超鋼美神☆クイーンズ・ビー

 第1話:2時間スペシャル「機神再臨 / 重甲顎蟲怪獣ラールヴァ登場!」 



***

「ねえ、咲季」

「なに、お姉ちゃん?」

「バイト、やんない?」

「何のバイト?取材の手伝い?校正はもうやだよ」

「会社の仕事じゃないんだけど」

「じゃ、なんの?」


「超巨大戦闘ロボット『クイーンズ・ビー』の、操縦者」


「…」

「…」

「…どう?」

「…時給、いくら?」

***

 宇宙の彼方から、大彗星ツィフォンが太陽系に接近してきた
とき、人々は悠長にも天文イベントが一つ増えた程度にしか考
えていなかった。
 「大彗星」と思われていたツィフォンが、実は広大な範囲に
わたって集合した小惑星クラスの隕石群だと判明したあとも、
人々は「大彗星」という誤った呼び名を変更しようともしなか
った。
 ツィフォンが海王星の引力を受けて軌道を変え、土星軌道の
そばで太陽を巡る小惑星帯になった時には、人々はさらにのん
きにも、「太陽系に新たな兄弟ができた」とお祝いする始末だ
った。

 だが、ようやく人々の顔色が変わる時が来た。
 大彗星ツィフォンから、一個の巨大飛行物体が、恐るべき速
度で地球に飛来したのだ。
 それこそ、ツィフォンの巨大生命体、宇宙怪獣の襲来だった。

 日本近海に落下した巨大宇宙怪獣は、やがて大都市東京に上
陸し、その恐るべき巨躯をとどろかせて市街を蹂躙した。
 悪魔の化身ともいうべき黒いシルエット。コウモリにも似た
巨大な翼がビルディングをトランプタワーのようになぎ倒す。
 邪悪な爪と角と、牙。
 深くひび割れた皮膚。
 全身からは強酸性の体液を滴らせ、有毒ガスをまき散らし、
鋼鉄の街を腐食させていく。

 「アスタルテ」と命名された大怪獣の破壊を、人類は抑止す
ることすらもできなかった。

 まさに「天譴」。
 まさに「神の鞭」。
 地上は滅びの時を待つしかなかった。

 そのときだった。

 天と地が歪み、時空に門が開いた。
 大地が震撼し、旋風が大気を切り裂いた。

 そして、砂塵が収まったとき、宇宙大怪獣アスタルテの前に
は、巨大なロボットが屹立していた。

 銀色に輝くクロムの巨体。太く長い四肢に、西洋甲冑を思わ
せる重装甲。

 そは、機神。

 大きく突出した胸部が女神像を連想させなくもなかったが、
その神威は例外なく、見る者全ての心に深く刻み込まれた。

 機神は、圧倒的なパワーで大怪獣を屈服させた。激しい格闘
で都心は瓦礫と化したが、やがて力つきた大怪獣アスタルテは、
機神が胸部から発射した光線兵器
 ―のちに「ファイナル・スタナー」と名付けられた―
の照射を受けた。
 必殺の最終兵器の威力に、大怪獣は一瞬にして全質量を分子
にまで粉砕され、あとには一片のかけらさえ残らなかった。

 そして全てが終わり、救済の機神もまた、次元の彼方へと姿
を消した。
 その行方を知るものは、誰もなかった。

 地球は破滅から救われたが、あの巨神が何だったのかは謎と
して残った。
 人々は、世界を救った機神に「クイーンズ・ビー」なる美称
を奉り、記憶にとどめたのだった。

 そして、2年が過ぎた。

***

 怪獣の破壊から復興した東京。
 あたしは、その近郊に立つ女子高に通う、ごくふつうの17
歳の女の子、早川咲季…だったはず、なのに…。

 今のあたしは、眞希お姉ちゃんに連れられていった地下格納
庫の中で、バカみたいにぼーぜんと立ちつくしていた。

「…なんでよ?」

「ん?」

「ここ、なんなの?」

「ここ?ここはね、地球防衛軍日本支部の、秘密地底基地、な
んだって。笑えるでしょ」

「…その答えもバカバカしいけど…、あたしの訊いてるのはそ
うじゃなくってっっ!」

「だからなに?」

「なんでこんなところに、あの、クイーンズ・ビーがある
の!!!」

 アタマにきたあたしは、思わず大声でわめいていた。その声
が、広い格納庫の中で奇妙に響いてこだました。
 あたしの見上げた先には、修学旅行で見た奈良の大仏みたい
な無表情な顔が、暗がりの中にぼおっと浮かんでた。

「クイーンズ・ビーがここにある理由?そりゃ、私がここに置
いたからよ」

「…へ?」

「アスタルテを倒した2年前、クイーンズ・ビーを操縦してた
のは、私だったんだもの」

「お姉ちゃんが?」

「そうよ」

 なんてこともないみたいに言い切ったお姉ちゃんの言葉に、
あたしは完全に混乱していた。

 ファッション雑誌の編集者でしかないお姉ちゃんが、あのク
イーンズ・ビーの操縦者?
 世界の救世主?
 そんなバカな!

「…なんでお姉ちゃんが…」

「あ、それはね、このクイーンズ・ビーを作った異次元のオー
バーテクノロジーが、操縦者にふさわしい遺伝子を選んでい
て…」

「わー、わー!!わーーーー!!!!!」

 あたしはお姉ちゃんの声をかき消そうと大声を上げながら、
耳をふさいでしゃがみ込んだ。
 聞いてしまったら、自分もカンペキに巻き込まれる。
 そう確信しながら。

***

「ちょっと、ちょっと待ちなさいよ!」

 憤然として営林署(に偽装した防衛軍地下秘密基地の入り口)
から出てくる咲季を、姉が追った。

「バイト代はちゃんと出るわよ。何せ、国が管理してる防衛軍
所有のロボット…」

「そういうことじゃないでしょ!何考えてるの!ただの女子高
生に、地球を守れって?」

「そうよ、だって、クイーンズ・ビーを動かせるのは、世界中
で私と咲季だけだもの」

「…」

「で、私にはもうその気はないから、咲季が乗るしかないと…」

「なんでそうなるの!」

 声を荒げてくってかかろうとした咲季の後ろに停めてあった
クルマのそばから、間延びしたハイピッチの声がかかった。

「ハア〜〜イ、マキちゃ〜ん!(ハートマーク)、あ、サキち
ゃんも、おかえり〜」

「あ、アリス、待っててくれたの?バスで帰るって言ったのに」

「だって、マキちゃんと一緒に帰りたかったんだもん」

「はいはい」

 そう言った眞希が肩を寄せたのは、その幼稚な声質と全くア
ンバランスな、妖艶と言ってもいいほどのブロンド美女だった。
 眞希と同じくらいの年格好で、ウエーブのかかったロングの
金髪をポニーテールにまとめている。小麦色の肌が健康的な色
気を発散し、地味なビジネススーツの上からでもナイスバディ
な曲線がはっきりわかるほどである。
 なのに、そのつぶらな緑の瞳、小振りな鼻や唇は、幼げなほ
どに愛らしく、人々の心を魅了するのだった。

「マキちゃん、会社に戻りますの?」

 眞希と同じ雑誌編集部に勤めるアリスは、意外なほどにやり
手の編集者なのだ、と聞いてはいた咲季だが、しかし姉の前の
アリスは、飼い主に溺愛される仔猫のようにあまえんぼなおね
えさん、にしか見えなかった。

「ううん、今日はもっとここに用事があるはずだったんだけど。
意外と早く終わっちゃったから…」

「(うん、うん)」
 期待を瞳に込めて、アリスが見つめる。

「うちに来る?」

「はあ〜〜いっ!マキちゃん、だ〜い好き!」

 抱きついてくるアリスを、愛おしげに受け止めてほっぺたを
さすってあげる眞希。
 その二人の姿に、ため息をつく咲季だった。

***

 もお、あの二人ったら…。


「…うふふ、アリス…、もう、こんなに濡れてる…」

「ああん…、マキちゃんだって、こんなにアツくなってるよ…
ああああっ!!」

「もっと、もっと感じて、もっと濡らしてアリス…はあ、はあ、
はあ…」

「も、もうダメ…ああ…」


 まったく、あたしが家にいるっていうのに、すぐ始めちゃっ
て…。
 お姉ちゃんの部屋から、二人の声が漏れてくる。家に帰るな
り、二人はいきなり部屋にこもっちゃって、あの始末だもの。
お姉ちゃんてば、たった一人の妹がどんな気持ちでいるか、ち
ょっとは考えてほしいわ…。


「ううん、アリスのおっぱい、気持ちいい…」

「あん、マキちゃんだって、もう、乳首がかたく…ふああっ」

 二人はオールヌードで、ベッドの上で膝立ちになって、抱き
しめあっていた。そして、身体を密着させながら、たがいのお
っぱいをこねくりあわせている。

「ああ、おっぱいがこすれて、いいの、いいのっ」

「気持ちいいよお、マキちゃ〜んっ」

 舌をからめながら、お姉ちゃんとアリスさんはむさぼるよう
に唇を重ねた。
 お姉ちゃんのストレートのロングヘアと、アリスさんのブロ
ンドのウエーブヘアがからみあう。黒と金のコントラスト。
 お姉ちゃんの白い肌と、アリスさんの褐色の肌。白とブロン
ズのハーモニー。
 すごくきれいで、そして、すごくエッチに見えちゃう。

 え、何でそんな様子がわかるのかって?
 …ごめんなさい、咲季は、悪い子です。あたし今、お姉ちゃ
んの部屋の前。
 そう、あたし、こっそりドアの隙間から中をのぞいてる。
 お姉ちゃんとアリスさんの、エッチなことしてるの、見ちゃ
ってる。
 だって、しかたないじゃない。あんなに激しい声を出された
ら、あたしだって…。

「あ、やだ、マキちゃん、そんなにおっぱいばっかりぃ〜」

「うふふ、だってアリスのおっぱい、とっても柔らかくって、
大きくって、きれいなんだもの」

 二人の声に再び目を向けると、今度は仰向けになったアリス
さんに、お姉ちゃんが馬乗りになっていた。そして、両手でも
余るくらいに大きなアリスさんの両方のおっぱいを揉みしだい
ている。
 はじけそうなくらいに張りのある乳房が汗に濡れて、お姉ち
ゃんの手の動きにあわせてプリプリと震えながらこねくりまわ
されていく。その手の動きに、アリスさんは全身をくねらせて
身悶えした。

 やだ…、おっぱいって、あんなに気持ちいいのかな…。でも
アリスさんって、ほんとにきれいなバスト…。あたしもあんな
胸になれたら…。
 あたしは思わず自分の胸に手を当てた。服の上からでも、乳
首が立っちゃってるのが、はっきりわかる…。

「アリス、もっと感じて、もっとエッチな顔を私に見せて…」

「いやだあ、マキちゃんの意地悪、恥ずかしい…」

 お姉ちゃんが上から覆い被さって、アリスさんにキスして、
そのままキスを首筋から胸の谷間に移していく。そして同時に、
右手をアリスさんのあそこに当てて、指をくねらせた。
 大きく脚を開いたアリスさんのあそこが、あたしののぞく視
線の正面にあらわになっていた。
 うっすらとブロンドのヘアが萌えたつ秘部を、お姉ちゃんの
細い指がもてあそぶ。
 ああ、指が、二本も入ってく…。

「ええい、反撃ですっ」

「ああん、アリス、いいわ、いいっ!」

 アリスさんも下から、お姉ちゃんの重たげに揺れる乳首にし
ゃぶりつきながら、お姉ちゃんのあそこを指で攻め始めた。
 二人のあそこがぐしょぐしょに濡れて、指どころか掌から蜜
が滴ってきた。

「アリス、愛してる、愛してるわ」

「マキちゃん、アタシも愛してる!」

 あたしはいつの間にか、右手を自分のショーツの中につっこ
んでいた。あたしも、濡れていた…。

「ずっと、ずっと一緒よ!」

「ああん、絶対離さないもん!」

 指先を小刻みに動かし、声が漏れないように唇をかみしめな
がら、あたしも指先でそっとクリちゃんを撫でた。
 あたしの脳裏には、あのきれいなおねえちゃんとアリスさん
に、二人がかりで愛撫される自分の姿が浮かんていた。

「イク、イッちゃう、アリスぅ!」

「アタシもイク、マキちゃああんっ!」

 !!

「ああ、あああああああああああんんんんっっっっ!!!」

 二人が同時に絶叫した。そして、あたしも同時に…。

女の子同士って、そんなにいいの…?
Illustrated by YAMADA Ishito

***

「ねえ、マキちゃん?」

「ん?」

「サキちゃん、引き受けてくれるのかな?」

「たぶんね」

 ほてった身体から汗が乾いて涼しくなっていく感覚を心地よ
く感じつつ、二人の美女は相変わらず抱き合いながら、愛の交
歓の余韻に浸っていた。

 妹と一緒に帰宅した姉は、夕食もそこそこに、同性の美しい
恋人と自室にこもってしまった。そして、ドアの外に妹がいた
のも知らぬげに、激しく愛し合い続けた。
 眞希とアリスの情事をのぞき見ていた早希が、いけない一人
遊戯にのめり込み、そして後ろめたさからそそくさと自室に戻
ってしまったあとも、姉たちは疲れも知らずに互いをむさぼり
あった。そしてようやく、朝を告げる鳥の声に、二人は遅い眠
りへとつこうとしていた。

 やがて、シャワーの音。トーストの香り。そして玄関先から
出かけていく足音。

「マキちゃん、今日、会社どうする?」

 アリスがふと、問いかける。
 身を起こした眞希が、携帯を手にした。

「…、あ、副編、夜勤ご苦労様です。…はい、そうです。昨日
はどうも。実は、おもしろそうなネタがあるんで、アリスと一
緒に取材に行きたいんですが、…はい、ええ、わかりました。
だいじょうぶです。それじゃ」

 電源を切った眞希が、にっこり笑う。

「さ、きょう一日は、ふたりっきりよ。まず、何をする?」

「…わあ〜い!!」

 そう言って抱きついたアリスの唇が、再び眞希の唇に重なっ
た。そして二人は再びもつれ合ってベッドに倒れ込んだ。

***

「ああ、もう、ちっとも眠れなかったなあ…」

 姉とその美しい恋人の情事に、一晩中甘い苦痛を味わった結
果、くたくたに消耗した顔つきで、咲季は学校に向かっていた。
季節はもう気持ちのよい風の吹く初夏だったが、咲季の周辺に
はどんよりした重い空気が漂っていた。
 自分の部屋に戻った後も火照った身体はおさまらず、何度も
一人エッチに没頭してしまった自分に、咲季はすっかり自己嫌
悪を感じていた。

「おはようっ!!咲季ちゃん、元気してる!?あははははっ!」

「…ああ、悠子ちゃんか、…おはよ…」

 とぼとぼと歩く咲季の後ろから、不必要に陽気なクラスメイ
トの悠子が声をかけた。その明るい声に反比例して、咲季のテ
ンションはますます下がってしまった。

「なによ、元気ないねえっ!…ああっ!!」

「なに…?」

「また道着持ってきてないでしょっ!ダメじゃない、今日はち
ゃんと部活に出るって約束したのに!」

「ああ、そうか…、ごめん」

 二人は学校で同じ部活動に所属していた。だが最近、咲季が
ずっと放課後の練習をさぼっていたことに、先週の金曜、悠子
はくどいほどに釘を差していた。
 二人は、女子柔道部員だった。
 咲季は、その可憐なほどにスレンダーな外見とは裏腹に、ク
ラブの中でもかなりの実力の持ち主である。夏の高体連で3年
生が最後の大会を終えれば、次の女子柔道部の主将は咲季か悠
子のどちらかになることは明らかだった。
 だが、なぜか咲季の足は柔道部の練習から遠ざかっていた。

「ダメよ、今日は練習に出てもらいますからね、絶対に!私の
予備の道着を持ってきたから!貸してあげるから!」

「そんな…」

「必ずよっ!後輩だって、咲季ちゃんとの練習を楽しみにして
るんだからねっ」

「は、はい〜…」

***

 はあ〜…、やだなあ…。

 放課後、悠子ちゃんから借りた道着を身に着けながら、あた
しは相変わらずため息をついていた。

 そりゃ、確かに柔道は好きよ。見た目からは想像もつかない
ってよく言われるのも、ちょっと自慢だし。電車でさわってき
たチカンをぶん投げたことだって、一度や二度じゃないもん。
(それって、あたしが柔道なんかできそうもない、か弱そうな、
そして、チカンが狙いそうなほどカワイイ女の子だって思われ
ちゃってるってことよね?ふふっ)

 ただ、…その、最近は…。

「ほら、早くっ!みんな、久々のエース登場に期待してんだか
らっ!」

「ああんっ、ちょっと待ってよ…はあ〜…」

 悠子ちゃんに引っ張られて更衣室から格技場に入ったあたし
の目に、ずらっと並んだ一年生たちの姿。

「早川センパイっ!よろしくお願いしま〜す!!!」

「は…ははっ…」
 あたしはひきつった笑いを浮かべてしまった。

 ウォーミングアップが終わって、いよいよ乱取りが始まった。
三年生が補習を終えて練習に来るまでは、二年生のあたしたち
が指導役。
 あたしは悠子ちゃんにほとんど任せて、あんまり目立たない
ように後ろで控えてたんだけど…。

「センパイ、お願いしますっ!」
 と元気よく声をかけてきたのは、一年生部員でも結構可愛い
ゆかりちゃん。

「ああ、はい…」
 あたしはしかたなく立ち上がって、構えをとった。

「いきますっ!」
 目を輝かせて勢い込む下級生。

 組み付いてきた下級生の袖口を無造作につかみ取ると、あた
しは微妙なタイミングで軽くひねる。
 自慢になっちゃうけど、女子柔道部であたしより強いのは上
級生にもいない。あたしみたいな華奢な女の子がどうして?っ
てみんなが言うけど、こういうのって、タイミングと力をかけ
る方向なのよね。馬鹿力はいらないの。

 ずどんっ、と畳の音が響いて、ゆかりちゃんが仰向けにたた
きつけられた。すかさずあたしは上から袈裟固めに押さえ込む。

 ふと気がつくと、部員たちがあたしたちの組み手に注目して
る。ああ、もう…。

 ゆかりちゃんが何とかして寝技から逃れようとしてもがく。
 でもあたしががっちりと固めているから、ただあたしの身体
の下で身をよじらせるしかできない。

 …ああ、もう、ダメ!

 あたしはいきなり技を解いて立ち上がった。あっけにとられ
る悠子ちゃんや後輩たちを後に残し、あたしは逃げるように格
技場から駆けだした。

「ちょっと、咲季ちゃん!!」

「ごめん、悠子!」



 あたしはロッカールームに駆け込んで、激しく息をついた。
頭が混乱して、心臓が張り裂けそうだった。

『…これだから、いやだったのに…』

 下級生を押さえ込んだ瞬間、あたしの頭の中に、昨日の夜の
お姉ちゃんとアリスさんの愛し合う姿が浮かんだ。振り払おう
としても、消えてくれない。
 裸になって、汗に濡れて、身体を重ねて、絡みあって…。

 あたしの身体の下で、ゆかりちゃんが身をくねらせる動き。
激しい、息づかい。まさぐる手の動き。そして、柔道着の上か
らでも感じる胸のふくらみ。素肌の火照り…。

 女の子同士で愛し合うお姉ちゃんたちのエッチな姿と、自分
の姿が重なって…。
 あたし、そんなつもり、なかったはず、なのに…。

 あたしの意志とは裏腹に、あたしの身体はすっかり熱くなっ
ていた。
 ひどいよ、こんなふうになっちゃうなんて、あたし、どうす
ればいいの!?
 このままじゃ、ああん、ダメ、いけないっ…!

 柔道着の下のアンダーウエアの中に手を入れて、あたしはい
つのまにか、昨夜と同じように自分を慰めていた…。

***

 地球防衛軍はすでに、新たな驚異の接近を感知していた。
 超々高速度で地球めがけて飛来する巨大な隕石。
 2年前の災厄、宇宙大怪獣アスタルテの地球襲来と、全く同
じパターン。あの惨劇が再び繰り返されるのか?

 そして。

 救済の機神は、再び現れるのか?

 東京近郊、防衛軍地下にたたずむ機神の「機体」は、その操
縦者の来臨を、静かに待っている…。

 新たな、操縦者を。

***

『…東京湾沖120キロ地点に、大型隕石が落下しました。宇
宙怪獣が再び襲来した可能性があります。東京、千葉、神奈川
各県には避難命令が発令されました。対怪獣緊急避難システム
に応じ、早急な避難をお願いします…』

 町内を駆け回る広報車のスピーカーから流れてくる声が、ド
ップラー効果で高くなったり低くなったりする中、あたしは家
で非常持ち出しをチェックしていた。そろそろ避難場所の学校
に行かないと…。

「咲季っっっっ!」

「!…っふああっ、…びっくりしたあ、何だ、お姉ちゃん、お
帰…」

「行くわよっ!!」

「…どこへ?」

「もっちろん、クイーンズ・ビーよ!あんたが操縦者になって
宇宙怪獣を撃退するの!!!」

「…あのねえ、だから、そんなことがどうしてあたしに…」

「グダグダ言ってるヒマはないの!!」

 有無を言わさず、お姉ちゃんがあたしの手をとって外に駆け
だした。外には心配顔のアリスさんが立ち、そして営林署の公
用車がドアを開けて待っていた。運転席の営林職員の体格がよ
すぎて、どう見ても不自然だった。

***

 東京沖に落下した隕石から、巨大な宇宙怪獣が出現したのは
まもなくだった。
 2年前のアスタルテとは全く異なる姿が、空自の偵察機から
の映像で全世界のテレビに映し出される。

 昆虫を思わせる黒光りする甲殻と、ざわざわと蠢く多足、半
透明の巨大な展翅。

 だが、中継映像はまもなく途切れた。
 巨大な展翅が超震動を開始して、海面から飛び立った大怪獣
が、その巨体で自衛隊機を吹っ飛ばしたからである。
 しばらくホバリングを続けた宇宙怪獣は、その超感覚で獲物
を察知したかのように、やがて北西に進路をとり、関東平野を
めざして飛行を開始した。

 まもなく、この第2の宇宙大怪獣には「ラールヴァ」という
コードネームが与えられた。

***

「!!!っ、なんで、なんでっ、なんでなのよお〜っっ!!!」

『もう、ちょっとは落ちつきなさいよ』

「こ、これで落ち着けるって、どうかしてるわよっ!!」

 あのクイーンズ・ビーの前に再び連れてこられたあたしは、
不思議な光に包み込まれて巨大ロボットの胸のパネルに吸い込
まれてしまった。
 あまりの眩しさに目を閉じ、上下感覚も何もかも失った瞬間。

 ようやく光が消え、目を開いた時。

 地球儀の内側みたいな、球型の部屋。地球儀みたいなのは、
真っ黒な壁に緯度と経度みたいな銀色の線がいくつも交差して
いたから。
 一瞬ボーっとしていたあたしは、今の自分の姿に気がついた。
…!!!!!っっっっ!!!

 あ、あたし…!あたしっっっ、なんで、ハダカなのっっ
っ???!!!

「きゃああああああああっっっっっっ!!!!」

 身体をかがめて悲鳴を上げたあたしに、お姉ちゃんののんび
りした声が聞こえてくる。

『あのね、こういうことなのよ。咲季ちゃんの身体は、実際に
はクイーンズ・ビーと融合して、一体化してるの』

「?」

『ほら、あんたの頭の中に、直接クイーンズ・ビーの視野が伝
わってくるでしょ?部屋の中を見ている自分の目線とは別に』

 そういえば、そうだ。目の前の地球儀とは別に、クイーンズ・
ビーの目の高さで地下格納庫を見下ろしている光景が伝わって
くる。…高いよお(汗)

『そこはクイーンズ・ビーの操縦室なんだけど、その中にいる
咲季ちゃんは肉体を離れた「精神体」ってわけ。ハダカなのは
そのせいよ。だから安心してちょうだい』

「安心してったって…」

 そんなの、理屈じゃないもん…。やっぱり、恥ずかしい
よ〜(泣)。いくら実体じゃないって言ったって、やっぱり身
体じゅうがスースーしちゃってるし、これってどうしたってハ
ダカだもん。

『さ、それじゃ、クイーンズ・ビー、発進よ!!目指すは東京
お台場!!』

「え、え、ええ???え?」

『宇宙怪獣は東京湾に接近中よ。水際で相手を撃退するの!』

「待って、待って、だってあたし、操縦の仕方だって、何
も…!」

『だーいじょうぶ、何とかなるわよ』

「なんとかって、そんなあ…!ひえええっ!!」

『空間転移システムが作動するわ、一瞬で目的地よ』

「ああん、目が回るう〜」

***

 海上自衛隊の一斉砲撃をものともせず、超低空を飛行するラ
ールヴァは、東京湾の岸壁に近い海上に着水した。沿岸に集結
していた戦車隊も砲撃を開始したが、宇宙大怪獣は何らの痛痒
も感じたようには見えなかった。
 蜘蛛のような多足をザワザワと動かしながら、ラールヴァは
おもむろに上陸すると、その巨大な大顎を左右に開いた。中央
の口部が真っ赤に灼熱し、左右の大顎がまばゆいプラズマを発
した刹那、ラールヴァの前方30度方向に火線が走った。
 そして、大爆発。

 炎上する湾岸施設をその巨体で粉砕しつつ、宇宙怪獣ラール
ヴァは内陸に向けて移動を開始した。

***

 空間が歪んだ感覚が確かにあたしを包んだ、その直後、クイ
ーンズ・ビーは地下格納庫から数百キロも離れたお台場に一瞬
で移動していた。
 クイーンズ・ビーは間違いなく2年前と同じ巨体を輝かせて
いた。
 怪獣の襲来におののく人々の目に、救世主のように映ってい
るんだろう。でも…。

「いやあ〜っ!いやあああっ!いや〜〜〜〜〜っっっっっ
っ!!!!」

 中にいるあたしは、身を縮めて両腕で身体を抱え込んで、き
ゃあきゃあ泣き叫ぶばかりだった。
 あの操縦席の地球儀の裏側のような壁が、クイーンズ・ビー
の外側の光景を、精密にそのままの立体映像で映し出したの!

 …想像してみてよ。全長50メートルの巨人になった自分が、
白昼にすっぱだかになって人目にさらされているとしたら?
 いくら実体じゃない、って言ったって、足元に停まっている
自動車の排気ガスまで見える細かさよ?高層ビルの窓に人がい
るのまでわかるのよ?
 そんなの、まともな神経で耐えられるわけないじゃないっ!

『ほらほら、いつまでもショックを受けてるヒマはないわよ。
宇宙怪獣が近づいてるんだから』

 あーん、こんなんでどうやって戦うっていうのよっ!

『クイーンズ・ビーは、咲季ちゃんの動きをそのまま写しとる
わけじゃないの。ほら、あんたはおどおどしてへっぴり腰だけ
ど、クイーンズ・ビーはどっしり構えて直立不動でしょ?』

「ほんとだ。…でも、クイーンズ・ビーが勝手に動いてくれる
んなら、それじゃあ、操縦者って、何をするの?」

『それはね…、あ、ほら、来たわよ。目の前に近づいてきたの
が『宇宙大怪獣ラールヴァ』よ」

 あたしの頭の中に伝わってくる「クイーンズ・ビーの視線」
には、海の方からやってくる、気持ち悪い虫のお化けみたいな
怪獣の姿が見えた。
 でも、あたし自身の目に入ってきたのは…。

「え、え?…ええ?…あ、あなたが…?」
 茫然として、あたしは目を丸くした。

ええっ、この女の子が、宇宙大怪獣?
Illustrated by YAMADA Ishito

 あたしの目の前にいたのは、あたしと同じ年かっこうの、女
の子だった。

 青みがかったプラチナのロングヘアはつやつやと輝き、軽く
ウエーブがかかって腰まで伸びている。
 そして、その髪が彩る女の子の身体は…あたしと同じ、何も
身に着けていない。

 雪のように真っ白な肌、すらりと滑らかなプロポーション。
彫りの深い、仮面のように端正で、でもちょっと冷ややかな無
表情。小振りなおっぱいに桜色のつぼみが、まるで人形みたい
に綺麗…。あの不気味で気色悪い怪獣とは似ても似つかない。
 そして、あたしの視線がおへその下の、うっすらと仄暗く萌
えるヘアに達して、思わずあたしは赤面して目をそむけた。

「おねえちゃん、まさか、この女の子が…?」

『そうよ、怪獣の『精神』をクイーンズ・ビーが人間の姿に転
換してるの。…ふーん…』

「な、なによ、その『ふーん』は?」

 お姉ちゃんの声にくってかかろうとしたその時、女の子…大
怪獣ラールヴァが口を開いた。

「そうか、あなたがクイーンズ・ビー。前にアスタルテを倒し
たのは、あなたの仕業ね」

 鈴の鳴るような、澄み切った綺麗な声。

「え?…あ、そうか、そうじゃなくて、その…」

 能面のように無表情だったラールヴァの眉が、ピクッと動い
た。

「とぼけるつもり?まあいいわ、この私、ラールヴァの力で、
この地球を廃墟にしてみせる。きれいに掃除した後で、地上は
私たちの快適なすみかになるの…」

「そんなの、だめよ!」
 反射的にそう叫んでいたあたし。
 あとから思えば、それは地上の平和のためとかそんなことじ
ゃなくて、こんなに綺麗な女の子にふさわしくない酷いことを
させたくない、そんな気持ちだったような気がする。

「アスタルテを倒したようにはいかないわ。まずはあなたを血
祭りにあげて、ゆっくり地上を焼き払ってあげる!」

「すごいこと言ってる…お姉ちゃん、どうすればいいの…?」

『やっつけちゃいなさい』
 お姉ちゃんの声は、バカバカしいほど軽かった。

「どうやって!」

『あんた、女子柔道部のエースなんでしょ。ぶん投げて、押し
倒しちゃえば?』

「押し倒すって、そんな…」

「なにをごちゃごちゃ言ってるの?こっちから行きますよ!」

 ラールヴァの銀髪がざわざわっとうごめき、戦う構えを見せ
た。でも、目の前にいるのはか弱そうなハダカの女の子でしか
ない。おまけに、構えもスキだらけ。…まあ、そりゃそうか、
怪獣が柔道や格闘技を知ってるわけないもんね。

「よおし、いくわよっ!」

 あたしは無造作にラールヴァの右手首をつかんだ。
 柔道着なしで勝手が違うとはいえ、なんせ相手は素人同然。
反射的に腕を引っ込めた勢いに乗じ、あたしは腰を入れて一気
に相手を回転させた。大外刈りにいってもよかったんだけど、
あたしは手加減して床に転がすようにするだけにした。
 鳩が豆鉄砲って、これのことかしら。仰向けに倒れたラール
ヴァは、あっけにとられてあたしの顔を目を丸くして見上げて
いた。

 あたしはつかんだ右腕を離さずに、そのまま袈裟固めの体勢
でラールヴァを押さえ込んだ。相手の右腕を脇の下に挟み込み、
首を両腕で巻くようにして、上から押さえ込む。力を入れると
首が極まってしまうけど、そこまでしなくてもよかった。ラー
ルヴァはもがくばかりで、どうやったって脱出することはでき
ない。

 ふと、この前の柔道部での乱取りが思い出された。下級生を
同じように袈裟固めにして押さえ込んで、そして…。
 あたしはまた、あのときと同じ、お姉ちゃんとアリスさんの
エッチな姿を思い出してしまった。
 おまけに今のあたしもハダカで、同じようにハダカの女の子
を押さえ込んでいる。
 密着する素肌が直接、体温を伝えてくる。
 ラールヴァのおっぱいのふくらみが、あたしのおっぱいと触
れあってこすれる。

 また、心臓がどきどきしてきた…。

 でも、今度はこの手を離すわけにもいかない。どうしよう、
あたし、こんなにドキドキしてる…。やだ、身体が熱い…。

***

 直立不動の機神クイーンズ・ビーに、大怪獣ラールヴァは距
離をとって攻撃を開始した。巨大な大顎を左右に展開したかと
思うと、その鍬形状の大顎が白熱し、大気にプラズマの閃光が
走った。そして、中心部の吻口部から真っ赤な光線が発射され
た。
 地を走った火線が地表をクロスファイアのように炸裂させて
いき、強烈な光線束がなぎ払うようにクイーンズ・ビーの腹部
に命中した。
 だが、クイーンズ・ビーの機体をとりまく力場が、光線を難
なく拡散させていく。分散した光線のかけらが周囲の建造物を
破壊し、わき上がった砂煙が晴れ、再びその巨体を現したクイ
ーンズ・ビーが、一気に間合いを詰めた!
 そして、ブーメランフックのようなすさまじい勢いで、クイ
ーンズ・ビーの左手が大鉈のようなラールヴァの右顎をがっし
り掴み取った。虚をつかれたラールヴァの隙をついて、右手で
も大顎を掴み、クイーンズ・ビーはその太い腕で、二本の大顎
をねじ上げていった。高熱を発して赤みを帯びた怪獣の大顎は、
普通の物体ならばホットナイフでバターを切るようにスライス
しただろう。しかし、機神の両手はなんらの痛痒も感じる様子
すら見せず、メシメシといやな音を立てて大顎を握り続けた。

 だが、ラールヴァもその巨体にものを言わせて、クイーンズ・
ビーを圧倒しようとする。多足昆虫型のラールヴァは、全長な
らクイーンズ・ビーの優に2倍はある。ゾワゾワと波のように
動く多足が大地にめり込み、削っていった。

 全世界の人々が息をのんで見守る中、人智を越えた力と力の
激突が、東京湾岸全域を震わせた。

***

「ううんっ!…このおっ、は、はなせえっ!!」

 ラールヴァは相変わらずあたしの寝技から逃れようとして、
手足をばたつかせてもがいてる。でも、たとえ柔道の心得があ
ったって、この袈裟固めは外せっこない。
 荒い息を吐きながら、ラールヴァがその白い顔を紅潮させ、
身をひねってえびぞった。

 あたしはそんなラールヴァを余裕で組み敷きながら、一方で、
ますます心臓をドキドキさせてた。
 細くて、柔らかくて、そして最初はひんやりしていた肌が、
ほんのりと温かくなって、しっとり汗ばんでいく、女の子の裸
身。その身体がくねるように蠢いている。

 ハダカの女の子同士で、素肌と素肌をじかに触れ合わせて抱
き合っている…。頭が、爆発してしまいそう。
 やだ、気持ちいい、女の子の身体って…。

 ヘンな気持ち…。

 ふと、あたしはハッと気がついた。現実にはクイーンズ・ビ
ーが怪獣ラールヴァと激しく戦っている。それはあたしの頭の
奥に、外の光景が伝わってくることでもわかる。今ここでのあ
たしたちの行動が、外ではクイーンズ・ビーと怪獣の「格闘」
に転換されているってこと。

 ということは、宇宙大怪獣を退治するには、この女の子を…。
そんな、まさか…。

「お姉ちゃん、聞いてるんでしょ!?あたし、どうすればいい
の?」

『…ついに、この時が来たわね(うふふ)』

「…なんなの、その深刻なせりふと、全然合わない愉快そうな
声は?」

『気のせいよ。さて、いよいよ怪獣退治の本番ね』

「…この子を殺せ、なんて言ったら、姉妹の縁を切るからね」
 一番心配に思っていたことで、釘をさす。

『そんなことしなくていいってば。…咲季ちゃん、いい?ラー
ルヴァを倒すには』

「…」


『エッチして、イカせちゃえばいいの、クスッ』


「…はあっ???」

 何を言い出すの?あたしは一瞬頭が真っ白になった。

***

 いきなりラールヴァが全長のさらに倍の長さがある透明展翅
を広げた!そして超高速で振動するように羽ばたきを始めた。
 大地に砂塵が舞い上がり、展翅の発する音波が破壊力を持っ
て、周辺の建物のガラスを微塵に砕いた。

 さしもの機神の1万トンにもなる巨体も、その上昇力に一瞬
浮かび上がりそうになった。バランスを崩したその巨躯がゆら
ぎ、大きく傾いた。
 だが、ラールヴァの大顎を掴んでいたその手を、クイーンズ・
ビーは離さなかった。飛翔して敵を引きはがし、上からのしか
かって有利な体勢を得ようとした大怪獣のもくろみは、完全に
外れた。
 逆に、崩れたバランスを立て直そうとしたクイーンズ・ビー
が、右手を移し両手で右大顎を掴み取ったため、浮き上がって
いたラールヴァは右に引きずられた。その勢いを無理矢理羽ば
たきの上昇で振り切ろうとしたラールヴァの、右の大顎がつい
に根元から折れた!

 砕けたキチン質から強酸性の体液がすさまじい勢いで噴出す
る。濃蟻酸のシャワーを浴びた周辺の鉄筋があっという間に融
け、コンクリートが腐食していった。そして酷い悪臭のこもっ
た蒸気と、地上に墜落してのたうち回るラールヴァの巨体が巻
き上げる塵煙がたちこめた。
 その中で、機神はその手に、邪悪な大鎌のような戦利品を携
えて直立していた。

***

 なにを…、何を…、何をしろって?!

「だからあ、咲季ちゃんが押さえ込んでる、可愛いハダカの女
の子の、あそこをああしてこっちをこうして、優しく激しく愛
撫して、絶頂にまで…」

「…いいかげんにしてェェエ!!!」

 顔を真っ赤にして絶叫するあたしの声に、必死になってもが
いていたラールヴァも、一瞬ぽかんとして目を見開いた。
(お姉ちゃんの声は、クイーンズ・ビーの操縦システムが直接
あたしの頭に伝えてくるんで、ラールヴァには聞こえないの)

「あたし、ただの女の子なのよ、それが、巨大ロボットに乗っ
て怪獣と戦うだけでも異常じゃないの!なのに、その上、怪獣
の女の子とハダカになって組み合って、おまけに今度は、エッ
チしろ、だなんて!バカにするにも…!」

『ああら、そんなこと言っていいのかなあ、咲季ちゃん』
 からかうような声。

「なによっ!」
 勢い込んでどなるあたし。

『…お姉さまの部屋の前で、いつもこっそり中を覗いていたの
は誰かなあ?』

「(え)!」
 あたま、まっしろ。

『ベッドでの私とアリスの姿を見ながら、息を殺してアソコを
熱く濡らしていたのは、誰だったかなあ?』

「(え・え)!!!」
 ざーっ、と、音を立てて血が引いていくのまで聞こえる。

『でもやっぱり、ネンネのお子ちゃまね。あんなに呻きながら
廊下で一人エッチなんかしてたら、いくら何でもわかっちゃう
わよ』

「!…お、お姉ちゃん…!?」
 破裂しそうな鼓動。

 ぜ、全部、ばれてたの?お姉ちゃんたら、あたしに気がつい
ていて、そのままアリスさんと?
 そんなの変態!でも、それを覗いてたあたしも…!

『こうなったら、自分に正直になるしかないって、咲季ちゃん』

「な、何のことを…」

『いくら口では否定したって、自分では気がついてるんでしょ?
…咲季ちゃんも、ほんとうは女の子が大好きなんだって』

「そ、そんな…!」

『とにかく、事実を教えるわ。クイーンズ・ビーの力の源は、
女の子同士の「愛する心」なのよ』

「そんな、バカなことって…!!」

『だって、ホントのことだもん。女の子の姿をした怪獣の精神
体を、操縦者に選ばれた女の子が、エッチしてイカせちゃえば
おめでとう、必殺技「ファイナル・スタナー」の発動!敵を殲
滅できるってわけ。簡単でしょ?』

 あまりにアホらしい設定に、あたしはあきれかえった。この、
世界の救世主とまでいわれてる巨大ロボットに、そんな情けな
い秘密があったなんて…!

『さ、躊躇しているヒマはないと思うけど。それに、どう?そ
の子、とってもかわいいと思わない?』

 あたしはまた、視線を下に落とした。身体の下に組み敷いた
ラールヴァの、ほんのちょっと不安を浮かべた、端正な顔。外
の映像から伝わってくる怪獣のグロテスクな姿とはつながりよ
うもない、可憐さ。

 あたし、あたし…。

 左脇の力が抜けて、挟めていたラールヴァの右手が抜ける。
一瞬反撃しようとしたラールヴァが、あたしの顔を見て何かを
感じたのか、解放された手をそのまま下ろした。きっとあたし、
これ以上はないってくらいに、熱くラールヴァを見つめていた
んだと思う。
 息づかいが荒くなっているのが、自分でもわかった。激しく
鳴り響く心臓の鼓動は、きっとラールヴァにも伝わっていたは
ず。

「ラールヴァ…」
 あたしは思わず囁いていた。

 ラールヴァ…。その名前がなんだか、ずっと昔から知ってい
たみたいな、そんな奇妙な感覚が頭の中に渦を巻いていた。

 らー・る・う゛ぁ。その名前の三つの音を、あたしは何度も
反芻していた。

「…クイーンズ・ビー…何をするつもりなの?」

 ラールヴァが、慎重さは失わないまま、でも、ほんのちょっ
と警戒を解いて訊いてきた。

「あたしの名前は、咲季よ。ラールヴァ…」

「サ・キ…」

 ラールヴァの口からあたしの名前が教会の鐘の音のように響
いた瞬間、あたしの中で何かがはじけた。
 あたしの左手が、ラールヴァの白い乳房に触れて、そしてゆ
っくりと円を描くようにして愛撫しだした。
 はっ、と目を見開いてあたしの顔をのぞき込んだラールヴァ
に、あたしは顔を寄せて、そして…。

 あたしは、生まれて初めて、女の子とキスしたの…!

***

 もぎ取った怪獣の大顎を、クイーンズ・ビーは無造作に放り
捨てた。だが、大怪獣ラールヴァは依然として戦う姿勢を示し
ていた。片方の大顎を失ったために、プラズマを発射すること
はできなくなっていたが、ラールヴァはえぐり取られた顎の空
洞から体液を滴らせながらも、何かを狙うように屹立していた。

 いきなりラールヴァがその鎌首をグッともたげた。真っ赤に
発光する複眼の視線に、クイーンズ・ビーが一瞬動きを止めた。
その次の刹那、ラールヴァの8本の触角がおのおの数十メート
ルにも伸びて、蛇のようにのたうち始めた。そして、凄まじい
ほどの勢いでクイーンズ・ビーめがけて発射された!
 白熱した触手は、まるで投げ槍のようにまっすぐクイーンズ・
ビーに向かって突進した。ほとんどは機神の周りの力場に遮ら
れ、鈍い重低音を発してはじき飛ばされた。が、うち2本が力
場を突破して、クイーンズ・ビーの胸部に突き刺さった!

 触手を導線にして、強烈な高圧電流が伝わった。だが、さす
がに無敵の機神は、その程度の攻撃にはびくともしなかった。
触手の先端が突き刺さった胸部装甲も、貫通はしていない。

 機神はおもむろにその手で胸に突き刺さった触手を掴みあげ
ると、無双の怪力で引っ張り上げた。
 あまりに強力な力に、触手の一本は麻紐のように千切れ、そ
してもう一本に引きずられるようにして、大怪獣の巨体が大き
く揺らいだ。ラールヴァは多足を駆使して転倒を避けたが、ク
イーンズ・ビーの牽引力に抗うことはできず、その引っ張った
方向へと、ラールヴァは高層ビルにもんどり打って激突した。

 崩れ落ちるビルの轟音と爆煙に包まれてのたうつ宇宙怪獣に
向かって、クイーンズ・ビーはゆっくりと歩を進めた。


***

 巨大ロボットと怪獣が激闘を繰り広げるお台場が立体映像で
映る、操縦室の中。

 あたしとラールヴァ。
 ハダカの女の子同士。
 二人で横たわって、抱き合って。

 あたしが上になって、ラールヴァが下で。
 そして…長い、長い、キス…。

 ようやく顔を離して、二人は見つめ合った。

「サキ、これは、なんの攻撃なの?」

「え、ええっ?攻撃って、そんなこと…」

 あたしは、ラールヴァの言ってる意味がわからなかった。

「私たちは、戦っているのでしょう?なのに、どうして苦しく
も痛くもないの?これが攻撃なの?」

「ちがうよ!これは…」

 あたしはようやく理解した。ラールヴァは、宇宙怪獣なんだ。
彼女は、「戦うこと」しか考えつかないんだ。
 あったかい気持ちとか、優しさってものを、知らないんだ…。

「戦いなんかじゃないよ。心を一つに重ねるための、方法なん
だよ」

「なぜ、そんなことをするの?私は侵略者、破壊者。戦いこそ
が全て。この星の守護者であるあなたにとっては、倒すべき敵
であるはずでしょう?」

「そうじゃないって。戦いだけが全てなんかじゃないよ。…あ
たしが、教えてあげるね」

 あたしはまた、ラールヴァに顔を寄せた。そして再び、唇を
重ねた。

 初めて出会ったばかりの女の子と。
 でも、その実体は宇宙怪獣の女の子と。

 信じられない、あたしが、こんなことになるなんて。あた
し…。

 あたしはキスを続けながら、両手でラールヴァの胸を愛撫し
続けた。あたしと同じくらいの、ちょっと小さめのおっぱい。
柔らかくって、滑らかで、手のひらにふわふわした感触がじか
に伝わってくる。

「なんだか、胸の奥が熱い…。サキ、人間の身体の、この胸の
ふくらみは何?」

 能面のような無表情を崩さなかったラールヴァの顔に、赤み
が差してきた。

「…ここにはね、女の子の『大好き』の気持ちがいっぱい詰ま
ってるんだよ。だから、ほら、こうして触ると、とっても気持
ちがよくなれるの」

「気持ち、いいって、何?ワカラナイ。そんなこと、あるの?」

 まだ、いぶかしげな怪獣少女。

「今、ラールヴァが感じてることが、きっとそうなんだよ…。
ほら、こうして…」

 あたしはちょっと自分の身体を浮かせると、自分のおっぱい
をラールヴァのと触れあわせた。お姉ちゃんとアリスさんがや
っていたやり方。自分の乳房を揺らすようにして、自分とラー
ルヴァの乳首をこするように刺激し合う。

「あふうっ!」

 ラールヴァが突然、引きつけたような声を発した。それまで
なんとか冷静を保ってきた表情が、あっという間にとろけた。
不安と、それと同じくらいの輝きが瞳に浮かんできた。

「あんっ、気持ち、いい…」
 初めての経験。お姉ちゃんたちの情事を盗み見ながら想像し
ていた快感が、いま、現実になってる…。
「ね、ラールヴァも、触ってみて、お願い」

 生まれて初めての好奇心をその顔によぎらせながら、ラール
ヴァが下からゆっくりと手を伸ばしてきた。
 持ち上げるようにあたしのおっぱいをこね回す怪獣少女と、
競争するように愛撫し合う。

「ああっ、ラールヴァの指が、気持ちいいの!」

「これが、気持ちいい、なの?サキ…」

「ほかにもいっぱいあるよ。たとえばね…」

「ああっ、そこは…!?」

 恥ずかしくってしかたないのに、あたしはラールヴァを組み
敷いたまま、その身体のラインに沿って手を滑らせていった。
お腹から脇腹へ、それから、肉薄で腰骨の感触がわかるウエス
トへ、そしてそのまま、女の子の大事なあそこに…。
 薄いヘアをかき分けるようにして、周りからだんだんと内側
に指を這わせていく。
 そして、あたしの指先に、秘密の宝石が触れて…

「く、ああんっ!!!すごいっ!!」

恥ずかしいのに…気持ちいい…
Illustrated by YAMADA Ishito

 生まれて初めて快感の意味を身体で知ったラールヴァが、さ
っきまでの冷静な表情をかなぐり捨てた。目を閉じ、息を荒く
して、頬を紅潮させた。そして、細く柔らかな裸身を、ほんの
りとあったかくしながらくねらせた。
 あたしの身体の下で、身を震わせながら悶える。

「ね、ラールヴァ、ここが、女の子の一番『気持ちいい』の場
所だよ」

「お願い、サキ、もっとして、もっともっと『気持ちいい』を
教えてぇ!」

 すがりつくように伸ばしてきた両腕が、あたしの背を抱きし
め、そしてすぐにまた崩れ落ちていく。しなやかな全身を魚の
ようにくねらせて、ラールヴァが再びのたうち回った。
 その動きが、あたしの全身にダイレクトに伝わってきて、そ
の感触に痺れるような快感があたしを貫いた。

 あとから思えば、その時のあたしたちは精神体の存在だった
っけ。素っ裸の姿はその証拠。言ってみれば、むき身のゆで卵
みたいに、敏感なハートとハートが直接触れあっていたわけ。
 初めて出会ったばかりの二人だけど、何年もつきあった恋人
同士より何倍も何倍も、あたしたちはお互いを理解し合ってい
たと思う。そして、誰よりも心を重ね合わせていたと思うの。

 舌と舌を絡めながら、むさぼるように唇を重ね、おっぱいを
重ね合わせて揉み合う。お尻を振るようにしておへその下のふ
くらみをこすりつけあう。滑らかな脚と脚をくねくねと絡ませ
てる。
 全身の神経が剥き出しになったように、触れ合った肌がビン
ビンと激しく快感を伝えてくる。
 互いの乳首やクリトリスが、痛いくらいに硬くなっているの
がわかる。異常なくらい汗がにじんで、ぬるぬるになった全身
が、捕まえようとするとツルッと滑り抜けていって、あたした
ちはますますもどかしいばかりに互いを求め合う。
 …まるで、溶けていってしまいそう。

 巨大ロボットの操縦席の中。お台場の光景が広がるリアルな
立体映像の中。
 女の子同士で、ハダカで、愛し合ってる…。
 あたしって、なんてエッチなんだろう。
 でも、こんなに幸せな気分、初めて…。

 あたしは、お姉ちゃんたちがやってた、とっておきの方法を
試してみることにした。

「ね、いいよね、もっと、気持ちいいことしてもいいよね、ラ
ールヴァっ!」

「うん、して、サキ…」

 あたしは身を起こすと、向きを反対にして、横たわったラー
ルヴァの顔をまたぐようにして四つんばいになった。そして、
ラールヴァのあそこに顔を寄せていく。
 どこで見たんだっけ、…「シックスナイン」ってエッチな言
葉が、頭に渦巻く。

『やだ、ほんとにやってみると、すごい格好…。でも、ドキド
キして、感じちゃう…。それに、女の子のあそこをこんなにそ
ばで見るんだって…。自分のも、ラールヴァに見られちゃって
て…。うわあ、ラールヴァって、とっても可愛いの…』

 とりとめもない思いが次々と頭の中に湧いてきて、でもすぐ
にそれはぐちゃぐちゃになっちゃって、あたしはただ、ラール
ヴァの女の子の大事なところを目と鼻の先にして、目が離せな
くなってしまっていた。

 すっかり濡れていた銀色のヘアに、あたしの鼻先が触れた。
汗とは違う、甘酸っぱい香りが鼻腔に広がる。
 あたしはそっと舌を伸ばして、梳かすようにヘアを舐めあげ
た。

「ひああっ!!」

 叫び声をあげたラールヴァの、熱い吐息があたしのあそこに
吹きかけられて、あたしの背筋にもゾクゾクするものが駆け抜
けた。

 あたしは自分のおっぱいをラールヴァのお腹にすりつけなが
ら、思いっきり顔をあそこにうずめた。そして舌先でヘアを乱
暴にかき分け、すっかり蜜に濡れた割れ目にたどり着く。ちっ
ちゃなクリトリスが真っ赤なルビーのように光って顔を出して
いる割れ目に沿って、あたしは舌全体でしゃぶり始めた。

 ますます大きな声をあげて身もだえするラールヴァも、やが
てあたしのお尻に手を回した。その手に力を入れてぐいっと引
き下ろすと、あたしのお腹にもラールヴァのおっぱいが押しつ
けられて、二人の身体がぴったりと重なり合った。
 そしてあたしのあそこに密着したラールヴァの顔が、頬ずり
するようにして刺激してくると、あたしも思わず背中をえびぞ
らせて叫び声をあげた。

「ああんっ、ラールヴァもいっしょにぃ!」

 いったんは離してしまった口を、あたしはもう一度ラールヴ
ァのあそこにつけて、今度は口全部で頬ばるようにしゃぶりつ
き、舌を奥に差し込んでいった。口じゅうにラールヴァの甘い
蜜の味が広がり、奥からどんどん湧き出してくる蜜を、あたし
は喉を鳴らすほどに飲み続けた。
 ラールヴァもあたしのするのを真似るようにして、あたしの
あそこを一生懸命に舐めてくれている。ラールヴァの舌と唇の
動きの一つ一つが、あたしの脳天にまで響くほどの快感になっ
て全身を満たしていった。

「おいしい、ラールヴァのエッチなあそこ、すごくおいしいよ
ぉっ!!」

「サキの『気持ちいい』のここも、甘くっておいしいの…!も
っと、もっと飲ませてぇ…!」

 クイーンズ・ビーも、怪獣との戦いも、この操縦室のことも、
何もかもがどうでもよくなっていた。
 今のあたしには、こうして愛し合っている美少女ラールヴァ
だけが全てだった。
 それ以外のものは全て、消え去っていた。

『は〜い、お楽しみの真っ最中にごめんなさいね咲季ちゃん。
聞こえる?』

「…あれ、あんっ、お、おねえちゃ…ん…?ひああっ!!」

『大事なことを言い忘れてたわ。必ず先に相手をイカせなきゃ
ダメよ。でないと「ファイナル・スタナー」を発射できない上
に、もしも逆に、咲季ちゃんのほうが先にイッちゃったら大変
なことになるわ。怪獣じゃなくて咲季ちゃんのエネルギーが吸
収されて、ヘタをしたら咲季ちゃんの存在自体がクイーンズ・
ビーに取り込まれちゃうかもしれないからね』

「え、な、なにが先って…?…おねえちゃ…なんて言ったの…
はああんっ!!!」

『ま、とにかくがんばりなさい。じゃあねえ〜』

 お姉ちゃんの声が遠くの方から、なんだかとんでもないこと
を言っていたような気がしたけれど、あたしはその時、もう半
分以上正気を失っていた。
 あたしは再び、ラールヴァとの愛の行為に没頭しだした。

「サキ、…サキぃっ!」

「ラールヴァ、気持ちいい?…はああんっ…、ねえ、気持ちい
いでしょ?」

「うん、気持ちいいの。…ううんっ!…サキ、人間はこんなに
『気持ちいい』になれるの?」

「そうだよ、ラールヴァ…、悲しいことや辛いことがあったっ
て、女の子はこうして愛し合って、一緒に癒されるんだよ…、
ひいっ!」

「ああん、私、人間になりたい!怪獣やめて、人間になって、
ずっとサキと一緒に『気持ちいい』したいの!」

「うん、一緒よ、ずっと一緒よ、ラールヴァ!…ね、この気持
ちを、なんて言うかわかる?」

「教えて、なんて言うの、教えて、サキ!」

 あたしは、全身を震わせながら、心の底からその言葉を叫ん
だ。

「愛してる!愛してる!ラールヴァぁっ!」

「私も、愛してるぅ!サキ!」

 その声を合図に、二人の身体と心は一つになった。

「あ、あああ、あああああああああっ!!!!」

 そして、二人は同時に…

ああ、あたしたち、一緒にイッちゃう!
Illustrated by SERIZAWA Kayo

***

 力尽きた大怪獣ラールヴァが、それでもなお最後の臂力をふ
るって瓦礫の山から立ち上がった。そして、自爆覚悟と思えそ
うな突進を仕掛けてきた。

 その時、クイーンズ・ビーの全身が虹色に輝いた。
 金色のオーラが放たれ、頭上かなたにオーロラを発生させた
クイーンズ・ビー。
 その胸部が、轟音を響かせて重装甲を開放し、内奥の高エネ
ルギー炉を露出させた。

 最終兵器「ファイナル・スタナー」の発動である。

 天地に轟く大音響とともに、クイーンズ・ビーの開放孔から、
太陽のような夥しい白光があふれ、接近してくる宇宙大怪獣を
一気に包み込んだ。
 全速力で駆け寄ってくるラールヴァの脚が一瞬にして止まり、
踏みとどまろうとするのを難なく押し戻し、その勢いに負けた
怪獣が吹っ飛ばされる。

 その大怪獣の全身が、刹那、高エネルギーに焼き尽くされて
大爆発を起こした!

 邪悪な大怪獣を一瞬にして浄化する正義の業火が、お台場全
体を包み込んだ。その火柱は、はるか北海道からも望むことが
できたという。

 やがて静まった爆炎の中、地球の守護神、大いなる機神クイ
ーンズ・ビーが、再び地上を救った栄光とともに、静かに屹立
していた。

 驚異と畏怖と、そして無上の感謝に満ちた人々の視線を一身
に集めつつ、機神クイーンズ・ビーはやがて、静かにその姿を
次元の彼方に消した。
 2年前と全く同じように。

***

「愛してる…、あいしてるぅ……」

 絶頂の残り火を一緒に味わいながら、あたしとラールヴァは
固く抱き合ったまま、その言葉を、繰り返し繰り返し、呟いて
いた。
 甘い甘い幸せを噛みしめるあたしの脳裏に、クイーンズ・ビ
ーの戦いの結末の映像が伝わってきた。

 ハッとして、その映像の意味を悟った瞬間、腕の中に抱いて
いたラールヴァの「存在」が、突然リアルさを失った!

「…た、たいへん!あたしったら、なんてことを!」

 眠るようなラールヴァの姿が、刻々と実感をなくし、かすれ
ていく!

「いやあっ!!!ラールヴァ、ラールヴァあ!ごめんなさい、
あたし、そんな…!」

 抱きしめようとしたあたしの両腕が、ラールヴァの身体を虚
しくすり抜けた。

「愛してるって言ったのに!ずっと一緒って言ったのに!あた
しったら、あたし…!!!」

 愛しい少女の姿が、あたしの目の前で、フェードアウトする
ように消え去っていく。
 その悲しさ。無力さ。

「…行かないで!ラールヴァああああ!!!!!」

 一人っきりになった操縦室の中、絶叫するあたしは、やがて
意識を失っていった。
 夢幻の暗闇の中、悲しみの底にと。

***

 2年前のアスタルテの襲来に比べて、今回の被害は奇跡的に
少なかった。人々の脳裏にまだあの時の惨状が記憶に残ってい
たせいもあっただろう。緊急避難が極めてスムーズに行われた
ことは確かだった。
 また、東京のほぼ全土が被害を受けた前回に対し、戦場がお
台場とその近辺に限定されたことも不幸中の幸いだった。

 最小限の被害にとどまったことに、人々は胸をなで下ろした
ものの、クイーンズ・ビーが再び降臨しなければこうはならな
かったはずなのも、また確かなことだった。

 最強の機神に守られたことの幸運を、全ての人々が深く噛み
しめていた。

***

 あたしが目を覚ましたのは、ベッドの中だった。

「よかった、だいじょうぶ?咲季?」

「よく、がんばりましたね、サキちゃん」

 あたしの顔をのぞき込む二人の顔が、天井のライトが逆光に
なってよく見えない。

「…お姉ちゃん?…アリスさんも…。ここ、どこ?」

 ほっとした様子でお姉ちゃんがいつもの笑顔に戻った。

「ここは、あの防衛軍の秘密基地。ゲストルームよ。地球を救
った英雄には贅沢すぎることなんかないはずだけど、ね」

 ちょっと顔を上げて見回してみる。質素だけど、広くて立派
な部屋。地下だから窓がないだけで、あとはもう、高級ホテル
の部屋みたい。
 寝起きのせいか力が入らないのを、むりやり上半身を起こし
た。
 あれ、あたし、ハダカのまんまなのか…。

「ひどいよ、お姉ちゃん」

「何が?」

「だって、あたしにラールヴァとエッチさせておいて、それが
ラールヴァを殺すことに…」

 あたしは、もう言葉が詰まってしまった。涙がこぼれてきた。
 なのに、お姉ちゃんは意味ありげに笑みを浮かべ続けている。
 かっとしてくってかかろうとした、その時。

「誰を、殺しちゃったって?」

「?」

「ほら、よく見なさい」

 お姉ちゃんの指さした、あたしの傍ら。
 ふかふかの掛け布団の下、かすかなふくらみ。
 震える手で、ゆっくりと布団を持ち上げる。

 静かな寝息をたてながら横たわっている…あたしの天使。

「…ラールヴァ!」

「ふふふ、これがクイーンズ・ビーの最終兵器『ファイナル・
スタナー』の真の力よ。あれだけのすさまじいエネルギーは、
破壊のためじゃなくてね、あの怪獣のとんでもない質量の身体
を、操縦者が望んだ姿へと一気に転換するためのものだったっ
てわけよ」

 正直、生まれて初めて神さまがこの世にいるんだってことを
実感していたあたしに、ラールヴァがそっと目を開けた。

「サキ…。私、人間になったの。約束よ、これからもいっぱい
『気持ちいい』しようね」

「う…、うんっ!!!」

 あたしたちは、ぎゅっと抱きしめあった。
 あの操縦室の時と同じ感触。でも今は、現実の世界で触れあ
ってるんだ…。

「ま、一時はちょっとヒヤヒヤしたけど、結果オーライね。咲
季、かわいい恋人、大事にしなきゃダメよ」

「よかったですねえ、サキちゃん」

「!」
 あたしは、ハッとした。2年前、同じようにクイーンズ・ビ
ーを動かして、大怪獣アスタルテを「ファイナル・スタナー」
で倒したのは、お姉ちゃん。
 てことは…?

「お、お姉ちゃん?」

「なに?」

「その、えっと…、アリスさんてば、まさか…」

 おどおどとアリスさんを指さすあたしに、いきなり二人は笑
い出した。そしていきなり、しっかりと抱きしめ合った。

「は〜い、アタシが宇宙からの侵略者、大怪獣アスタルテ、で
した!でも、マキちゃんのおかげで、アタシも知ったの。愛し
あう女の子の、悦びを、ね(ハートマーク)」

 そう言って、熱っぽくお姉ちゃんにキスするアリスさんを、
あたしは茫然と見つめるしかなかった。…東京を灰燼と化し、
数万人もの人命を奪った凶悪怪獣が、いまやこんなに無邪気で
愛らしい女の子になって、しかもお姉ちゃんの恋人、だなんて、
…信じられない。

「ね、サキ…」

 ぼんやりしていたあたしは、ラールヴァの甘い囁きを耳元に
感じて、ハッとわれにかえった。

「ラールヴァ…」

 この女の子も、悪魔のような怪獣だったんだ。でも、今は違
う。あたしの、一番大切な存在。

「約束、いっぱい『気持ちいい』して…、サキ…」

「うん、うん、…大好き、ラールヴァ!」

 あたしたちは、お姉ちゃんたちがいるのも忘れて、激しく抱
き合いながらキスをした。舌を絡め、肌を密着させて再び愛し
あい始めたあたしたちを部屋に残して、お姉ちゃんたちも寄り
添いながらその場をあとにした。

 あたしたちはそのまま、寝食を忘れて三日三晩ぶっ通しで、
愛し合い続けてしまった。ラールヴァは怪獣の時のパワーの残
量のせいで、あたしはクイーンズ・ビーのエネルギーが逆流し
たせいらしかったけれど…。
 ちょっと、やりすぎちゃったな…。
 でも、あたし、幸せ…。

***

 数週後の、早川家の朝。

「あん、ラル、もうだめ…、ああん…」

「サキ、私も、もう…、くうんっ!」


もう朝なのに、あたしたち、こんなにアツい…
Illustrated by YAMADA Ishito



 一晩中、生まれたままの姿で愛しあっていた二人の少女は、
射し込む朝日に目を覚ますと、おはよう代わりの甘い悦楽に再
び酔いしれていた。
 爽やかな早朝の空気にも、少女たちの身体の火照りは静まる
ことなく、やがて昇りつめた二人の可憐な嬌声が、朝のしじま
に響きわたった。

「ちょっと、もう6時よ、二人ともほどほどにしなさい、早く
しないと学校に遅刻するわよ!」

 すでに居間でモーニングコーヒーをアリスと一緒に楽しんで
いた眞希が、寝室に声をかけた。

「は、は〜〜〜いっ!!」

 あわてて飛び起きた二人は、裸のまま、一枚のシーツに一緒
にくるまって部屋を飛び出し、バスルームに駆け込んでいった。

「まったくもう、毎日毎日…」
 あきれたように眞希がつぶやいた。

「うふふ、だって今が一番楽しい時期でしょうからね。アタシ
たちだってそうだったでしょ」
 アリスが2杯目のコーヒーを注ぐ。

「ま、そうね。それに、いろんな『やり方』も教えてあげたこ
とだし、ね」
 澄まし顔で答える眞希。

「悪いお姉さん。でも、まだ6時だから、学校に遅刻はしない
んじゃないかしらあ?」

「甘いわよアリス。…ほら」

 耳を澄ますアリスに、バスルームからシャワーの水音に混じ
って、少女たちの愛らしい喘ぎ声がデュエットで聞こえてきた。
 姉と恋人は思わず苦笑しながら、のんびりと早朝の空を見上
げた。

***

「あ、お父さん、…うん、こっちはおはようよ。お母さんも元
気?…ええ、順調よ。新しい友達が出来て、咲季もよろこんで
いるわ。とっても仲良しよ…」

 外国で仕事してるパパとママに電話してるお姉ちゃんと、そ
の側で、いつの間にかちゃっかり同居するようになって、まる
でお姉ちゃんの奥さんみたいに朝食の準備をしてるアリスさん。
 その横を、あたしたちは手をつないで通り過ぎた。

「いってきます!」

 重なりあう、あたしたちの声。
 おそろいの制服。おそろいのバッグに靴。そして、片方は使
い込んだ、もう片方は新品の、柔道着。

 人間になったラールヴァは、あたしたちの家で同居すること
になった。地球防衛軍の手配とかで、ラールヴァは、デンマー
クからの交換留学生(なぜデンマークなのかは、謎)「ラル・
ラウドルップ」としてあたしの家にホームステイ、という形に
なったの。うふふ、24時間、ずっとラルと一緒。

 あたしと同じ学校、同じクラス。そして、ちょっとはあの操
縦室の攻防が悔しかったのか、ラルは柔道部にも入るって言い
出した。

 澄み切った笑顔であたしに寄り添うラル。女の子同士だけど、
深く、深く愛しあって、そして、こんなに満ち足りた日々を一
緒に過ごせるなんて、あたし、想像もしてなかった。
 あんなに憂鬱だった学校生活も、まるで嘘のようにハッピー。
あ、もちろん柔道部の活動にも欠かさず参加よ。だって、鍛え
がいのある海外からの新入部員がいるんだもの。

「ねえ、ラル?今日もつきっきりでしごくからね、覚悟してよ」

「うふふ、みんなが変に思わなきゃいいけど。お手柔らかにね、
サキ」

 二人で玄関を出た、ちょうどその時。

「おはようございますっ、早川さんっ!」

 営林署の制服の、役場の人が二人。直立不動で玄関前に立っ
ていた。

「朝から申し訳ありませんっ!実は、防衛軍の観測システムが
再び、ツィフォンからの怪隕石を捉えました!」

「へ、へえっ?」

「新たな宇宙怪獣の来襲が予測されます!クイーンズ・ビーの
出撃に備えて、どうかよろしくお願いしますっ!」

「そ、そんなあ!…そうだ、ねえ、今度はお姉ちゃんがやって
よね!あたしにはラルがいるんだか…」

 そう言って振り向いたあたしの目には、かけていた電話の受
話器もそのままに姿を消していたテーブルの席と、苦笑いをす
るアリスさんだけ。

「えへへ、逃げちゃいましたね、マキちゃん」

 茫然とするあたしの手を、職員さんがとった。
「さあ、行きましょう!」

「ちょっと、ひどいわよ。ラル、助けてえっ!!」

「サキ、私も行ってあげるから、ね」

 冗談じゃない、あたしにはラルという唯一の恋人がいるのよ、
またあんな戦いをするなんて、そんなの、浮気になっちゃう!

 公用車の後部座席に押し込められたあたしは、隣に座ったラ
ルの手を握った。

「あたし、ああいうの…、ラルとだけ、したいの…」
 あたしのつぶやきに、ラルが耳元で囁いた。

「ありがとう、サキ。でも、私の『同類』たちにも『気持ちい
い』を教えてあげて。きっと、みんなわかってくれるから」

「ごめんね、ラル。でもあたしの一番好きなのは、ラルだけだ
からね」

「わかってる、サキ」


「ちなみに…」
 動き出した車の中で、職員さんが申し訳なさそうに言った。

「な、なに?」

「実は…感知された隕石は、今回、5個あるんです…」


 ラルがぎゅっと腕を抱きしめてくれる中、あたしは…。

「ひど〜いっ!!お姉ちゃん、どこに行ったのよぉ!あたし、
もうダメ、かんべんしてよお〜!誰か、たすけて〜〜!!!!」


 
完(01・7・4脱稿、7・7修正)

 



第2話〜第5話ダイジェストに続く

 

*感想を百合茶話室にお書きください*

How did you like about this story? Please tell me in my LOUNGE BBS.

 

ENTRANCE HALL
INFORMATION DESK
BACK to INDEX