超鋼美神☆クイーンズ・ビー 第7話:1時間拡大枠でお送りする 「神獣飛翔 / 誘惑宇宙人ミュカレ星人登場! 碧翼精霊蝶獣ラールヴァ復活!」 *** 咲季とラルが通う、閑静な東京郊外の女子高。 その裏山に突如出現した、機神クイーンズ・ビー。 人々にとっては大いなる救済者として7頭の宇宙怪獣の脅威 を退けた存在であるがゆえに、最初こそはパニックに陥った市 民も多かったが、徐々に落ち着きを取り戻していた。 その上、なぜかクイーンズ・ビーは出現した後、何の行動も 起こさず、ただじっと佇んでいるだけだったのだ。 もっとも、身長50メートルの鋼鉄の巨人は存在しているだ けで十分圧迫感があり、その破壊力を度々目にしてした東京都 民は、さすがに敬して遠ざけ、遠巻きにして傍観するのみだっ た。おそらく、クイーンズ・ビーが歩行を開始しただけで、こ の町内が絨毯爆撃に匹敵する被害を被ることは明らかだった。 高校でも即刻、生徒たちに帰宅の指示がされた。まもなく警 察機動部隊や自衛隊も姿を見せ、付近一帯の町内には退避命令 が出された。後には警戒に当たる部隊と、ただ彫像のように微 動だにしない機神が立つばかりだった。 クイーンズ・ビーの巨体が巻き起こすビル風が甲高い音を響 かせ、避難する人々の不安をますますかきたてた。 「これは、いったいどういうこと?」 防衛軍地下秘密基地内で、嘱託として元怪獣の少女たちのケ アに当たっていた眞希とアリスは、突然の非常事態に司令室へ 召喚された。 制服の司令官は、地下格納庫でじっと待機しているはずのク イーンズ・ビーが、突然市街地に出現したことに動転していた。 地下格納庫のモニターには、いつもそこにいるはずの機神は 映っておらず、ただぽっかりとうつろな空間があるばかりだっ た。 「空間移動ね」 さすがに緊張感を漂わせた顔つきで、眞希が吐き捨てるよう に言った。 クイーンズ・ビーを動かせるのは、自分と妹の咲季だけだ。 そして、咲季が自分から勝手にクイーンズ・ビーを動かそうと するなど、まず考えられない。何よりも、ここから搭乗しない でクイーンズ・ビーを発進させたことなど今まで無い。 咲季の身に何かが起きている。 「サキちゃんに、きっと何かあったんだわっ!」 アリスも眞希と同じことを考えていたのだろう。いつもの明 るい表情にも、暗い影がさしていた。 「携帯電話のGPSは?」 「反応はあります」 オペレーターの女性隊員が答える。 「ですが、これは咲季さんが通う学校です。避難は完了してい ますから、たぶん荷物の中に」 眞希が振り向いた。 「咲季を探しに行きます。いざという時は、私がクイーンズ・ ビーに乗り込んで制御しますから」 言うが早いか、眞希は司令室を駆けだしていった。 「くれぐれも、早まった攻撃とかしないでくださいね〜」 アリスもそう言い残し、あわてて恋人の後を追った。 *** …ここ、どこだろ…。 なんだか、ふわふわするよ…。 たしか、マヤさんが話しかけてきて…。 きれいな目で見つめられて…。 よくわからないや…。頭が、ぼうっとしちゃって…。 夢を見てるのかな…。 …。 あれ、マヤさんがいる。 きれいだなあ。あこがれちゃうなあ。 きれいな髪がふわふわで、きらきらしてる。 まるで女神さまみたい…。 まっ白い肌に、きれいなおっぱい…。 マヤさん、ハダカなんだ…、あ、あたしもそうか…。 そうか…、あたし、マヤさんの恋人だったんだっけ…。 さっきまで愛しあってたんだった…。 なに忘れてるんだろ、やだなあ…。 おっかしいな…マヤさんてば、もっとほっそりしてたような 気がするんだけど…。 あ、マヤさんが近づいてくる。 マヤさん大好き、ね、キスして…。もっと、あたしを愛して…。 あれ、マヤさん、こんな髪の色だっけ。 …たしか、プラチナブロ… …ああ、きもちいいっ…… *** サキ!! 無人になった路上を、私はただ、走っていた。 マヤ、あの女の狙いはクイーンズ・ビーだ!サキを操って、 クイーンズ・ビーを手に入れようと! あの女の「ニオイ」も、サキの居場所も感知できない。きっ と何か仕掛けがあるからだ。でも、諦めるわけにはいかない。 サキは、私の命なのだから。 「君、ここは立入禁止だぞっ!…うわあ、おい待てっ!」 警戒中の自衛隊員が立ちふさがった。だが、私は走るスピー ドをさらに上げ、野獣のような咆哮をあげて突き飛ばしながら、 そのまま突進し続けた。 『…シャアアアアアアアっっっ!!!!!!』 失われた怪獣としての超感覚が蘇ってきた。視力がだんだん 弱くなり、その代わりに嗅覚と聴覚が鋭敏になっていった。全 身の触覚が腫れるように広がっていく。もう存在しない触角や 単眼までもが戻ってきたかのように、止めどもなく外部情報が 皮膚から脳に伝わっていく。 私は風圧に抗って、上半身を前傾させて走り続けた。 空気の流れすら鮮明に感じとれる己れの本能に、私は全てを ゆだねていた。マヤがどれほどに小賢しい仕掛けを施そうとも、 私の魂がきっとサキを見つけ出すはず。いや、それに賭けるし かすべはないのだ。 今の私の敵は、空気だった。いくら全力で走っても、私はま るで自分がスローモーションで歩いているようにしか感じられ ない。目の前をスズメが横切っていく、その翼の上下運動すら ストロボアクションに見える。 顔を上げた私の視線の向こうに、裏山に立ちつくしたままの クイーンズ・ビーの巨体が、ぼんやりと浮かび上がっている。 『…サ・キ!』 機神のシルエットが、私の行くべき道を指し示している。 動いて、私の両脚!! *** 「間違いないわね」 愛車ミツオカ・ビュートのサイドウィンドウから顔を出し、 先ほど死にものぐるいの形相で駆けてきた女子高生に10メー トル近くも突き飛ばされてその行方を見失ってしまい面目なさ げな自衛隊員の話を聞きながら、眞希は呟いた。 「ラルちゃんなら、きっとサキちゃんの居場所を探し出せると 思うわ。ね、マキちゃん!」 助手席のアリスが断言した。 「後を追いましょう。ありがとう!」 隊員をねぎらい、眞希は再びアクセルを踏み込んで発進した。 町外れに立つ新築の邸宅。二階建てで、瀟洒なバルコニーや 屋根の破風が豪華な屋敷。 ラルの本能が確信をもってたどり着いたのは、その家の前だ った。 まるで憑き物が落ちたかのように茫然と虚脱した表情を浮か べて、ラルは夢遊病者のようにその家に入っていった。間取り などわかるはずもないのに、ラルは何度も来たことがあるかの ような様子で、すたすた中を進んでいく。そして、ためらいも なく地下室への階段を下りた。 荒い息を切らしながら、消耗しきっていたラルはふらふらし だした。あやうく階段を踏み外しそうにもなった。 だが、ラルの瞳に再び鋭い輝きが戻った。突き当たりの扉の 向こうから、耳に聞き慣れた咲季の声が聞こえたのだ。ようや く見つけた、と思うまもなく、その声がマヤの名を呼ぶ嬌声で あったことに気づいたラルの、全身の血が逆流した。 怒りに身を任せ、ラルは乱暴に扉を開けた。 微かな灯りしかない煉瓦造りのがらんとした地下室。だがそ の奥には立派なベッドがしつらえられていた。その上には、ち ょうど今しがた絶頂に達してその余韻に身を震わせながら息も 荒くぐったりと崩れ伏した咲季。そして、その身体を愛おしげ に抱きしめながら身を起こし、勝ち誇った笑みを投げかけてく るマヤ。 二人とも全裸で、全身を汗に濡らしている。たった今まで濃 厚で淫靡なレズプレイにのめり込んでいたことは明らかだった。 「サキをはなしなさいっ!」 咲季が怪獣少女たちとクイーンズ・ビーの中で愛しあってい たことにも寛容だったラルが、今は凄まじいほどの怒りと、痛 々しいほどの切なさの入り混じった表情で絶叫した。 「ふふふ、シールドを張っているのに、よくここがわかったも のね。誉めてさしあげますわ」 汗に濡れた巻き毛を掻きあげ、挑発的にマヤが笑う。 「それにしても、咲季さんって本当に可愛いわ。こんな素敵な 人を今まで独占していただなんて、なんて貴女は罪作りな女な のかしら。でも、もう無駄よ。咲季さんの全てはわたくしのも の。この愛らしい顔も、敏感な身体も、蜜に溢れたあそこも…」 「いやああっ、サキ、サキぃっ!!」 その声に、咲季が再び目を開けた。だが、その瞳は焦点を失 い、靄がかかったかのように濁っていた。そして、惚けたよう な顔でマヤにすがりつく。 「あ…、うんん、ああっ、マヤさああん…。ねえ、おねがいぃ、 もっと、してぇ…」 マヤの、いや、ミュカレ星人の催眠邪眼(ヒュプノ・アイ) に呪縛され、夢幻の境地の中で、マヤを自分の恋人だと刷り込 まれてしまった咲季は、今や偽りの恋人の思うがままの肉人形 と化していた。 「サキ、目を覚ましてっ!私に気づいて!!!」 悲痛なラルは、しかしそこから動くことはできなかった。目 には見えない力場が透明のシールドになってがベッドの周囲を 覆っているのが、ラルの超感覚にははっきり感知できた。もし このまま突っこんでいれば、強烈なダメージが襲う。普通の人 間なら刃のような力場の嵐にズタズタにされてしまうだろう。 「無駄よ、もう咲季さんにはわたくしの声しか聞こえませんわ。 これで、クイーンズ・ビーはわたくしの思うがまま。わたくし たちは手を汚さずに、クイーンズ・ビーが地球文明を破壊する のを待つばかり。今はまだ、咲季さんを乗り込ませて操縦させ ることはできませんけど、いずれはね。遠隔命令でただ歩き回 らせるだけでも、大被害がもたらされるでしょうけれど。ほ、 ほほほ、ほほほほほほ…」 勝った。わたくしの勝ちよ。 でも、クイーンズ・ビーを手に入れたことより、咲季さんを ラルから奪い取れたことの方が私には何よりの勲章。咲季さん をわたくしが独占できる…ああ、なんて幸せなのかしら。 「絶望に身をよじりながら、そこでわたくしが咲季さんを愛し 尽くす姿を見ているがいいわ。ああ、なんてかわいいのかしら ね。思わず任務を忘れて、貴女に溺れてしまいそうよ、咲季… もうすぐ、堕ちるわ」 至上の笑顔をすり寄ってくる咲季に向け、マヤはその裸身を 地球人の少女に密着させた。そして再び、汗に濡れた乳房を弄 びながら、舌を伸ばして差し込むようにキスしていく。 その舌を貪るようにして、正気を失った咲季が縋るようにキ スを返した。 「サキ、サキぃーーーーーーっっ!!!!!」 ラルは、涙が止まらなかった。こんな辛い気持ちになったこ とはない。 こんな咲季の姿を見せつけられる己れの運命を、ラルは初め て呪った。 …あきらめはしない。 涙の中にも、ラルは決意する。 咲季は、本心から自分を捨ててマヤに心変わりしたんじゃな い。間違いなく、強制的に心を支配され、操られている。 なら、それを打ち破れるのは、本当に咲季が愛してくれてい る私だけ! 「サキっ!」 一声叫んだラルが、涙を振るって歩を進めた。 その瞬間、不可視のシールドが無慈悲に反応した。電撃のよ うな強力な反発力が容赦なく少女の全身を襲い、ラルは後ろに 跳ねとばされた。 「ふふ、身体で痛い目に遭わないと理解できないなんて、やっ ぱり下等生物ね。わかったらそこでおとなしく…」 侮蔑の笑みを浮かべて言い放ったマヤは、次の瞬間、信じら れないものを見た。 立ち上がったラルが、今度は両足に力を込めて、再びこちら に向かってきたのだ。またもシールドが反応し、衝撃がラルを 襲う。 しかし、今度のラルは跳ねとばされなかった。激しい衝撃音 がバチバチバチッと弾け、ラルの服が裂け、髪がちぎれた。振 動にラルの皮膚が歪み、高周波にみみず腫れが走った。 だが、ラルはひるまなかった。頭では、このシールドを人間 になった自分には破れないとわかっていながら、しかし、ラル は引き下がらなかった。 空気がはじける爆音の中、食いしばったラルの口からわずか に漏れた言葉。 「…サキ…!いま、行くよ……!!!」 その鬼気迫る姿に、マヤは不覚にもたじろいだ。ここまで、 自分を犠牲にして咲季のことを…。 「…ふ、ふんっ!」 強がるように、マヤが鼻で笑った。 「いくらやっても無駄なことですわ。さ、あんな愚かな女など 放っておいて、私たちはもっと楽しみましょう…。…咲季?」 ラルを無視しようと咲季に顔を向けたマヤは、はっとした。 虚ろな無表情のままの咲季が、生気の失った瞳をじっとラル の方に向けたまま凍ったように動かなかった。 *** 『……サキ、サキぃっっっ!!!…』 だれなの、あたしを呼んでるのは? あたし…もっとマヤさんと気持ちいいことしたいのに…。 あれ、でも…あの声…。聞いたことがある……。 どうしてそんなに悲しそうにあたしを呼んでるの…? なんだか、あたしも苦しいよ…。どうして…? あたし、マヤさんに抱かれてとってもしあわせなはずなのに…。 あの声を聞いてると…。 だれ、あなたは…? あ…。 …ラ……。 …。 ……ラル。 そうだ、ラルだ…。 ラールヴァ…。 あたしたち、クイーンズ・ビーの中で出会って、初めてエッ チして、そしていっしょに…。 だめ、ファイナル・スタナーはだめ。 ラールヴァが、しんじゃうよ…。 いや、いやあ…。 あたしったら、なんてことを…! いやあっ!!!ラールヴァ、ラールヴァあ!ごめんなさい、 あたし、そんな…! 愛してるって言ったのに!ずっと一緒って言ったのに! あたしったら、あたし…!!! ラル!!! ラルが泣いてる! ラルが苦しんでる!! ラルっ!!! *** 「…ラルっ!!!!」 ベッドの上のサキの瞳に光が戻ったのを、私は確かに見た。 全身に広がる苦痛も、私の想いまで遮ることはできなかった。 勝ったのは、私。 「咲季!そんな、まさか、私の邪眼が破られた?そんなはずは…!」 身を起こしたサキの顔に、マヤは動揺していた。 「マヤさん、あたしに何を!離して!!」 サキはマヤを睨みつけて、逆に離すまいとすがるマヤを押し のけようとした。 「ごめんなさい、咲季さん、でもわたくし、貴女のことが本気 で…咲季さん、わたくしのものになって!!」 「離してえっ!…ラル!まってて!!」 マヤの懇願をはねのけ、サキはベッドから下りるとそのまま 私の方に駆け寄ってきた。 …まずい!このシールド! 生身でこのまま突っこんだら、サキはズタズタにっ!!! 「サキ、止まって!」 しかし、私の声はシールドの放つ爆音にかき消されたのか、 サキの耳には入らない。 「ラルぅ!!」 間に合わない!私は思わず目をつぶった。 サキが死んだら、私も死ぬ!そう、思った。 だが、次の瞬間、私を押さえつけていたものがすっと消えた。 そして、サキの小さな身体が、私の腕の中に飛び込んできた。 「ラル、ごめんなさい、あたし…」 私の胸に顔を埋め、サキがすすり泣いた。 私は満足だった。サキは私のところに戻ってきてくれた。 「ちがう、サキ…。サキは何も悪くなんかない。私が悪かった の。私、最初からマヤの正体に気づいてた。なのに、私は自分 の正体を気にして、サキに本当のことを言わなかった。許して、 サキ、許して…」 サキを取り戻して、私の心に再び慚愧の念がこみ上げてきた。 私に勇気がなかったのが、私に力がなかったのが、全ての元凶。 「…あ、ああ、…あああ……」 部屋の奥からかすかな嗚咽が聞こえた。 顔を上げた私と、振り向いたサキが見たものは、ベッドの上 で茫然とへたりこむマヤの姿だった。 今にも泣き出しように顔を歪めていたマヤの手が、ベッドサ イドの小さなスイッチに伸びていた。それがあのシールド解除 のスイッチであること、そしてマヤがその邪悪な使命にもかか わらず、サキがシールドに突っこんでしまう直前に、その身を 案じてスイッチを切ったことを、私はすぐ悟った。 奇妙なことに、さっきまであれほどにマヤを憎く思っていた のが、その瞬間、私の憎悪は氷のように溶けてしまっていた。 「マヤさん、あなたは…」 事情がまだのみ込めていないサキが、いぶかしげに声をかけ た。 「認めない!!」 いきなり、マヤが絶叫した。 「認めない、認めませんわ!咲季さんにふさわしいのはこの私! 咲季さんと、クイーンズ・ビーは私のものだったはず!」 口で呪いの言葉を吐きながらも、マヤの顔には敗北の悲しみ が満ちていた。サキと私の間に割り込む余地などないことを、 目の前でおきたありうべからざることで思い知って。 その時、マヤに異常が起きた。マヤの裸身のあちこちに弾け るような光の粒が浮かび上がってきた。 それに気づいたマヤが、恐怖に顔面蒼白になって、目をカッ と見開いた。 「…いや、いやああっ、この私を、誇りあるミュカレの使者た るこの私を!」 光は今や、マヤの全身を覆いかけていた。 「お願い、咲季さん、見ないでぇっ!!!私の、私の姿を見な いでぇぇぇっ!!!!!」 泣き叫ぶマヤの姿が、ついに白い光に包まれた、と見るや、 その光は弾けるように消えてしまった。転移したらしい。 「サキ、マヤは地球を侵略に来た宇宙人だったの。きっとこの ままではすまないわ」 「マヤさんが…」 やっと状況を把握したサキが、視線を落とした。心を操られ て肉体を奪われたとはいえ、サキにとっては親しいクラスメイ トだったのだから。 私はベッドシーツを引きはがし、全裸のサキに纏わせると、 家の外に向かって歩き出した。 *** 咲季とラルが外に出たところに、見慣れた姉の車が走ってく るのが見えた。 「咲季!ラル!無事だったのね!」 車から降りた眞希が、安堵の声をあげた。 「あれえ、サキちゃんもラルちゃんもどうしたんですかあ、そ の格好は?」 心配げに駆け寄ってきたアリスが、全裸にシーツを巻いただ けの咲季と、シールドの衝撃波で制服がボロボロになってこち らも半裸状態のラルの姿に目を回す。 「お姉ちゃん…」 「…転校生が、宇宙人の変装だったんです。サキをさらって催 眠術で操り、クイーンズ・ビーを手に入れようとして…」 ラルが簡潔に事情を眞希に告げると、明晰な美女は即座に状 況を呑み込んだ。 「さっきここから光の玉が飛んでいったわ。おかげで私たちも ここに気づいたの。急ぐわよ、万一の事態に備えましょう!」 すばやく判断して、眞希は二人を車の後部座席に押し込むと、 助手席のアリスが扉を閉めるが早いか、猛スピードで急発進し、 無人の町内を疾駆した。 目指すは高校の裏山にいまだに立ちつくしたままの、機神ク イーンズ・ビー。 町の中心部に大きな爆発が起こった。 ズーンと響く重低音に、車の面々が振り返って見たもの。 JRの駅ビルを粉々にしながら、うずくまった黒い影がゆっ くりと立ち上がった。 黒光りするゴムのようにヌメヌメした全身は、むしろスリム な人間型のシルエット。長い手足は細く見えるが、まるで鞭の ように柔軟にしなり、触れるもの全てを粉砕している。そして、 頭部には腔腸動物を思わせるヒレのような感覚器官が波のよう にうねり、その奥にはオレンジ色に輝く巨大な眼球が不気味に 光っている。 そして、真っ黒な全身には神経網のような細い筋が縦横に走 り、その中に神経節と思われる星状の点が青白く光っていた。 それこそが、宇宙の果てからの恐るべき侵略者、ミュカレ星 人のフル・ポテンシャルを発現させた真の姿だった。 そして、咲季もラルもすぐに悟った。 あれは、クラスの耳目を集めた美しい転校生の。 操られていたとはいえ、身体を交わし合った美少女の。 愛する少女をいっとき奪い取った憎き恋敵の。 そして、地球侵略の任務に失敗した哀れな宇宙人の末路の姿 であることを。 『お願い、咲季さん、見ないでぇっ!!!私の、私の姿を見な いでぇぇぇっ!!!!!』 マヤの最後の言葉が、二人の脳裏に蘇った。 *** あたしは、怒っていた。 マヤさんに、じゃない。そりゃ、操られてエッチされたのは 口惜しいけど、それよりも、そんなことになってしまった自分 自身の心の隙が、情けなかった。 マヤさんにたやすく操られたことで、あたし、ハッキリわか った。 あたしはラルを愛しているのに、他の怪獣少女たちともエッ チしなきゃならないことで、自信を持てなくなっていたんだ。 あんなに乱暴にラルとエッチしてたのは、自分の自信の無さの 裏返しだったんだ。 もしあたしがもっと自分の愛情に自信を持っていたら、あん なにたやすくマヤさんに心の隙間に入り込まれなかったかもし れない。 でも、もう迷ったりするもんか。 ラルはあたしを救い出すために、あんなにボロボロになるま でがんばってくれたんだもの。 ぜったい証明してみせる!あたしが心から愛しているのは、 ラルだけ! あたしたちはクイーンズ・ビーの足元にたどり着いた。あた しはいつものように、クイーンズ・ビーの正面に向かい合った。 機神の胸部が光り出し、あたしを受け入れようとした。 「待って、サキ!」 ラルがいきなりあたしの手をとった。そして言ったの。 「クイーンズ・ビー!お願い、私にも力を貸して!サキを支え るための力を貸して!」 ラルは祈るようにクイーンズ・ビーを見上げていた。 こんなに美しく、凛々しいラルの横顔を、あたしは初めて見 た。 *** 私は、怒っていた。自分の無力さに。 私に力があって、サキの戦いを助けることができたなら、サ キはあんなに苦しまなくてすんだ。 私に勇気があって、サキに真実を告げていたら、サキはあん なあぶない目にあわなくてすんだ。 でも、私は気がついた。私はすっかりただの人間になってし まってはいない。サキを探していた私の中で、確かに怪獣の本 能は目覚めていた。怪獣の超感覚が、サキの居場所を教えてく れた。 私の中には、まだ力が残っている。 これを再び覚醒させられれば、きっとサキを支えることがで きる。 そしてそれが可能なのは、きっと…。 「ラル、それは無理よ」 静かに眞希さんが言った。 「クイーンズ・ビーを操縦しようと、なんにんもの人が試し、 調べ、研究したわ。でも、クイーンズ・ビーに乗り込めたのは 私と、咲季だけだった。アリスですら無理だったの。残念だけ ど、きっと…。それに、ああいう戦い方をするクイーンズ・ビ ーに、二人で乗り込んだら何が起きるのかわからないわ。諦め なさい」 「いいえ」 私は、きっぱり答えた。 「私は、サキを支えなきゃいけない。サキを手助けできるのは、 私だけ。私がサキと出会い、愛しあうようになったのがクイー ンズ・ビーの与えてくれた運命なら、私はサキと一緒に戦わな きゃならないんです」 「ラル!」 サキが私の手を握りかえした。 私はサキに微笑むと、再び顔を上げた。 「お願い、クイーンズ・ビー!サキの力になりたいの!私を受 け入れて!」 「ラル、ありがとう!」 サキが私をギュッと抱きしめてくれた。 「お願い!サキのためなら、死んだってかまわない!サキのた めに、私は生きたいの!」 その声に応えるかのように。 クイーンズ・ビーの胸部が、眩く輝いた。 浮遊感が、私たちを包んだ。 『…ありがとう、クイーンズ・ビー…』 *** いつもの眩い光に包まれて、咲季は目を閉じた。そして機神 と一体になる浮遊感覚の後、咲季は目を開けた。 あの球形コクピットが外の光景を映し出した。すでに場所は あの裏山から、巨大化宇宙人が暴れる市街中心部を視界にとら える位置に転移している。 「…ラル!ラルは!?」 ハッとして、咲季は振り向いた。 市外に待避して巨大宇宙人の破壊を見守るばかりだった人々 は、クイーンズ・ビーの出現に歓喜の声をあげた。 だが、その声は一瞬に悲鳴に変わった。 クイーンズ・ビーの背後に蹲る巨大なシルエットを、人々は 忘れていなかった。 巨大宇宙怪獣ラールヴァ! クイーンズ・ビーのファイナル・スタナーによって焼き尽く されたはずの、邪悪な昆虫型宇宙怪獣。 そのラールヴァが、巨大な大顎を構え、鎌首を持ち上げてク イーンズ・ビーの背後を窺っていたのだ。 巨大宇宙人と、宇宙怪獣との挟み撃ち。 さしもの無敵なクイーンズ・ビーもどうなるのか。人々を不 安と恐怖が包んだ。 その時だった。 ざわざわと蠕動するラールヴァの多足の動きが止まった。全 身を覆う漆黒のキチン質の外骨格が、あっという間に真っ赤に 白熱した。熱気に巻き上がる上昇気流が、成り行きを見守る人 々のところにまで到達し、熱風となって伝わる。 そしてその熱気に目を背けた人々が、再び目にしたもの。 ラールヴァの外骨格に、みるみるうちに亀裂が走った。亀裂 は亀裂を呼び、ラールヴァの全身が亀裂で覆われていく。その 亀裂から、細い光の筋が何本も放たれた、その刹那。 ラールヴァの背中が大きく割れた。 その中から、光の塊がゆっくりと身を起こす。 何が起こったのかわからず、目が眩んだ人々から、光が消え た直後、どよめきが起こった。 ラールヴァの中から、青白い人間型の巨大な姿がゆらりと立 ち上がった。 滑らかな身体のラインは、明らかに女性の姿に見えたが、よ く見るとその身体も外骨格になっていて、間接部が節になって いる。そして頭部には大きな複眼が目立つ。鼻や口は判別でき ず、全ての感覚を触角に集中しているようだった。そして、後 頭部からはプラチナに光る妖しい髪状の放熱繊維が翻るように たなびいていた。 そして、背中の巨大な展翅がゆっくりと乾燥し、皺がとれて 一枚板のように広がった。繊細な鱗粉が複雑な幾何学模様に敷 き詰められ、光を複雑に反射して構造色を構成し、まるで紺碧 の海のような、深い深いメタリックブルーの輝きを放った。 伝説の聖蝶、あのモルフォ蝶の、妖精。 人々はその美しさに目を奪われた。どよめきは嘆声に変わっ た。 そして、醜悪な怪獣の骸を脱ぎ捨て、異世界から舞い降りた 妖精獣は、かろやかに、まるで宙を歩くかのようにして、そっ とクイーンズ・ビーの傍らに寄り添うと、静かに片膝をついた。 邪悪な宇宙大怪獣ラールヴァは、今や、この世ならざる美し き聖獣として転生し、そして、無敵の機神クイーンズ・ビーの 最も忠実な従属神として復活したのだ。 人々のため息が、やがて歓声に変わり、町中に反響していっ た。 *** 「ラル…」 あたしは、目を潤ませた。 ラルは、初めて出会った時と同じように、白い裸身のまま、 あたしの隣に立っていた。違ったのは、あの時は怒りに燃えた 目をしていたラルが、今は最高の笑顔と涙であたしを見ていた こと。 「サキ、私も、一緒に…」 「うんっ」 あたしはうなずいて、ラルの手をギュッと握った。 「これからは、いつも、ずっと一緒だよ!」 そしてあたしたちはゆっくりと歩き出した。巨大宇宙人が暴 れている場所まで。 やがてコクピットの中に、宇宙人の姿が映り込んできた。人 間の姿に転換された姿は、思ったとおり、マヤさんだった。 外で暴れまくる宇宙人の姿と対照的に、マヤさんは力無く佇 んでいた。あたしたちと視線を交わそうともせず、うつむいた 目から、やがてぽたぽた涙が足元に落ちた。 「マヤさん…」 「…お願い、わたくしを殺して」 マヤさんの口から、信じられない言葉が出た。 「…わたくしは、任務に失敗した。咲季さん、貴女を操りクイ ーンズ・ビーを手に入れ、地球侵略を謀ろうとしたミュカレの 作戦は瓦解した。だからわたくしは、失敗の責任をとらされた。」 「そんな…!」 「わたくしは強制的に巨大化され、自意識も奪われ、ただ狂っ たように暴れ回るケダモノに堕とされた。この、わたくしが…。 名誉あるミュカレの使者である、このわたくしが…。もうわた くしは、もとの身体に戻ることもできない…」 「酷い」 ラルが思わず呟いた。あたしは声も出なかった。 「こんなの、耐えられない…。お願い咲季さん、わたくしの尊 厳を守るために、わたくしを殺してっ!わたくしの存在をこの 世から消して!!お願い、お願いよ…っ!!」 マヤさんががっくり膝をついて泣きだした。あの、気品と自 信に満ちていたマヤさんが…。 「ラル、お願い…、マヤさんを『助ける』ために、力を貸して」 ラルは、そっとうなずいてくれた。 泣き続けるマヤさんに、あたしは近づくと、囁いた。 「だいじょうぶだよ、マヤさん…。あたしたちに、任せて。マ ヤさんを殺したりなんかさせない」 顔を上げたマヤさんが、信じられないという顔であたしたち を見つめる。 「そんな…わたくしは貴女を…貴女たちを陥れて…傷つけて…。 そんなわたくしを、どうして…」 「でも、サキを助けてくれた」 ラルも近づいて、優しく語りかける。 「マヤがあの時シールドのスイッチを切ってくれなかったら、 サキの命はなかった。あの時、私もわかった。マヤも、サキの 愛を受け止めてくれたんだ、って」 「咲季さん…、ラル…」 また、泣きそうな顔のマヤさん。 「さ、マヤさん、力を抜いて、あたしたちに任せて、ね…」 *** 近づいてくるクイーンズ・ビーとラールヴァに、狂乱する宇 宙人が気づいた。 ミュカレ星人は威嚇するように、絹を引き裂くような凄まじ く不快な金属音の雄叫びをあげた。 だが、それに全く動ずることもなくクイーンズ・ビーは間合 いを詰めてくる。ラールヴァはふわりと舞い上がり、上空から 牽制する。 巨大宇宙人のオレンジ色の目が輝いたと見るや、いきなり何 の前触れも見せず、両眼から怪光線が放たれた!光線はまっす ぐクイーンズ・ビーの胸元に向かう。未知のテクノロジーで機 神の不可視シールドを無効化する光線は、そのまま胸部を直撃、 直後に大爆発が巻き起こった。 だが、爆炎が晴れた後には、クイーンズ・ビーが全くの健在 のまま立っていた。そのボディにも、傷一つ無い。 ミュカレ星人の多関節な長い両腕が、激しくしなった。そし て、猛烈な早さで回転を始め、周りのビルが触れただけで砕け、 風圧で瓦礫が吹っ飛ぶ。 そして星人は、その刃物のような腕を振りかぶると、目にも 止まらぬ素早さで一気に機神に向かって振り下ろした。 一刀両断! しかし、人々が見たものは、大鉈のように巨大な宇宙人の刃 の掌を、わずか左手の指二本で受け止め、がっしりと挟み込ん で微動だにしないクイーンズ・ビーの姿だった。 その手を、クイーンズ・ビーはまるで紙屑のように無造作に 横に放った。その勢いに、ミュカレ星人の巨体が浮き上がり、 もんどり打ってクイーンズ・ビーの左側に転がり伏す。ビル街 が倒壊する大音響すら遮るように鳴り響いたのは、投げ捨てら れた宇宙人の強靱な右腕の多関節の骨格が完璧に粉砕骨折する 鈍い連続音だった。 痛みに耐えかねたのか、狂乱の星人は悶絶しながらも、その 眼窩から破壊光線を乱れ撃ちした。だが不思議なことに、光線 はさっきのような直線をなさず、ミュカレ星人の周囲で弾ける 爆竹のように乱反射した。 見ると、上空を飛ぶラールヴァの羽ばたきとともに、その鱗 粉が星人に舞い散って、ビームを反射していたのだ。 己れの発したビームに自らを焼かれ、ミュカレ星人はさらに 苦痛にのたうち回った。 *** 「ああっ!…いい、いいの!わたくし、もう…、あはあああん っ!!」 市街地の映像が映る球形コクピットの中、床に横たわったマ ヤは、サキと私の二人がかりで愛撫されていた。サキがマヤの 乳房を揉みしだきながら、首筋に舌を這わせる。私は反対側の 乳首を口にくわえて、マヤの脇腹に胸を擦りつける。 催眠状態のサキをいいように弄んだマヤだったけれど、本気 になった私たちに付け焼き刃のテクニックでかなうはずがない。 なんて言ったって、出会ったあの日から毎日のように愛しあっ てる私たちなんだもの。女の子の身体の「気持ちいい」のポイ ント、たっぷり教えてあげるわ。 「マヤさん…、陰謀とか作戦とかで心を縛って相手を支配する より…こうして互いにハダカの心を一つにするほうが、ずっと いいでしょ?今のマヤさんなら、あたし、大好きだよ…」 サキが聖母の微笑みで、マヤの頬にキスしながら、涙を舌で 拭っている。 きっとサキは、今までもああやって、心からいとおしんで 「仲間たち」を愛してあげていたんだな。そう思うと、なんと なく誇らしい。私の愛する人がどれだけ愛に満ちているかが、 よくわかる。 でも同時に、これだけ咲季に愛されてる自分だけど、なんだ か羨ましい…。 これが「嫉妬」ってものなのかな。でも…。これからは、私 も一緒に…。 「マヤ、私の仕返しはこれで勘弁してあげる。サキを私から盗 もうなんて、二度と考えないこと」 マヤは今までの高飛車な態度もすっかり無くして、私とサキ の愛撫に夢見心地になって、ただうなずくだけ。 「ああん、ごめんなさい、マヤは悪い娘だったわ!もう、わた くし、どうなってもいいっ!お願い、咲季さん、ラルさん、許 してぇっ!!」 二人に同時に攻められて、マヤの絶頂が近いのがわかった。 「ね、ラル、いっしょにしてあげようね」 サキが私に言いながら、マヤの股間に顔を下げていく。私も サキに並ぶようにして身体をずらしていった。 「…ひ、ひいいいっ!そんな、そんなのってぇっ!!ああああ んんっ!!!」 マヤの長い両脚を思いっきり押し開いて、サキと私は二人同 時にマヤの秘肉を舌で舐めた。 すっかり蜜に濡れていた秘所を、私たちは競争するようにし ゃぶりながら、肉の奥の赤い宝石を見つけると、交互に舌や歯 で刺激する。 「ああ、こんな、すごいぃっ!!お口でそんなことぉ!!咲季 さん!ラルさん!わたくし、うれしい…っ!!」 そしてサキと私はまるでキスするように唇を密着させながら、 マヤの秘所の奥に一緒に舌を…。 「あ、イク、イッちゃうっ!わたくし、イクうううっっっ!!」 マヤの全身が硬直し、秘所からあふれ出す蜜に、息を詰まら せそうになりながらも、私もサキも舌の動きを止めることはな かった…。 *** 大きなダメージを受けたミュカレ星人は、すでに立ち上がる こともできずに瓦礫の中で蠢くだけになった。 ラールヴァが機神の背後に着地するのを待って、クイーンズ・ ビーがついに、胸部動力炉の隔壁を開いた。 そして次の瞬間、おびただしい光の束が、ついに黒光りする 星人の巨躯に向かって発射された。 ファイナル・スタナー! 轟音と共に、ミュカレ星人の全身が焼き尽くされ、分子にま で分解されていく。 巨大な火柱が巻き起こり、熱風が上空に向けて伸びていった。 「やった、勝ったんですね、サキちゃん!!ラルちゃんも、す ごいすごいっ!」 戦いの一部始終を見ていたアリスが、ぴょんぴょん跳ねなが ら喜んだ。 「奇跡って、あるのねぇ。たいしたもんだわ、あの二人」 ほっとしながら、眞希は車のドアに手を掛けた。 「さ、行くわよアリス。今のファイナル・スタナーで、たぶん また新しい女の子が地下格納庫に転送されてくるはずよ。ちゃ んと迎えてあげましょ」 「はあ〜い…。あれ、マキちゃん、あれ、なにかな?」 アリスが上空彼方に目をやりながら言った。 「え、なに?何も見えないわよ?」 「だって、ほら…。あ、そうか、普通の人間の視力じゃ無理か。 でも、空の上に何かあるの」 アリスがそう言った瞬間、空が光った。 成層圏をはるか越えた、地球の静止衛星軌道。 そこに、無数の戦闘円盤が集結していた。ミュカレ星人が誇 る、惑星壊滅を任務とする機械化戦闘艦隊である。工作員の侵 略が失敗した場合、その文明のレベルを脅威と見なし、問答無 用で壊滅させるロボット円盤群が、ついにクイーンズ・ビーに 向けてその火蓋を切った。 クイーンズ・ビーとラールヴァに向かって、無数のビームが 降りそそいだ。 垂直に飛来するビームは破壊力はそこそこだが、とにかく数 が多く、まるで滝を浴びているかのようだった。降りそそぐ光 線が地上の建造物に命中し、あちこちで大爆発が連鎖して発生 した。 やがてビームの雨は正確に機神に集中し始めた。細い光線が 束になって降り注ぎ、何回も直撃していく。 さすがにクイーンズ・ビーに目立った損傷はないが、直撃弾 が何度も炸裂するたびに機神の全身が爆炎に覆われる。その激 しさに、クイーンズ・ビーすら足をとられ、大きく揺らぐ。ま してや生身のラールヴァは、鱗粉を散布してビームを逸らすこ とで直撃を避けるのが精一杯だった。 戦場から全速力で車を走らせ離脱しながら、眞希もアリスも 不安げに振り向いた。 二人とも、問題をよくわかっていた。 機神は、空を飛べないのだ。 眞希が初めてクイーンズ・ビーに乗り込み、今は永遠の恋人 になったアリス…アスタルテと戦った時、東京にはとてつもな い被害が出た。格闘技の心得が無い眞希が慣れない戦いを強い られた面もあったが、何より、飛行能力を持っていたアスタル テを把握するのに手間取り、戦場が無制限に拡大したのが、最 も大きな原因だった。 そのことを身をもって知っている二人は途方に暮れていた。 手の届かない宇宙空間からの攻撃に、咲季とラルはどうすれ ば? *** 「サキ!飛びます!」 ラルが決然と叫んだ。 「私にはわかる。私の力はサキを支えるもの!信じて、サキ!」 「ラル!」 どうなるかはわからない。でも、あたしはラルを信じる! このままじゃ町は立ち直れないほどに被害を受ける。守れる のは私、クイーンズ・ビーだけなんだ! 二人っきりのコクピットの中、あたしとラルはしっかり抱き 合って口づけを交わした。 機神の奥底から、重低音が響きだした。 *** 聖獣ラールヴァの全身が、メタリックブルーの光の輝きに包 まれた。 その光の中、ラールヴァの身体がトランスフォームを始めた。 滑らかな曲線の身体は、直線的なメカニックに変換されてい く。 丸い蝶の翼が、輝きながら航空機のような可変デルタ翼に変 わっていく。 胴体が強力なエンジンと噴射口を形成していく。 光がおさまり、ラールヴァの姿は精霊から、巨大な翼を誇ら しげに広げた「飛行ユニット」になっていた。 そしてゆっくりと、飛行ユニット「ラールヴァ」は、クイー ンズ・ビーの背後に合体した。 ラールヴァの力によって、ついに機神は空をもその支配下に 置いたのだ! 可変翼が全開になり、機神の身長の二倍にも達する。そして、 背中の反重力パルスロケットが無限のパワーを放ちながら点火 した。 凄まじい轟音と共に爆炎が吹き上がり、その中を機神クイー ンズ・ビーは地球の重力をやすやすと離脱し、まっすぐに上空 に向かってロケットのように急上昇した。 降りそそぐビームも、クイーンズ・ビーを止めることはでき ない。機神はあっという間に成層圏を突破していった。 眞希も、アリスも、避難民たちも、全員があっけにとられて 上を見上げるばかりだった。そして、聖なる戦闘女神が昇天し ていく姿が点になって見えなくなるまで、その視線を下ろすこ とはできなかった。 それはまるで、復活した救世主が昇天するさまを見上げる娼 婦の信心を描いた、エル・グレコの聖画のようであった。 *** 「すごい、ラル、あたしたち、飛んでるぅ!」 二人しっかり抱きあいながら、サキが目を輝かせて上を見上 げる。 雲が切れ、青い空があっという間に宇宙の黒に変わった。そ して、相変わらず降りそそぐビームの集中点に向かって、クイ ーンズ・ビーはまっすぐ跳び続けた。 やがて、コクピットの上方に、無数の光点が見えだした。 あれがマヤを使ってサキを陥れ、そしてマヤが失敗すると見 るや、ゴミのように見捨てたばかりか、元に戻れない巨大化を 施して捨て石にまでした、ミュカレの侵略円盤。そしていま、 宇宙までは手出しできないと考えながら絨毯爆撃まで仕掛けて きた。 そう思った瞬間、つい数時間前のマヤへの憎悪は、そのまま この冷酷で残酷なやり口の卑怯者たちにすっかり移っていた。 「サキ、あれが敵。あの哀れなマヤを利用してサキを操り、ク イーンズ・ビーに地上を破壊させて自分たちは高みの見物を決 め込む卑怯な侵略者。マヤのためにも、遠慮なくやっつけて!」 「うん!いっくぞおーっっ!」 キッと上を見つめるサキの凛々しい顔に、私も勇気づけられ て、サキと同じ方向を向いた。 何も怖くなんかない。サキと一緒だから。クイーンズ・ビー は無敵なんだから! *** 超スピードで飛来したクイーンズ・ビーに、ミュカレの円盤 艦隊は散開して、波状攻撃を開始した。取り巻くように包囲し ながら、しかし同士討ちを避ける絶妙なフォーメーションを組 み、四方八方からビームの雨を降らせる。 クイーンズ・ビーはスピードに任せて、その豪腕をふるって 何機もの円盤を叩き落としたが、敵は数にまかせて攻撃を強化 してくる。 一撃一撃はたいしたことはなくても、このまま集中砲火を浴 びれば機神のボディも危うい。実際、衝撃に何度もコクピット が揺れた。 「きゃあっ!」 少女たちは衝撃に悲鳴をあげながら、さらにしっかりと互い を抱きしめた。 「もうっ!いっぺんにやっつける方法はないかなっ!?」 もどかしげに咲季が呟いた。 その時、咲季は奇妙な感覚をおぼえた。 自分が口にした「いっぺんにやっつける方法」という言葉が、 クイーンズ・ビーの中枢を駆け回り、それが強力なパワーと共 に咲季の脳に戻ってきた。 機神が咲季の言葉に、言霊を与えたのだ。 「ラル、決着をつけるよ!力を貸して!この試合、ぜったい一 本勝ち!」 「サキっ!!」 そして、大きく息を吸った咲季が、機神の与えた言霊を叫ん だ。 『…アルティメット・スラムっ!!!』 クイーンズ・ビーの全身が白熱し、空間エネルギーが収縮す る。 両翼がプラズマ発光し、飛行機雲のようなエネルギーの筋が 黒い宇宙空間にまっすぐに引かれた。 そして。 機神の全身に飽和したパワーが、その両の掌に集められ、巨 大なエネルギー球が形作られた、その直後。 凄まじい勢いで球体が爆ぜた。 無数のエネルギーがクイーンズ・ビーの両手から、あたかも ビッグバンのように炸裂し、空間を埋め尽くすように光の矢が 放射状に放たれた。 高機動力を誇るミュカレの戦闘円盤も、回避する空間すらも なくては如何ともしがたい。逃げ場を失ったアリの群れを洪水 が押し流すかのように、無数の円盤艦隊は一瞬にして消滅した。 全ての邪魔が消えたその向こうに、ミュカレの超弩級円盤母 艦が見えた。だが、たとえそれがどれだけの戦闘力を持ってい ようが、どれだけの星々を征服してきたのだろうが、今のクイ ーンズ・ビーには何ほどのこともない。 命中すれば小惑星もケシ粒になるであろうほどの、大出力の 主砲攻撃が飛んでくる。しかし、クイーンズ・ビーに与えられ たラールヴァの高機動力にとって、そんなものがいくら強力で あろうと避けられないわけがない。 「サキ、ケリをつけて!」 「…おしおきよぉっ!!」 再び、クイーンズ・ビーがその言葉にパワーを与えた。 『…エターナル・ジャッジメントぉっ!!!』 クイーンズ・ビーの主翼にプラズマが走った。そこに蓄えら れたエネルギーが、巨大なカミソリの刃のように薄く、広く、 そして強力なパワーで一気に放たれた。 次の瞬間、全幅一千キロにも及ぶほどの円盤母艦が、まるで チーズケーキのように真っ二つにスライスされた。あまりの切 れ味に、すぐには変化が起きなかったほどである。しかしまも なく、切断面に断続的な爆発がおこり、そして一気に誘爆した。 多くの惑星を圧倒的な武力で滅ぼしてきた邪悪な宇宙人の母 船は、今、その悪行の全てのつけを払わされ、この辺境の惑星 の上空で木っ端微塵に葬り去られたのであった。 機神クイーンズ・ビーと、聖獣ラールヴァの、愛の力によっ て。 「まったく、愚かな連中だわ。クイーンズ・ビーを奪おうとし て、咲季ちゃんを狙うだなんて」 地球防衛軍の地下秘密基地の一室。 クイーンズ・ビーからのモニターでミュカレの艦隊が壊滅す るさまを見ていた眞希が、安堵のため息と共に言った。 ひと気のない非常司令室のソファには眞希とアリス、そして 二人に挟まれる形でマヤが、シーツにくるまった姿でうなだれ て座っていた。 「どう、わかったでしょ。あの二人に割り込もうったってぜっ たい無理なんだって。ね?」 眞希の言葉に、マヤはただうなずくばかりだった。 クイーンズ・ビーの力によって、普通の地球人の少女として 生まれ変わったマヤだったが、その心は奇妙に落ち着いていた。 『ありがとう…咲季さん』 「さて、しばらくは不自由な生活が続いちゃうかもしれないけ ど、我慢してね。いずれはまた学校に行ったりして普通に暮ら せるようにしてあげるから。それまでは、他のみんなと仲良く してね」 マヤを促すように、眞希が立ち上がった。 「じゃあ、これからみんなに紹介してあげま〜す。困ったこと があったら、遠慮なくわたしたちに何でも言ってね」 アリスもニコニコして、今にも駆け出しそうである。 「はい…。あの、咲季さんは…」 「咲季?う〜ん、たぶん、しばらくは戻らないんじゃないかな あ…」 苦笑しながら、眞希が言った。 *** 戦いが終わった、静かな宇宙。 …信じられない、あたし、いま宇宙にいる。 あたしとラル。たった二人だけで。 宇宙服も着てない、生まれたままの姿で。 ここはクイーンズ・ビーのコクピットの中だって、わかって はいる。でもあの地球儀の裏側みたいな壁は継ぎ目もなく外の 宇宙空間を映し出している。おまけに無重力で、あたしもラル もコクピットの中央に浮かんで、床にも壁にも身体が触れない。 だから、あたしには、ハダカのまんまで宇宙に浮かんでいる ようにしか感じられない。 周りは、一面の星。 そして、漆黒の暗闇。 はるか足の下には、ぽっかりと蒼く光る地球が浮かんでいる。 「まるで、夢みたい…」 あたしは、茫然と呟いた。 ラルは何も言わずに、じっとあたしを抱きしめている。 目を閉じたままのラルの顔を見て、この間まで感じていた焦 りのような苛立ちも何もかも、消えて行くような気がする。 「ね、ラル」 「何?」 目を開けたラルが、宝石のような瞳をあたしに向ける。 「…あたしね、自信がなかった。もし、怪獣たちが地球に来る 順序が違っていたら、あたしはラル以外の女の子と愛しあうよ うになっていたかもしれないって。ラルと出会って愛しあうよ うになったのは、ただの偶然だったんじゃないかって」 「サキ…」 「でもね、今こうして、二人っきりになって…。ハッキリわか ったよ。あたしたちがこの広い宇宙の中の、ちっぽけな地球と いう星の上で、何万、何億の確率で出会ったのは、ぜったいに 偶然なんかじゃないんだって。あたしがクイーンズ・ビーに乗 らされ、ラルが怪獣として地球にやってきて、今と同じように 出会ったのは、たまたまそうなったからなんかじゃないんだっ て」 「…」 「あたしたち、この宇宙ができた時からきっと、今こうして出 会って愛しあうようになる運命だったの。何があったって、ど んな障害があったって、きっとあたしたちはこうして出会って、 愛しあうようになるはずだったんだって。あたし、もう迷わな い。何があったって、あたしが愛してるのはラルだけだよ!」 「サキ…」 ラルの目が涙で潤んだ。 「…ありがとう」 ラルはそれだけしか言えなかった。でも、それでじゅうぶん。 「ラル…」 あたしはラルにそっと唇を寄せた。 「サキ…」 ラルもあたしに顔を寄せる。 あたしたちの唇が、静かに重なる。 …ああ、こんなに穏やかな気持ちでラルとキスできるなんて、 すごく久しぶり。 互いの背中に手を回して、しっかりと抱きあう。無重力の中、 無限の宇宙の中、何も身に着けてないハダカのあたしたちに、 頼りになるものはただ、互いの肌の温もりだけ。 何億光年もある宇宙の中、あたしたち二人だけ。 でも、寂しくなんかない。 あたしには、ラルが、宇宙。 「ね、クイーンズ・ビーの中でエッチするのって、初めて会っ た時以来だね。あたし、あの時すごくドキドキしてた。ラルは、 怖い顔だったよ」 あたしは思い出しながら、思わずふふっと笑った。 「サキが困った顔しながら、私にキスしたの、よくおぼえてる。 でも、とっても上手だった」 「やだぁ」 あたしたちはクスクス笑いあった。 「ね、ラル、またあの時みたいに…」 「うん、サキ、また私を愛して…」 あたしは初めて愛しあうみたいに心臓の鼓動を感じながら、 右手をラルの胸に当てて、ゆっくりとこね回した。手のひらサ イズの愛らしいおっぱいの柔らかさが気持ちいい。 ラルもうっとりしながら、あたしの胸をつかむようにして、 指で乳首を挟んでくにくにさせてきた。 「あんっ、おっぱい、気持ちいい」 「ね、サキぃ、おっぱい、くっつけて!サキの気持ち、いっぱ い感じたいの」 ラルの甘え声に、あたしはラルと互いのおっぱいを押しつけ あって、上半身をスライドさせて刺激しあった。あたしもラル も、この愛し方が大好き。でももうちょっと、胸が大きかった らな。お姉ちゃんやアリスさんが羨ましいかも。 「あ、は、はあん、サキの、『大好き』の気持ち、いっぱい感 じちゃう!」 「ああん、ラルの、『大好き』も、すごく、柔らかくってぇ!」 やがてあたしたちは、胸だけじゃなくて、互いの足を絡め合 わせると、あそこをピッタリくっつけあっていた。ラルの薄い ヘアがあたしの恥骨の上をくすぐる感触に、あたしは全身をく ねらせてラルの身体を抱きしめていた。 無重力の宇宙空間で、あたしたちは上下左右の感覚もなくな り、まるで人魚のように身体を入れ替え、自由自在に互いの身 体を求め合った。今まで味わったことのない世界のエッチに、 二人とも夢中だった。 あたしはラルの右脚の膝の裏に左手を当てて、ぐっと上に持 ち上げた。大きく開かれたラルの股間に、あたしも右脚を上げ て自分のあそこを擦りつけた。ラルとあたしのクリちゃんが直 接触れあって、全身に電気が走る。 「ああんっ!ラル、いい、いいよおっ!」 「ひっ、ひああっ、熱い、熱いのぉサキっ!!私、溶けちゃう うっ!」 互いの体温が上がっていくのがハッキリわかる。火照る身体 じゅうから、汗が吹き出してくる。その汗が、激しい身体の動 きに弾かれて、無数の玉になって無重力のコクピットに浮かび 上がる。キラキラ光る汗の水滴が、まるで星の輝きのようにあ たしたちの周りをふわふわと取り巻いた。 まるで、星屑に祝福されるように、あたしたちの愛の交歓は 続いた。 あたしたちは「貝合わせ」しながら、激しくキスを交わした。 快感にとろけるラルの表情に、あたしもますます感じてくる。 このまま永遠に、ラルと愛しあっていたい。時間が止まって しまえばいい。 あたしは半分本気でそう思いながら、さらに腰を激しく動か して、あそこの肉襞をこね合わせた。 「ラル、今まで乱暴にしちゃってごめんね!これからは、ずっ とこうしていっしょに気持ちよくなろうね!ラルっ!」 「ううん、サキがしてくれるなら、私、どんなふうにされたっ ていいっ!サキ、もっと愛して!」 「ああ、イッちゃう!あたし、イッちゃうっ!宇宙空間で、エ ッチして、イッちゃうなんてっ!信じられないぃっ!」 「私もイクぅ!サキ、いっしょにイクの!私たち、星になって、 永遠に燃えるの!」 「ラルっ、大好きぃっ!!!」 「サキぃぃっ!!!」 *** 絶頂に達した咲季とラルの愛に満たされたクイーンズ・ビー の巨体は、衛星軌道を回りながら、そのエネルギーをファイナ ル・スタナーではなく、穏やかな波動で放射していった。 そのエネルギーはまるでオーロラのように、全地球を包み込 んでいった。 全世界の人々が、空一面に広がる七色の光を見上げた。その 無上の美しさに、地球はほんの少し癒されていった。 機神の聖なる祝福が、人々の心に深く染みこんでいった。 咲季とラルは、その後、一週間のあいだ、地上には戻らなか った。 *** (言わずもがなのエピローグ…) 咲季とラルは、防衛軍地下基地の一角、一般隊員は立入禁止 の区画に二人で入っていった。 ここは、今までクイーンズ・ビーの力で人間に生まれ変わっ た怪獣少女たちが、一時的に収容されている場所だった。現在 は眞希とアリスが社会復帰のための指導をおこなっている。 今まで咲季は、彼女たちに面会しようとはしなかった。また 会えば、彼女たちへの同情で、ラルへの想いが損なわれるかも しれない、と恐れていたからだった。 だが、咲季はようやく決心できた。 ラルへの愛情に自信を持てた今、みんなとも胸を張って会え る。咲季はそう思ったのだ。 ラルもそんな咲季を後押しして、いっしょに面会に来た。か つてはツィフォンの中で共に眠っていた、いわばかつての仲間 たちに再会することにも興味があった。 咲季とラルは手をつないで、扉の前に立った。 だがノブに手をかけた咲季の手が、ぴたっと止まった。 部屋の中から漏れてくる複数の嬌声に、咲季はイヤな予感が した。 意を決してドアを開けた二人の前に展開されていたのは…。 「ああん、そんなところまで、ダメです、わたくし、またイッ ちゃうぅ…!!」 いったいどれだけの愛の洗礼を受けたのか、息も絶え絶えに ぐったりと息を切らす全裸のマヤを、休ませもせずに秘技の限 りを尽くして左右から愛撫し続ける眞希とアリス。 おまけに背後からは、カルパタルがあの繊細な手足を使って マヤの身体をこねまわしている。 その隣には、とっくに眞希たちの「授業」を受けさせられ、 おそらくはたっぷりと「補習」までさせられて、大の字でぶっ 倒れているビレトを、ザンガーが優しく抱きしめている。 反対側にはあの背徳の双子姉妹アラストルとヴェルドレが自 分たちの世界をつくってしまって、甘々な睦言を交わしあって いた。 部屋の中には7人分の女の子の甘い香りがむせかえるほどに 充満して、頭がクラッとしそうになった。 「…やっぱり」 唖然として、咲季はがっくり肩を落とした。 ラルはそんな咲季をきょとんと見つめるばかり。 突然の来訪者に、さすがに眞希とアリスは大あわてで、素っ 裸のまま起きあがった。 「あ、あの、これはね咲季、つまり…!」 「サキちゃん、これは決して遊んでいるとか、えっちしてると か…」 「…お姉ちゃんたちったら、やっぱりこうゆう役得目当てで…」 「ち、違うってば!」 全身汗だくの眞希が、開き直る。 「そ、そう!これはスキンシップよ。ずっと隔離されてストレ スがたまっちゃうから、それを解消してあげるのも私たちの立 派な仕事なの!」 「言い訳する前に、前くらい隠してよお姉ちゃん。アリスさん も」 「あ、サキ!サキが来てくれた!」 顔を上げたビレトが、またパワー全開に戻ったようにぴょこ んっと立ち上がった。そして飛びつくように咲季を抱きしめた。 「あ〜ん、サキぃ、どうして今まで来てくれなかったの?すっ ごく寂しかったんだよ〜」 その様子に、他の元・怪獣少女たちも嬉しげに咲季を取り囲 んだ。 「サキさん、私は貴女のおかげで救われました。今はとっても 楽しくしてます」 例の控えめな調子できまじめにお礼をするザンガー。 「うふふ、また気持ちいいことしましょうね〜」 正反対に相変わらずの淫蕩な流し目を投げかけるカルパタル。 「サキ、アタシたちとっても幸せなの!ありがとう!」 双子たちが抱きあったまま声をそろえる。 「ごめんねみんな、いままで会いに来なくて。…みんなに紹介 するわ、彼女があたしの恋人、ラルなの」 咲季はラルの手を引いて抱きしめた。 「わあ、ラールヴァ、人間の姿では初めまして!久しぶりだね!」 陽気にビレトがラルにも抱きつく。 そして、皆の後ろから、おずおずと近づいてきた、マヤ。 「…あの、わたくし、その…咲季さん…ラルさん…そのせつは… ご迷惑を……」 うつむくマヤの手を、ラルがとった。ハッと顔を上げるマヤ に、ラルは言った。 「これからも、よろしく」 泣きそうなマヤの手と、それを握るラルの手の上に、咲季の 手がそっと重なった。 「よ〜し、みんな、咲季とラルちゃんが来てくれた記念に、も ういっぺんスキンシップで親交を深め合いましょ〜!」 全員の歓声を、咲季だけが顔面蒼白で聞いた。 な、なにを言い出すのお姉ちゃん! 「ちょっと、冗談でしょお姉ちゃん、待って…きゃあ、みんな 止めて、ダメだったらあ!…カルパタル!スカートはずして何 してんの!いや、ビレト!胸をつかんじゃダメ!…ザンガーま で、いやああん!」 あっという間に、寄ってたかって服を脱がされて、素っ裸に されてしまった咲季のとなりに、やはり同じように全裸にされ たラルが、ちょこんと座った。 「え、えっ?」 「さ、咲季、みんなとエッチした当事者として、ちゃんとみん なの目の前で、ラルちゃんとのステディのあかしを見せなさい。 これからもみんなと良い関係であるようにねっ」 お姉ちゃんの言葉に全員の注目が集まる。 「さ、キス!キス!」 困惑顔でラルを見つめた咲季の目に入ってきたのは、とっく に目を閉じて唇を突き出すラルだった。 大きな汗を後頭部にたらしながらも、咲季はそっとラルと唇 を重ねた。 全員の祝福の拍手と歓声が沸き起こった。 「さ、時間はたっぷりあるわ。みんな、楽しむわよ〜!」 眞希の声に、全員が咲季とラルに集まってくる。 女の子たちの愛撫を全身に受けながら、咲季は悲鳴をあげた。 「もう、あたし、いったいどうなるの〜???」 完
第8話ダイジェストに続く 第6話「妖嬢媚惑に戻る
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