どうするの?」

 その問いかけには答えずに、私はさらに身体を下にずらし、
少女の両脚を開かせました。その細い太股を撫でながら、私は
また10歳のころの自分を思い出しました。まだまだ女性とし
て未分化な体つきが、逆に身に降りかかる災難から私自身を守
っていたのです。
 あの不幸な記憶を振り払うように、私は首を振ると、半分濡
れかかっている少女の幼いスリットを見つめました。

「もっと、よく見せてね」
 そして、12年前の自分の秘密の場所に、私はそっと口づけ
しました。

「あんっ!」
 ビクンッと反応する少女の、今度は、固く閉じたスリットに
沿って舌を這わせます。

「いやっ…!」
 思わず閉じようとした両脚を押さえながら、安心させるよう
にほおずりすると、少女の力も少し抜けたようでした。

 舌を使って陰唇を押し開くと、小さな宝石のような肉芽がや
っと見つかりました。これが自分のと同じクリトリスだと思っ
て、私はドキドキしながら舌を伸ばして弄びました。

「ああん、すごい、ジンジンするよぉ!おねえちゃん、これ、
なんなの!?」
 少女が激しく身をよじりました。

 こんな幼い身体でもちゃんと感じさせることができると知っ
て、私は何も言わずに口いっぱいにしゃぶりつきました。ミル
クのように甘い味をむさぼりながら、私は何度も何度も舌先で
少女のルビーを刺激していきました。

 少女の喘ぎがだんだん激しくなり、シーツを握りしめたまま
身をよじって叫び出しました。

「おねえちゃん、あたし、変になっちゃうぅ!…はああんっ、
おなかが、はじけちゃう!」

「いいのよ、そのままイッてっ!」

「ああ、あ、あああああんっ!!!」

 少女が大きな叫びと共に、全身を弓なりにのけぞらせて硬直
させました。
 その瞬間、私の口の中にどっと甘い蜜が溢れ出てきました。
生まれて初めての絶頂に全身を貫かれて放心する少女の姿に、
その快楽を自分がもたらしてあげたことの誇らしさに、私は夢
見心地のまま、少女の愛液を味わい続けていたのです。

***

 互いの息づかいと、体温と、滑らかな肌触りを感じながら、
私たちは抱き合っていました。上気した頬を私の乳房にすり寄
せる少女の細く華奢な肢体を、私はそっと撫でました。

「…初めてイッたのね」
 当然のことをわざと言いながら、私の手は少女のほっそりし
た腕から愛らしい胸の谷間へとなぞっていきました。

「あれ、イクって言うの?」
 少女が瞳を潤ませて、私を見上げました。

「気持ちよかった?」

「うん…、おなかの中がカッと熱くなって…、なんだか飛んで
いっちゃうみたいだった」
 そう言って言葉を切った少女が、ちょっと悪戯っぽい笑みを
浮かべて囁きました。
「ねえ、おねえちゃん…、女の子どうしで気持ちよくなるの、
これって『れずびあん』っていうんでしょ?」

「そんなことまで知ってるの?おませな娘ね」
 人工的にすりこまれた基本知識に性知識がきちんと入ってい
るのも当然か、と私は思いました。けれど、同性愛者があいか
わらず社会の異物として見られがちな中、私はふと不安になり
ました。

「女同士なんて、いや?」

「そんなことないよ、おねえちゃん、とってもきれいで優しい
もの。大好き!」

 その言葉に、私はたまらなくなりました。もっともっと、こ
の小さな天使と一つになりたい!

 私は再び少女に熱いキスをしました。今度は少女の方からも
積極的に舌を絡めてきます。離した二人の唇に一筋、さっきの
愛液の残りが混じった唾液の糸が伸びて、キラキラと光りまし
た。
 そのまま少女は、私の乳房にしゃぶりつきました。母親に甘
える赤ん坊のように、少女は私の乳首をくわえて、かわいい舌
で舐め回します。
 もう片方の乳首も手で刺激され、私はたまらなくなって身を
くねらせました。

「お願い、さっき私がしてあげたこと、お嬢ちゃんも私にして
くれる?」

 喜びと不安の入り混じった顔で、少女は身を起こしました。
「さっきのって…」

 私は長い脚を開き、黒いヘアに彩られた秘部を少女に向かっ
て露わにしました。
「ほら、ここよ」

 少女は息を荒くしながら、ゆっくりと身を屈めてきました。

「だいじょうぶよ、うまくできるわ」
 そう言いながら、私は少女の髪を撫でるようにしてそっと引
き寄せました。そして片手で自分のヘアをかき分け、濡れたプ
ッシーを指で押さえました。
 それを見つめる少女が、ペロリと舌舐めずりしました。この
小さな舌が私の秘部を舐めてくれると思っただけで、私は身体
じゅうが疼いてしまいました。

「お願い…!」
 私はもう我慢できなくなって、目に涙を溜めて、幼い少女に
向かって、はしたなくおねだりしてしまいました。

 とうとう、少女の小さな舌先が、私の肉襞の上をなぞりまし
た。まるで感電したかのように全身をビクンッと痙攣させた私
は、大声で絶叫してしまいました。太股で少女の頭をギュッと
挟みこみ、両手を使って押しつけると、少女は愛らしい口をい
っぱいに開いて、私の花弁を一生懸命しゃぶってくれます。可
愛い舌が肉唇を押しのけて奥に入ってくると、私はのたうち回
って喘ぎました。

「いい、いいのお!…ああ、夢みたい…、私の、けがれない、
天使…、私、わたし…あうっ!」

「おねえちゃん…!」

 天国に飛んでいくような感覚に、私は震えながらむせび泣い
ていました。
 少女の舌が、肉の内奥からゆっくりと上の方に滑ってきまし
た。全身の神経が悲鳴をあげ、肺の奥から全ての息が絞り出さ
れると共に、私は喘ぎました。少女の舌先が、もうすっかり腫
れあがった私の宝珠を転がすように弄ぶたびに、私は悦楽の海
にひたされ、快感の大波に洗われました。

 そして、少女の小さな前歯が私のクリトリスをキュッと甘噛
みした瞬間でした。私は全身が溶けてしまうようなほどの荘厳
な法悦に全身を貫かれました。ひきつった身体が反動で力を失
い、ひくひく痙攣する四肢から伝わる情熱の残り火を味わう私
を嬉しそうに見つめながら、少女は私の秘部から止めどなく流
れる蜜の激流を、一滴もこぼすまいと息もつがずに飲み干そう
としていました。

 蒸気機関のような私の激しく荒い息づかいと、ミルクを舐め
る猫のような少女の舌の音だけが、静謐で殺風景な病室の中に
満ちていきました。

***

 もう何回の絶頂を与えあったかもわからなくなるほど、私た
ちは何時間もずっと愛しあいました。このベッドの上だけが、
私たち二人の世界でした。
 私が仰向けになって少女が顔の上にまたがり、シックスナイ
ンになって互いを同時に舌で奉仕しあい、同時に絶頂に達した
り。
 少女の全身を私の乳房だけですみずみまで愛撫してやり、つ
いには乳首で少女の秘部を刺激してイカせてあげたり。
 開いた脚を互い違いに組み合わせ、互いの秘部を、互いの宝
珠を擦りあわせたりもしました。

 つい数時間前までは何も知らなかった幼い少女は、今やすっ
かり同性の愛撫に夢中になっていました。正直に言えば、私も
実際には女の子との体験は無いに等しかったのに、それがこん
なに自然にできるなんて、自分でも信じられませんでした。


 嵐のような性の饗宴が、ようやく和らぎました。少女を腕に
抱き、その柔らかく暖かな素肌の感触に満ち足りていた私の目
に、ふとインターホンの液晶表示に表示されている残り時間が
目に入りました。

 あと、二時間…。

 なぜ、こんなにせつないんだろう。この娘は、人工的に造ら
れた、私の過去の複製に過ぎないのに。

 人権が認められないクローン人間は、本来は存在してはなら
ない。ただ、私のように精神的な治療を要する者のためにわず
かに利用されるに過ぎない。だから、規定の時間が過ぎたクロ
ーン人間は「化学的に処理」される。
 そう、処理槽で溶かされ、原形質に還元されてしまう。
 治療がさらに必要と認められれば、その時に改めて新たなク
ローンが調製される。

 そう、それで問題ないはずだった。私も、それを承知でここ
に来たはずだった。

 なのに、なぜ、こんなに苦しいの?
 私は、思わず少女を抱きしめていました。

 その時です。少女が私に語りかけてきました。

「おねえちゃん、あたし、わかってるよ」

「…!?」

「あたし、人間じゃないんだよね。おねえちゃんからつくられ
た、『くろーん』なんでしょ?」

「どうしてそんな!?」

「だって…わかるよ。おねえちゃん、あたしよりおっきいだけ
で、髪も、お肌も、声も、においも、…あそこの味まで、みん
なおんなじなんだもん。…なのにあたし、おねえちゃんの名前
も、…自分の名前だって知らないんだもの!」

 少女がしがみつくように私の胸に抱きついてきました。私の
目から、涙がこぼれました。

「ごめんね、私のために、勝手にあなたをつくって、勝手にも
てあそんで、そして…。こんなの、許されないよね。許してく
れないよね。…でも、私は…」

「あやまらないで、おねえちゃん。あたし、おねえちゃんが好
きだもの。いっぱい気持ちいいことしてくれて、あたしもおね
えちゃんを気持ちよくさせられて、とってもうれしいの。おね
えちゃんも、あたしを好きになってくれたんでしょ?」

「好きよ、…あなたが好き」

「おねえちゃん…!」

 いつの間にか少女も、瞳に涙をあふれさせていました。私た
ちはベッドの上に起き直り、しっかりと抱き合って熱い口づけ
をかわしました。
 全てを打ちあけよう。私が一つの決心をしたその時、少女が
また語りかけてきました。

「…ねえ、おねえちゃん、教えてくれる?なぜ、あたしは生ま
れたの?」

***

 12年前の大変動期。

 その時、10歳の私は南米に住んでいました。しかし、急激
な気候変化からでしょうか、すさまじい伝染性の疫病が大地を
席巻し、同時に各地で紛争がおこりました。人々は住み慣れた
土地を捨て、混乱の中で北へ北へと脱出を図りました。
 私の両親も私の手をとり、脱出行に加わりましたが、途中メ
キシコで力尽き、相次いで帰らぬ人となりました。私は異郷の
地で、天涯孤独になったのです。

 孤児となった私は、ただ、生き延びることだけを目的に、難
民として日々、北への旅を続けました。

 私は髪をわざとみっともなくズタズタに短く切りました。顔
や手足には泥を塗り、身体中を油と煤で汚しました。性別すら
もわからないほどに。とりもなおさず、難民の男たちに目をつ
けられてレイプされないためです。極限状態に置かれた男たち
は、たとえそれが幼い少女であろうと、少年であろうと、見境
なく性欲のはけ口にしたものでした。
 中にはそれを逆手に取り、幼い身体を利用して、食糧などを
確保していた少女もいました。でも、私はそんなの真っ平でし
た。
 私は目立たないように振る舞い、男たちの獣欲をかき立てな
いように姿をカモフラージュし、口すらもきかないようにして
いました。

 幸い、その苦労は実を結び、難民キャンプに到着して安全が
保証されるまで、私は自分自身の純潔を守りきることができま
した。
 社会の混乱がようやく落ちついた頃、幸いなことに私は改め
て教育を受けられるようになり、それに伴って生活環境も与え
られ、奨学金によって経済的な問題を抱えることなく生きてい
けるようになりました。
 大学に飛び級で入学し、優秀な成績を収めて卒業し、それな
りの社会的な地位のある職に就くこともできました。

 しかし、あの10歳の頃の悲惨な日々は、決して忘れること
はできませんでした。そしてそれは私の精神をゆっくりと、深
く蝕んでいたのです。

 私が男性恐怖のあまりに、女性しか愛せない同性愛者になっ
たことは、怪しむことではないでしょう。あんなにケダモノの
ような男の性欲に怯える生活をしていたら、当然のことです。
 しかし私はそれ以上に、自分の「実体を隠す」生活が染みつ
いてしまいました。そして、自分を別の何かに「カモフラージ
ュ」して他者と接するのが当然になっていました。心に厚い仮
面をかぶり、誰にも心を許せず…。それは、深く静かに、私の
アイデンティティを侵蝕していきました。

 私は他人と接することが出来なくなり、自宅から一歩も出ら
れなくなり、生活に齟齬をきたすようになっていきました。失
われた10歳の悪夢が、私の全てを破壊していきました。さら
には、過剰に自分を守り通したことが、抜き差しならない自己
愛の泥沼にまでも私を引き込んでいたのです。
 でも、その悪夢を消し去り、自分の手で抹消した10歳の自
分自身を取り戻すのは、今となっては不可能なことでした。時
間を元には戻せないのですから。

 その時、最後の手段として精神科医からカウンセリングされ
た方法が、これだったのです。

 10歳の自分自身のクローン体をつくり、それと向き合い、
自分のものにすること。
 10歳の自分が悪夢にさいなまれていた過去を消し、自らの
手で至福の中に導くことを、肌で実感すること。
 そうすることで、自分自身の過去を征服することによって、
自分の心を閉ざすものを克服できるかもしれない…。

 私は、藁にもすがるつもりで、この勧めを受け入れました。
もっともそれは、自分が同性愛者であることと、私自身がナル
ティシズムの虜になっていたことを逆手に取った、ある種危険
な賭けでもありました。

 そして、それは、見事に成功したのです。
 そう、今のところは…

***

「…あなたは、私の心の傷を癒すために、それだけのために造
られたの。私の自己愛を満たし、ゆがんだ欲望の対象として。
ただ、それだけのために…」

 少女はじっと、うつむいたまま、残酷な事実を聞いていまし
た。私は床にへたりこんでしまいました。

「ごめんね…、ごめんね…!」
 私はもう、そう呟くしかできなくなっていました。

 その時、少女が顔をあげました。ああ、その顔…!
 少女はニッコリと微笑んでいたのです。

「…おねえちゃん、お病気、なおったんだね。…よかったね」

「!!」

「あたし、生まれてきて、おねえちゃんの役に立ったんだね。
…とっても、うれしい…!」

 私は、天使の降臨を見ました。そう、少女はまさに、天使で
した。その神々しい微笑みは、光り輝いていました。

 そして、気がつきました。
 私は、この少女を愛している。何よりも。誰よりも。

 頬を涙に濡らして、私は再び少女を抱きしめました。
 とても不思議な気分でした。自分のクローン人間というゆが
んだ意識は消え、ただひたすら、この少女を愛おしく思いまし
た。ただ、それだけを。

「…あたしの役目は、終わったんだね」

 その言葉に、心臓を突き刺されたかのようにハッとした私の
耳に、いきなりインターホンが鳴ったのです。バッと立ち上が
って私は受話器を取りました。

『ミス・エマーソン、終了時刻まであと一時間となりました。
そろそろ…』

「おねがいっ!!この娘を、殺さないで!!!」
 私はコンピュータの声をさえぎり、絶叫していました。私の
声から精神状態を分析しているのか、インターホンは沈黙が続
きました。私の喘ぐような息づかいだけが響いていました。

「…お願い、私、何でもします。どんなことでもします。どん
な責めでも受けます。でも、この娘は助けて…。私、耐えられ
ない…。もう、この娘じゃないと、私、ダメなんです。…愛し
ているんです!」

 振り向いた私の顔を、少女は涙を流して見つめていました。

『医療条例によって、クローン体を一般社会に出すことは禁止
されています』
 コンピュータの冷たい返事が返ってきました。
 しかし、私がすがるように言い返そうとした時です。

『ただし、医療条例第361条、附則2に、医療機関が治療に
必要と認めた場合、移動の制約と行動の管理を条件に、クロー
ン体の維持を可能にできる方法があります』

「そ、それって!!」

『この例外措置には、高額の保証金が必要になりますが、よろ
しいですか?』

「…もちろんです!」
 全財産をはたいたって、惜しいはずがない!!!

『あと、問題がもう一つあります』

「!…なんですか?」
 私は恐る恐る訊き返しました。

『10歳児向けの子供服一式は、別料金になります』

 私は、思わず脱力したまま笑いました。

『では、あと一時間です』
 そう言って、インターホンが切れました。
 私はベッドに戻りました。不安げな表情の少女に「希望」を
伝えるために。

***

 残りはあと、一時間を切りました。心の中の暗雲もすっかり
晴れた私たちは、最後にもう一度、濃厚な愛を交わし合いまし
た。何ひとつ隠すこともなく、利害のためでもなく、ただ、純
粋な恋人同士として。

「ああ、おねえちゃん、あたし、またイッちゃう!」

「私も、私もイクうっ!愛してる、愛してるっ!!」

「大好きっ、だいすきぃっ!!」


 愛欲の残り火をゆっくりと味わいながら、私たちは静かに抱
き合っていました。互いの身体の火照りと、汗と愛液に濡れた
肌のぬくもりと湿りと、激しい息づかいと甘い性の香りを感じ
あいながら。

「ずっと、ずっと一緒よ」

「うん、ずっといっしょだね」

 そう言った少女は、ハッとして顔を上げました。
「…いっけない、大事なこと忘れてたよ!」

「え、なに?」

「おねえちゃんの名前、まだ聞いてない!」

 私は思わず、ぷっと吹き出しました。私の笑い声に、つられ
て少女も笑いました。

「ふふ…。私はエリカ。エリカ・フジワラ・エマーソンよ」

「エリカおねえちゃん、かあ…」

 私の名前を噛むように反芻する少女に、私は言いました。
「私も一つ、忘れてたわ」

「?」

「あなたに、すてきな名前をつけてあげなきゃね。あなたはも
う、エリカの複製なんかじゃないんだから」

***

 ハイウェイチューブに入ってマニュアルから自動制御に切り
替わったロボットカーは、夜のメガロシティを後にしました。
ライトアップされたセントラルプラザの摩天楼がバックミラー
にゆっくりと小さくなっていくのが、もうサングラスの必要が
なくなった私の目に映りました。

 ハンドルから手を放して、シートに深くもたれかかった私の
腕を、横に座った少女がそっと抱きしめました。
 医療センターが用意したわりにはずいぶんと可愛らしい、真
っ白なドレスに身を包んで、少女は夢見心地で頭をもたれてき
ました。
 でも家に戻ったら、せっかくの素敵な服だけど、しばらく着
ることはないかもね、などと私は考えていました。実際、服を
着る暇なんかないくらいに、愛してあげたくって仕方なかった
のです。

 私は少女の艶やかな黒髪を指で撫でながら言いました。
「…アンジュ」

「?」

「あなたの名前よ。あなたは私の天使だから、アンジュ」

 わずかな沈黙、そして。


「エリカおねえちゃん…」

「アンジュ…、わたしのアンジュ…」


 永遠の愛を誓い合った私たちに、それ以上の言葉はもう必要
ありませんでした。
 口づけをかわしながら抱き合う私とアンジュを乗せて、ロボ
ットカーは夜の闇に溶けていったのです。



完(01・1・10脱稿、03・10・24改稿)

*初稿ではアンジュの年齢を「12歳」に設定していましたが、
 続編を構想する上での問題点となりましたので、本第1話及
 び第2話の改稿において、アンジュの誕生時肉体年齢を「1
 0歳」に修訂しました。お読みの皆様のご寛恕をお願いいた
 します。

「エンジェル・アニヴァーサリー」に続く


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