愛LOVEまじかるメイド/おまかせっシェイクン・ハート!
第1話「ただいま登場!元気いっぱいマジカル・メイド!!」
〜冗談(にも程がある)リリアンバージョン?〜
福沢祐巳は、ベッドの上でへたり込みながら、大きく溜息を つき、がっくりと頭を垂れた。 『また、失敗しちゃった…』 今まで、生まれついての自分のドジぶりには自分でもすっか り慣れっこではあったし、半ば諦めてもいた。それが自分の個 性であり、生齧りな専門用語で言えば「アイデンティティ」と いうものなのだ、と開き直ってもいた。 だが、リリアン女学園高等部に進学して以来、祐巳はそんな 自分の短所を心の底から呪うはめになった。 大げさに言えば、祐巳の人生はあの出会いで一変させられて しまったのだ。 まだ進学して間もないある日に目にした、あの女神にも見え た姿…。 凛と涼やかに美しく、気品に溢れ、しかしどこか孤高の陰が 深い、美貌の上級生。 小笠原祥子、という名のその上級生が「紅薔薇のつぼみ(ロ サ・キネンシス・アン・ブゥトン)」と呼ばれ、全校の憧れを 集める存在であること、「山百合会」と称される生徒会の中心 メンバーとして辣腕を振るい、全校生徒からの信望を集めてい ること、とりわけ1年生にはすでに熱狂的な「ファン」までい ること、さらには旧華族の血筋を引く財閥の家柄という生まれ ついての令嬢であること、等々の評判を、祐巳が知るまで長い ことはかからなかった。 紆余曲折の末、気が付いた時には、祐巳は生徒会室…「薔薇 の館」の「ビスケットの扉」をノックし、やったこともない生 徒会の仕事に関わるようになっていた。それも全て、あの憧れ の先輩のそば近くにいたいがためであった。そしてに、祐巳は 祥子から個人的に庇護・指導を受ける「姉妹(スール)」の関 係として認められさえもしたのだ。 だが、祥子の「姉妹」になれた祐巳は、決して幸せ気分では なかった。否、むしろそれは精神的拷問の日々にすらなったの である。 生来の粗忽者な祐巳は、冷徹なほどの完璧主義者である祥子 の逆鱗に毎日のように触れた。上品で優雅であるだけに、祥子 のその叱責の怒声は容赦なく、かえって祐巳には酷くこたえた。 何とか祥子に認められたいがための努力は空回りし、さらな る混乱を撒き散らし、それがなおさらこの憧れの存在の神経を 逆撫でする…。そんな日々が繰り返された。 『…やっぱりあたし、ダメなんだなあ…』 今日もまた、学園祭に向けての事務作業でミスを犯し、祥子 にこっぴどく叱責されてしまったのだ。祐巳はモスグリーンの クッションを両腕に抱きしめ、顔を埋める。 ごくろうさま、よくやってくれたわ、祐巳のおかげよ… そう言ってくれるお姉さまの笑顔が見たいのに。わたしって ば…。 抱きしめたクッションの感触を、憧れのお姉さまの胸懐にだ ぶらせながら、祐巳はベッドに寝転がった。今夜も自分の存在 自体をすら悔やみ、明日もまた同じように叱責される予想に押 し潰されそうになりつつ、朝を迎えることになるのだろう、と 思いながら…。 クッションに廻した自分の両手が、いつの間にか自分を抱き しめてくる憧れの女性の腕にだぶってきた。クッションを抱い ているのは自分なのに、逆に自分がその腕に抱かれているよう な錯覚にとらわれてくる。 心臓の鼓動が高ぶるのを感じた祐巳は、身体をクッションに 押しつけるうちに、いつしか下腹部をそっと擦りつけるように 動かしていた。 「お姉さま…」 祐巳は目を閉じ、愛しい「姉」が優しく自分を愛してくれる 空想の世界に心を遊ばせはじめた。そしてその右手を自分の胸 に押し当て、乳首が固くなっていくのを実感した。そして、左 手を下にずらしていき、熱く燃え上がってきたところにと触れ ようと…。 …『エンシャンテ!!』 祐巳の耳元に、突然、太陽が破裂でもしたかのような、底抜 けに陽気な声が響いた。 そして同時に、閉じていた瞼越しに、部屋の中が真っ白に光 るのが感じとれた。 室内の空気が渦を巻いた。 シャンパンの泡が吹き出したかのようにはじけた空気が音階 をなし、美しく陽気な音楽になって鳴り渡った。 反射的に身の危険を感じ、眼をギュッと閉ざしたまま悲鳴を あげ、祐巳は布団を頭からかぶった。以前にテレビで見た、真 夜中の空爆映像が頭によぎった。爆弾の音って、鈴やファンフ ァーレに聞こえるものなのかな、と思った。 混乱したまま、祐巳はしばらくそのままじっとしていたが、 外の気配に平穏が戻ったらしいことにほんの少し落ち着くと、 こわごわと布団から顔を出した。 「こんばんわっ!!貴女のお悩み、解決しますねっ!」 あっけにとられた祐巳の目の前、部屋の真ん中に立っていた のは、虹色に弾ける光の粒を振りまきながらくるりと優雅にタ ーンする美少女の姿だった。 「な、な…なに…?なになに、なんなの〜〜〜????」 動転した祐巳は、ベッドの上であたふたしながら掛け布団に 足をとられてひっくり返る。 見知らぬ少女は、1年生の祐巳よりは一つくらい年上という 程度だったが、身に着けている服装がまともではなかった。少 女の衣装はいわゆる「メイド服」という、本来ならば家事に従 事する女性のためのシックなドレスである。もっとも16歳程 度の女の子がこの日本でこんな服装を着るのは、ウェイトレス か、さもなければコスプレであろうから、それ自体すでにかな り突拍子もない。 ところがそれに輪をかけて、少女のメイド服というのが普通 のデザインではなかった。黒の生地がベースではあるものの、 その表面には細かな金銀のラメが編み込まれてキラキラ光って いる。全体が短めにカットされ、本来はロングのスカートであ るべきなのが、太腿も露わな超ミニの裾からは何重ものレース のガーメントが溢れるほどに丸見えになっている。膝上まで穿 いた黒のストッキングを止めるガーターベルトが、ちょっと歩 いたり屈んだりしただけで真っ白いレースと対照的に垣間見え る。 メイドと言うよりは、お色気過剰の踊り子である。 まだ成熟していない両脚はやや細めだが、年齢の割には長い 両脚はむしろ健康的と言ったほうがいい。 肩までしかない袖口はぷっくりと膨らみ、そこからすらりと 延びた両腕にも、ストッキングと同じく黒いグローブがはまっ ている。その右手に持った銀色の柄に虹色の羽毛をなびかせた 「ハタキ」が、かろうじてこの少女がメイドであるという証し になっている。柄の尻にはルビーのように真っ赤な鉱石が嵌っ ていて、鈍い光を発していた。 大きく切れ込みの入った胸元からは、とても15、6の小娘 とは思えない巨乳がはち切れそうで、胸の谷間が肌色から暗黒 への階層的なグラデーションを映している。同性の祐巳ですら、 その真空の深淵に引きずり込まれそうなほどのセックスアピー ル。 そして、どう染めたのやら、それとも奇跡的な生まれつきな のか、玉虫のように銀緑色に輝くロングヘアーが波のように流 れ、光の加減で補色であるピンク色をすら帯びている。その額 の上には純白のレースがはみ出たカチューシャが、可憐なぶん だけ余計に不釣り合いなセクシュアリティを強調していた。 いわゆる「フレンチメイド」スタイルなどと呼ばれる、アメ リカの男性雑誌のグラビアによく載っているカバーガールのよ うな、しかし同時にまだティーンエイジのあどけなさと純真さ も兼ね備えた、そんな不思議な美少女だった。 「ウイ、はじめまして。私、魔法の国からやって来た、魔法の メイド美少女、シェイクン・ハートだよっ。貴女のハートも、 ドッキドキぃっ!」 屈託のない笑顔でメイドファッションの闖入者が自己紹介し た。 まっ、魔法少女?! テレビアニメでおなじみの存在も、現実に目の前に登場され ては、存在感とのギャップが大きすぎる。祐巳も驚くと言うよ り、むしろ呆れた。 「そして、ワイがお目付役のフォスティや」 いきなり脇から聞こえた声に振り向いた祐巳は、今度は本気 になって驚愕した。そこにいたのは、宙にふわふわと浮かぶま ん丸く黄色い「猫」だったのだ。 「なに、なんなの、猫、猫が、猫がまん丸で浮いて、しゃべっ てる〜〜〜〜!!!」 腰を抜かして、祐巳がまたベッドの上でひっくり返る。 「なんやのん、あんまり見かけでバカにしたらアカンで。伊達 や酔狂の虎縞ちゃうぞ。六甲おろしをアホにしたら、奥歯ガタ ガタゆわせて、道頓堀へ蹴込んだるぞっ!なんのこっちゃい」 馬鹿にしたような口調でノリツッコミをかまして、宙に浮か ぶまん丸デブ猫フォスティは、虎縞模様の入った黄色い毛皮を ビカビカと信号のように光らせた。 「ほらフォスティ、あんまり驚かせたらだめよ。誰もが阪神フ ァンなわけじゃないんだからね」 丸猫をたしなめる魔法少女だが、祐巳が何に驚愕しているの かの認識がズレていた。 「い、いったい、なんなの?出て行ってくださいっ!出て…、 け、警察呼びますっ、警察っ!」 大混乱の祐巳は、泣き叫ばんばかりに手にしたクッションを 振り回した。 だがそんな祐巳のあわてぶりを、「シェイクン・ハート」と 名乗った少女は歯牙にもかけていないようだった。 「ノンノンノン、恋に悩む乙女ともあろう者が、そんなにみっ ともなく取り乱したりなんかしちゃダメダメ。私たちは、あな たの悩みをスッキリクッキリ解決しちゃうためにやって来たん ですから〜」 そう言いながら、はたきをクルクル回す魔法少女。 「な、悩みって、いったいなんのことをい…」 「うふふ、おとぼけはノンノン」 そう言ってシェイクン・ハートは、はたきの柄で祐巳が抱い ているぬいぐるみを指した。 「愛しいお姉さまに寄せる想いもかなわず、自己嫌悪に陥りな がら、心の中で甘い悦楽を夢見ることに逃避しようとして、独 り寝の淋しさを紛らわそうとしていたくせに」 それを聞いて祐巳は顔を真っ赤にして、あわててぬいぐるみ を放り出した。だがそのせいで、祐巳の身体からパジャマ越し に汗に混じった甘い少女の香りがほんのりと立ちのぼってきて しまったのが、祐巳自身にもわかってしまって、ますます慌て る羽目になった。 「いいのいいの、そんなの普通の感情なんだから」 ニッコリ笑う魔法少女。 「そやそや、愛情っちゅうのは本気であるだけ歯止めがきかな くなるもんや。ワイもアホやアホやと思いながら、道頓堀に飛 び込みたい気持ちはわからんでもないからな」 「浮いてるから飛び込めないんでしょ」 「と、とにかく、あなたたちはいったい、何をするつもりなん ですか?!!」 慌てながらも、いま自分の前にただならぬ連中が押しかけて いることを何とか理解した祐巳が、きいっと顔をこわばらせた。 「メイドのお仕事は、ご主人様のお役に立つこと。行きずりと はいえ、困っている女の子を見かけたら助けたいというのは当 然よ」 そう言ってシェイクン・ハートは、みごとに発育して襟から はみ出そうな乳房を震わせながら胸を張った。 「ええかっこゆうて、魔法女王候補生への査定のための定期課 題やんけ」 横でフォスティが入れたツッコミにガクンとなった魔法少女 が、照れ笑いしながらデブ猫の全身をその口ごと雑巾絞りする と、くぐもった悲鳴があがる。 「あ、あはは、は。とにかく、あなたの悩みは、憧れのお姉さ まの心がつかめなくって辛いってことなのよね」 「ど、どうしてそんなことを知って…!」 再び慌てた祐巳が否定しようとするのを遮って、魔法少女が 続ける。 「それってきっと、『自信』の無さのせいだと思うの。お姉さ まのあまりの完璧ぶりに比べて、自分に自信が持てなくなっち ゃって、それでさらに萎縮しちゃってますますうまくいかない。 よくあることよね」 「だって…実際にわたし、ドジだし…。お姉さまをいつも怒ら せてばかりで…」 ついうかうかと、祐巳は魔法少女の言葉に反応してしまった。 「ダメダメダメよ〜、マイナス思考は、海の彼方に飛んでいけ っ!」 そう言ってシェイクン・ハートは顔を祐巳の前に寄せた。 「そんな気持ちじゃ、いつまでたってもあなたの気持ちは届か ないわ。それに、その自信の無さが、あなたの瞳を曇らせ、真 実を見えなくさせているのよ」 「真実?」 目をパチクリさせて、祐巳が顔を上げた。 起き直ったシェイクン・ハートは、口元に意味ありげな笑い をニヤリと浮かべていた。 「そう、私だけが知っている、そして今のあなたにはわからな い真実」 祐巳の鼻先まで顔を寄せた魔法少女が、その目に妖艶な揺ら ぎを浮かべた。 「自信を取り戻すおまじないをかけてあげる」 そう言って、魔法少女が祐巳の口元にふっと息を吹きかけた。 慌てた祐巳は、しかしその少女の吐息の甘さに頭がぼうっと してしまった。そして肩の力が抜けてしまった祐巳のパジャマ の襟からのぞく白い首筋に、シェイクン・ハートは真っ赤な唇 を寄せ、ゆっくりと舌を這わせた。 なま暖かく濡れた舌が首筋をぬめる感触に、まるで電気のよ うな衝撃が祐巳の全身を貫いた。ぞわぞわする、鳥肌が立つよ うな、しかし不快ではなくむしろ身体の奥が絞られるような快 感が、祐巳を一瞬で支配した。 警戒心と猜疑心に満ちていた祐巳は、とろんとした目になっ て茫然とベッドにへたり込んだ。 シェイクン・ハートは、祐巳の背後に回り、後ろから抱きか かえた。そして、その細くしなやかな両手の指十本をふんだん に駆使し、まだ幼さの残る祐巳の全身を撫でさすりだした。 「ああん…」 一度は身をよじって逃れようという動きを見せた祐巳だった が、魔法少女の両腕は絡まる蔦のように少女を離さない。 その手は祐巳の胴体を後ろから抱き、パジャマの上からゆっ くり、ゆっくりと撫でていく。 「どう、祐巳ちゃん?こうやって、憧れのお姉さまに優しく触 ってほしかったんでしょう?」 背後から祐巳の耳元で囁きかけるメイド少女の言葉が、生々 しい息づかいとともに響く。 「そんな、こと…ああっ!」 耳たぶを軽く噛まれたショックに、少女の全身がビクンと痙 攣した。 「どう?こうして後ろから抱きしめられると…」 そう言いながら魔法少女は身体を祐巳の背中に密着させる。 「想像してみて…憧れの祥子お姉さまがこうして…」 「ひっ!」 豊満な双球を背中に押しつけられた祐巳が、その柔らかな感 触と、そして祥子の姿を脳裏にだぶらせて、思わず悲鳴をあげ た。 「ああん、祥子お姉さまあっ!!わたしぃ…!」 「そうでしょ。そして、愛しいお姉さまに甘く愛されるエッチ な妄想に、毎晩毎晩、こうして…」 パジャマの上から撫でさすっていた右手を、魔法少女はじわ りじわりと祐巳のパジャマの袷をくぐり、祐巳の胸元に差し入 れていく。そして、まだ青い果実のような乳房を揉みしだいた。 「あ、ああう、くううっ!」 頬を上気させる祐巳が身をよじる。まだ固さの残る胸の果実 が、シクシクと疼いた。 そしてシェイクン・ハートは、もう片方の左手を、祐巳のパ ジャマのズボンの下に差し入れようとする…。 「あっ!だめえ、それ以上は!!それはお姉さまに…!」 はっと我に返った祐巳が、両手でズボンを押さえて拒む。 「ああら、やっぱり愛しのお姉さまが一番いいのね」 ここはすんなり手を引くメイド少女。 「でも、あちらは祐巳ちゃんをどう想っているのかしら…?」 紅潮した祐巳の顔が、こわばった。 「お姉さまは…そんな…わたしなんか…」 「どうして?」 「だって…祥子お姉さまは、わたしのことなんかただの役立た ずの粗忽者って思ってらっしゃるし…」 「やっぱり、見えてないのね」 「…え?」 「真実が、よ」 言い切ったシェイクン・ハートが、祐巳から身を離してベッ ドから立ち上がった。 「じゃ、見せてあげる」 「うむ、ここで魔法やな。この嬢ちゃんにしっかり見せてやり や!」 ようやく雑巾絞りがとけたフォスティが、再び空気が入って、 丸くなって浮かび上がりながら言った。 魔法少女が、西洋風のハタキをサッと掲げた。日本のものに 比べて柄の短い、ハンドモップのような形のハタキであるが、 その羽根は何の素材だかはわからないほど輝いている。 その輝きが一瞬まばゆく光った。 「エンシャンテ!」 魔法少女が、自分一人にただ一つだけ許された魔法の言霊を 叫んだ。 異次元に貯えられた宇宙の魔力の海から、その言葉がパスワ ードになって、魔力の依代として働くデヴァイスである、シェ イクン・ハートのハタキの中にエネルギーが流れ込み、充填さ れていく。 輝きを増したハタキを、シェイクン・ハートはおもむろに掲 げ、不思議な動作とともに宙に円を描いた。 その輝きを、祐巳はまるで夢を見ているとしか思えないとい った顔で、見つめるしかなかった。 シェイクン・ハートがハタキの軌跡を小さくして、光の円を ゆっくりと縮めていった。そして、直径が1メートルほどの鏡 のような平たい円形の光になったところで、魔法少女はその表 面をまるで埃を払うようにハタキで撫でた。 光の円盤は、光の粒を弾かせながら、赤と青に輝く額縁をま とって、やがて本当の鏡のようになって宙に浮かんだ。 「さあ、よく見てご覧なさい、祐巳ちゃん」 宙に浮かぶ鏡は最初こそ覗き込んだ祐巳の顔と後ろの壁を映 していた。だがやがて、ぼんやりと緑色の光が滲むと、そこに は祐巳の部屋とは違う、別の光景が浮かび上がってきた。 祐巳の部屋とは比べ物にならないほどの豪華な調度品が並ぶ 広い部屋。 オレンジ色のディムライトが点いた部屋の奥には、立派なベ ッドがレースのカーテン越しに鎮座している。見るからに裕福 な家の一室であることがわかる。 まるでテレビカメラのように鏡の映像がズームアップし、ベ ッドに横たわった人の姿が映し出された瞬間、…その姿に、祐 巳は我が目を疑った。 「お、お姉さまっ!」 ベッドの上にいたのは、憧れのお姉さま、祥子その人に他な らなかった。 しかも…ただの寝姿ではない。 『あ…あん……あうっ……んんん…んっ……』 鏡を通じて音まで伝わってくる。 祥子は、全裸だった。 いつも一分の隙もなく着こなしている制服姿しか見たことが なかった祐巳にとって、それはあり得べからざる姿だった。憧 れの「お姉さま」はいつだって完璧な姿でいるはずと思いこん でいた少女には、それは想像することすら許されない姿だった。 だが、祐巳の目の前には、全裸になって白い裸身に滑らかな 黒髪をまとわせた祥子が、あられもない喘ぎ声をあげながら、 全身に珠のような汗を滴らせ、頬を紅潮させ、我を忘れてマス ターベーションに没入している姿が展開されている。右手は、 形の良い豊満な乳房をこねくり、桃色の蕾は固く芽吹いていた。 そして左手は、滑らかな両脚の間に挟みこむようにして、秘所 を絶え間なく刺激していた。 「おおっとぉ、お盛んやなあ。ま、謹厳実直を絵に描いたよう なお嬢さまかて、人並みの性欲はあるに決まってるってこっち ゃな」 横から覗き込んだフォスティの、半分揶揄した響きの言葉に、 祐巳はハッと我に返った。 「…こ、こんなの嘘よ!お姉さまがこんなことするはずないわ! あ、あはは、そうよ、これってSFXってやつでしょ、アイコ ラとか言うんでしょ!?ひどいわ、お姉さまをこんな風に侮辱 するなんて、こんなの…」 「たった今起こってる、真実よ」 いま見たことをムキになって否定しようと言いつのる祐巳に、 シェイクン・ハートは一言、言った。 口を開けたまま何も言えなくなった祐巳の頬に手を当てて、 セクシーなメイドはゆっくりと少女の顔を再び魔法の鏡に向け る。 「ほら、見てご覧なさい。なにをムキになっているの?とって も綺麗じゃないの、あなたの憧れのお姉さまは、こんなに綺麗 で、こんなに敏感な身体をしているのよ…」 シェイクン・ハートが囁く甘い声に、祐巳は思わず知らず、 再び鏡の中を凝視しながら、ごくりと息を呑んでいた。喉が乾 くのが、ひどく気になっていた。 祥子はますます身悶えし、激しく股間をまさぐって、真っ白 なシーツのしわもますます乱れてくる。 凄まじい罪悪感が背中にのしかかって来るのを自覚しながら も、祐巳は、愛しい「姉」のあられもない秘め事から目が離せ なくなっていた。 祐巳が愕然としたのは、その時だった。 『あ、ああん…。ゆ…ゆみ…祐巳ぃっ!あ、はあん、好きよ、 祐巳…いいっ!!!』 祐巳が、わなわな震えた。 お姉さまが、…あたしの名前を?まさか、そんな、そんな、 うそ…。 「ほら、よくご覧なさい。今のお姉さまの言葉は、嘘じゃな いわよ」 魔法メイドがそっと促した。 ああ、なぜ気づかなかったんだろう、と祐巳は思った。 のたうち回る祥子の頭のそばに、ぽつんと小さなフォトス タンドが転がっていた。 その中に入っていたのは、…見忘れるはずもない。新体制で 発足したばかりの生徒会を撮影に来た写真部の部長が、まだ自 分のぼろが出ていない頃ゆえ祥子も快く承知してくれて、特別 にお願いして撮ってもらった、唯一の二人のツーショット写真。 快感を貪る祥子が、ふと濁った目を開き、フォトスタンドに 気づいた。そして股間をこね回しながら、右手で写真立てを手 にとると、そこに映っている頼りにならないドジばかりの下級 生を、潤んだ瞳で恍惚と見つめた。 『ああん、祐巳、祐巳ぃ、なんてかわいいの…あああっ、祐巳 いっ!!』 激しい吐息にガラスが曇ったフォトスタンドに、まるで少女 の依代かのように顔を寄せると、祥子は、いつもは厳しく叱責 し、甘い顔一つ見せたことのない「妹」の絵姿に向かって、激 しく貪るように口づけした。 まるで自分が直接キスされているかのように感じた祐巳が、 はっと息を呑んだ。 気がついてみれば、室内にある祥子の机といいキャビネット といいコンソールといい暖炉といい…、ほぼあらゆる家具調度 品の上には、全てに所狭しと祐巳のスナップ写真が飾られてい る。 しかも壁には、いつの間に撮影されたのか、おすまし顔の祐 巳のポートレートが大きく引き伸ばされて、まるでアイドルの ポスターのように、あろうことか立派な額装までされて、掲げ られているではないか。 茫然としつつも、祐巳の心の中に光が射してきたかのような 気分が広がっていった。 …嫌われていたんじゃなかったんだ。 祐巳の心の中に、ひとかけらの安堵感と、そして、それを踏 み台にして沸き起こる昂揚感がふくらんでいった。 「さて、そろそろかな?」 シェイクン・ハートがベッドから立ち上がり、再びきりりと ポーズをとった。 自分のことを想いながら自慰に耽っている憧れの「お姉さま」 の姿に目を奪われつつも、祐巳は魔法少女を訝しく見上げた。 「…それっ!」 鏡を創り出したあの魔法のハタキを、再び優雅に宙を走らせ ると、空間に銀色の軌跡が浮かんだ。まるで新体操のリボンの ように軌跡は線を描き、消えないまま宙に浮いた。 最後にハタキの動きを一瞬止めると、魔法少女はその先端を くるりと一巻きした。まるでカウボーイの投げ縄のような形に なった光の帯を、シェイクン・ハートは印度の蛇遣いよろしく ハタキで操る。 まるで意志を持っているかのような銀光の帯は、芸をする犬 が鼻で匂いを嗅ぐようにメイドのハタキの動きに合わせて動い た。 「エンシャンテ!」 魔法少女が再びあの呪文を唱えた瞬間、光の帯は突然、一気 に鏡の中に突っ込んでいった。まさに猟師の合図で獲物に飛び かかる猟犬さながら、銀の光はスルスルと鏡の中にと吸い込ま れた。 何が起こったのが理解できないまま、虚をつかれた祐巳。 得意げに鼻高々のシェイクン・ハート。 ニヤニヤとチェシャ猫笑いのフォスティ。 そして。 『きゃあああああああっ!!』 絹を引き裂くような甲高い悲鳴が、鏡の中から響き渡った。 悲鳴をあげるなんて聞いたことが無くったって、それが祥子の 声だということは、祐巳もすぐに気がついた。異変に慌てる祐 巳が見上げた先の魔法少女は、まるで大物を釣り上げる太公望 のように、えいっと一声、気合いをかけてハタキを振り上げた。 その瞬間、あの魔法の鏡の表面がぐわっと膨張した、と見る や、ポンッ…という破裂音と、色とりどりの光を発しながら爆 発したっ! 「ひええっ!」 思わず叫んで目を伏せた祐巳が、再び目を開いた時、そこに は信じられないものが出現していた。 鏡の中、自室の中で自慰に耽っていた祥子が、全裸のままで、 祐巳のベッドの上に転がっていたのだ。 …しかも、あろうことか、あの銀色の帯で全身を拘束された 緊縛姿で! 「やったっ、成功よ!」 のんきな声でシェイクン・ハートが得意そうに指を鳴らした。 「うむ、自分の魔力消費量をギリギリまで抑制して、対象のオ ルガズムをそのまま移動エネルギーに転換したんやな、腕を上 げたやないけ、シェイクン・ハート」 感心するフォスティと、ほめられて有頂天の魔法メイド少女 をよそに、祐巳はもとより、祥子も大パニックに陥っていた。 「お姉さま!」 「??!??!!!???!!!」 自分の部屋に閉じこもって、誰にも知られず秘密の秘め事に 没頭し、絶頂に達した…と思った瞬間、いつもより強烈な浮遊 感を味わった祥子は、異様な感覚に恐怖を感じて悲鳴をあげた。 そして、自分の部屋の光景ががらりと異なっていることに、最 初は虚をつかれて茫然としていた。 が、目の前にわなわな震えて目を見開いてこちらを見ている のが、たったいま妄想の対象にしていた後輩の少女だと認識し たとたん、祥子の判断力は恢復し、そして悲痛なほどの羞恥心 が一瞬で全身を灼いた。 「ゆ、祐巳っ!」 「お姉さまっ!!」 「あ、あなた、これはいったい…きゃあああっ!!!」 状況を把握しきれない祥子は、無理もないことだが、自分の 部屋に愚かな「妹」が闖入してきたのだと錯覚し、いつものよ うに厳しく叱責しようと声を荒げようとした。だが、次の瞬間 に自分の状態を確かめようとした令嬢は、さらに絶望の悲鳴を あげることになった。 自慰の直後の全裸姿を人前で晒したのは、もちろん謹厳な先 輩としてこの上ない恥辱だった。さらにその上、自分が淫らな ポルノグラフィーよろしく全身を縄で縛られ、身動き一つとれ なくなっていることに気がつくと、祥子は身の置き所もなく叫 ぶしかなかった。 両手は後ろ手にねじられ、手首を互いにがっちり固定されて いて、身体を隠すこともできない。そこから延びた繩はさらに 前に回って、両の乳房を絞りあげるようにして巻かれ、胸の谷 間で数回ねじられていた。さらに胸の谷間の結び目から繩は下 半身に延びて、祥子のすらりとした両脚の膝にくくりつけられ、 持ち上げるようにピンと張っていた。 そのため、祥子は眼前の祐巳に向かって、おしめを替えられ る赤ん坊のように股間を露出する姿勢になっていたのだ。 「いやあっ!いやっ!見ないで、見ないでえっ!」 気丈な令嬢は自分の全てがむきだしにされてしまっているこ とに、激しくかぶりを振った。 「お姉さま、これは、あの、ごめんなさいっ!!」 今さら謝っても間抜けな響きになるだけだとわかっていなが ら、祐巳はそう言わずにはいられなかった。おろおろしつつ、 慌てて「姉」の拘束を解こうと身を起こした祐巳の肩に、シェ イクン・ハートが手をかける。 「なにやってんのよ祐巳ちゃん、チャンスじゃない」 ニッコリ笑う魔法少女。 「嫌われてると思いこんでたお姉さまが、実は自分をオカズに して一人エッチしちゃうくらいに祐巳ちゃんのことを想ってく れてたことがわかったんだもの。祐巳ちゃんもお姉さまに可愛 がられるのを夢見てエッチなことを考えてたんでしょ。ここは きちんと自分の気持ちを伝えちゃいなさいってば!」 冷静に考えればこの言いぐさがとんでもないということは明 らかである。この魔法少女は、祐巳のプライベートに無断侵入 して強制猥褻を働いたうえ、何も知らない祥子を誘拐、拉致監 禁しているのだ。 だが、大混乱に陥っていた祐巳には、その冷静さがすでに欠 け落ちていた。赤くなったり青くなったり、泣き笑いとも何と もつかない表情に顔を歪め、目尻を痙攣させ、口元を引きつら せ…。 頭の中が飽和状態になって、真っ白になって、何も考えられ なくなって顔を上げた祐巳の目の網膜に、愛しい祥子のあられ もない姿が鮮明に焼き付いた。 腹を空かせた理性無き猛獣の前に、剥き身のエサが食べてく ださいとばかりに置かれたようなものである。 その刹那、引っ込み思案で勇気も自信も無くしていた哀れな 「妹」は、本能に突き動かされたかのように、むしゃぶりつい ていた。持ち上げられた両脚ごと抱きかかえるようにして、祐 巳は全裸の「姉」の上に飛び込んだ。 「ゆ、祐巳、やめなさいっ!こ、こんなこと、こんな事をして、 ただですむと思っているのっ!!」 「お姉さま、お姉さまっ、おねえさまああっ!」 祐巳はもう何も耳に入らず、美しい憧れの上級生にのしかか って、上から口づけしようと顔を寄せるのだが、あいにく持ち 上げられた両脚のふくらはぎが両肩に当たって邪魔をして、ど うしても祥子の顔まで届かない。 必死になって首を伸ばす祐巳に、祥子は本気で腹を立て、両 脚をばたつかせる。それが偶然、祐巳の顔面に向かってもろに カカト落としが命中してしまった。 一瞬、目を白黒させてクラクラする祐巳。 「まあ、乱暴なお姉さまねえ」 そう言ったシェイクン・ハートが、再びハタキをクイっと上 に向けた。その途端、祥子の両脚を持ち上げていた帯が光ると、 胸の谷間からかなりの余裕を持って伸びていたのが、祥子の首 の後ろに回って伸びるようになり、しかもその長さが一気に短 くなった。 太股が上半身にがっしりと密着する形で抱え上げられるよう になった結果、祥子は秘所だけではなく、さらに後ろの肛門ま で露出させられた。しかも今度は太股が固定されてしまったの で、脚を閉じることすらできない。 「いやあああ、助けてええ…!」 ハイソサエティの矜持も、今や何の役にも立たず、祥子の声 が涙声になりかかったところに、 「ふいいい…」 カカト落としを顔面にくらって意識が飛びかけた祐巳が、い きなり前のめりに突っ伏した。その祐巳の顔が、ちょうど抱え 上げられた祥子の股間にずんっとめり込んだ。祐巳の低い鼻先 が、ちょうど祥子のクリトリスに命中し、全身に電気のような 痺れが走った。 「いやああっ、祐巳、だめ、離れなさいっ!」 お尻を振るようにして下級生を退けようとした祥子だったが、 もうすでに意識を取り戻した祐巳が、濁った目を開けながら、 愛しい「姉」の秘所にしゃぶりつく。 「お姉さまの、おそそ。とっても綺麗で…おいしいですぅ…」 「いやあああん、祐巳、やめてえ、お願い、止めてえええっっ…」 今まで聞いたこともないお姉さまの哀願の声に、祐巳は酔い しれたように祥子の美肉をついばんだ。 つい今しがたまで当の下級生その人を想いながら孤独な悦楽 に遊んでいた祥子の秘所は、すでにしっとりと濡れて、赤いぬ めりを鮮やかにきらめかせていた。その敏感な柔肉に、祐巳の 小さな舌が猫のようにざらざらと舐めあげていくと、祥子の延 髄に痺れるような電流が走り、脳天を貫いた。 「ひああっ!っ!!」 息を詰まらせてのけぞった祥子の、縄を張られた豊かな乳房 がぷるんと揺れた。 すでに祥子は、矜持をズタズタにされた屈辱、性にのたうつ 自分を晒された羞恥、玩弄されていることへの憤り、そして、 愛しい少女に嗜虐的に奉仕されているというマゾヒスティック な快感…さまざまなものによって引き裂かれていた。だが、す ぐにその混乱は全身を満たす悦楽の波に押し流されていく。 「お姉さま、お姉さまあ…!好きです、お姉さまっ!!」 「ああ、祐巳、祐巳ぃ、祐巳いいっ!」 ビクンっ、と祥子の全身が跳ね、縛めの繩がひときわ少女の 裸身に食いこんだ。昂奮と緊縛の二つながらで全身を真っ赤に 腫れあがらせた令嬢の秘所から、濃密な愛蜜が溢れだした。 全身を浸した悦楽がゆっくりと引き潮になっていくまで、祥 子はその残り火を味わいながら、虚脱してベッドに身を沈めた。 脱力して全開したままの秘所からこぼれ落ちる蜜を、祐巳は夢 中になって舐め続ける。 その泉すらようやく湧出がおさまったころ、祐巳の小さな室 内には静寂のみが支配した。 いつの間にか、この事態の張本人であるはずの魔法メイドと そのお付きは、この部屋のどこにも姿がなかった。 「祐巳!」 いきなり、聞き慣れた怒声が祐巳の耳を貫いた。 「はあいっ!!」 夢うつつだった祐巳が、思わず反射的にいつもの生徒会での 調子で返事をした。 「早くほどきなさいっ!早く!」 頬をまだ紅潮させたまま、祥子が凛として命じる。 「は、はい!すみません、すみません〜!!」 慌てて祐巳が祥子を緊縛する繩をほどく。普通の繩と違って、 魔法の光の帯は、祐巳の不器用な小さな手でもたやすく解けた。 首のところを弛めて祥子の両脚が下ろされると、そのまま上半 身を起こして後ろ手に縛られた両手首をほどいた。 何度も身をこわばらせて身悶えしたせいで、祥子の両手首に は真っ赤な繩の跡がクッキリ残っている。 身を起こして膝を抱えるようにベッドの上で座り直し、手首 をさする祥子は、たった今自分を絶頂に導いた「妹」に一瞥も くれようとはしない。 痛々しい手首の跡に、そして自分をあえて無視する祥子に、 祐巳は身の置き所もなく俯くしかなかった。 「何をしてるの?」 目をそらしたまま、祥子が言った。 「え?え、え?」 「私だけ…裸にさせておくつもりなの?」 「ああ、ご、ごめんなさいっ、すぐに…」 慌ててブランケットを棚から引っ張り出して、「姉」に差し かけようとした祐巳に、また叱声が飛んだ。 「そうじゃなくてっ!!」 「は?」 「…あなたも」 「祥子お姉さま?」 「私一人に恥をかかせっぱなしにするのっ!?あなたもお脱ぎ なさいって言ってるのっ!」 横を向いた頬が赤い。 「ええっ、あ、はいっ!」 耳にした言葉が信じられないまま、祐巳は大あわてでパジャ マを脱ぎ、下着を脱いで、「姉」と同じく生まれたままの姿に なった。が、その途端、自分の姿に我に返った祐巳は、へなへ なとベッドに腰を落としてしまった。 胸を隠すように両手を廻し、かたかたと震える祐巳に、祥子 は相変わらず横を向いたままうなだれている。 気まずい、時間が過ぎた。 「…なんて、はしたないの?」 出し抜けに祥子が言い放った。 「お姉さま…」 「常識知らずで、恥知らずで、ふしだらだわっ」 「!…ごめんなさいっ、おねえ…」 「こんな、こんな淫らで、自制心の欠片もない…」 激しい痛罵に、祐巳は涙を滲ませていた。 「…」 その時…キッと振り向いた祥子の美しい顔が、やはり涙を目 に溜めながら祐巳を見つめた。 「…キスより先に、こんな事をするなんて!」 ハッと顔をあげた祐巳の目の前に、祥子の顔が近づいていた。 そのまま祥子は、小柄な下級生に唇を重ねてきた。 何が起こったのか咄嗟には理解できなかった。 「…自分が情けないわ!こんなはしたない子を好きになってし まったなんて」 容赦ない叱責の言葉は、そのまま想いの丈を伝える告白であ ることを、祐巳は甘い唇の感触とともに反芻していた。 「は、はい、ごめんなさい、お姉さま…」 いつもと同じ謝罪の言葉にも、あの苦い思いは混じっていな い。むしろ、喜びと感謝に満ちていた。 「…いいえ、許しませんわ」 「お姉さま?」 「あんなにみっともない、無礼なことをしたんですもの。その 報いはきちんと受けさせるわよっ」 いつもの、「妹を指導する姉」の口調でそう言った祥子が、 いきなり祐巳に斜め後ろから飛びかかった。 「きゃっ!!」 虚をつかれた祐巳が上から押さえ込まれるように、ベッドに うつぶせに倒れた。 のしかかった祥子の素肌が、なかんずくあの豊満な両の乳房 が、背中に触れてくる感触が、今でも信じられないほどに心地 よかった。 だがその夢心地もつかの間、部屋の中じゅうに澄んだ響きの 破裂音が響き渡ったと同時に、祐巳のお尻に鈍痛が滲みた。 背後から、祥子が祐巳のお尻をひっぱたいたのである。 「い、いや、おねえさ…」 突然の変転に慌てた祐巳に、有無を言わせない声が飛ぶ。 「祐巳っ、もっとお尻をお上げなさいっ!!」 その言葉に逆らえず、祐巳は夢遊病者のように両手両足をつ っぱって、四つんばいになった。何も身に着けていない身体を 隅々まで祥子に見られることを、改めて意識させられる。 そこに、祐巳の両太股を抱きかかえるように左腕で固定して しまうと、突き出された祐巳のお尻に、祥子の右手が再び飛ん だ。 パシィッ!!! スナップを利かせた祥子の一撃で、気持ちががいいほどに乾 いた音が響き渡ったとほぼ同時に、祐巳の白い臀部にクッキリ と紅葉の手形が浮かび上がった。 「いやあっ!ひどい、お姉さま、許して、ゆるしてえっ!」 だが祐巳の哀願に何も言わず、祥子は何度も平手を加え続け る。ピンクに染まっていく下級生のお尻に魅入られたかのよう に、令嬢は厳しいお仕置きを止めない。 「ひいっ、いや、いやいやあっ!お姉さま、助けてえっ!」 ついに涙を流し出した祐巳の声に、ようやく祥子の平手打ち が止んだ。 四つんばいになっていた手足から力が抜け、ぐったりと倒れ 伏したまま啜り泣く祐巳の後ろから、祥子がすり寄った。 「祐巳…」 息を荒くしてうっとりと囁いた「姉」が、桃色に染まった 「妹」の双球に顔を寄せるや、小さな舌を延ばしてそっと舐め あげた。 「んんっ!?」 痛みに火照ったお尻に触れたヒンヤリした感触に喘いだ祐巳 は、次にその感触がお尻の間に向かって行くのを感じて、淫靡 な予感にわなないた。 「ああっ、お姉さまっ、そこは、そこはダメですっ!」 だが祥子は、きゅっと力の入った二つの肉鞠を両手で押し開 くと、そこを鼻先でかき分けるようにして顔を埋めてきた。そ して祐巳の秘所の下部と、蟻の戸渡りから菊門にかけて、舌先 でぐりぐりと刺激するように舐め回した。 「ひあああんっ、お姉さまが、そんなところをっ!!あああん っ!」 憧れのお姉さまに、誰にも見せたこともない場所を舐められ ることが、祐巳の理性を再び木っ端微塵にする。祐巳は思わず 手足に力を入れて、再び四つんばいになり、さらに両膝をピン と伸ばした。お尻を高く突き出してベッドの上で立位体前屈の ような体勢になった祐巳の股間を、ベッドに座った姿勢の祥子 は顔を上に向けるようにして、さらに激しく舐めていく。ラヴ ィアをじんわりと濡らす愛液が刺激に合わせて滲みだし、祥子 の舌から唇に溢れて濡らしていく。 祐巳の身体を支える両手両脚がぶるぶる震えるのは、無理な 姿勢で痺れたせいだけではなく、全身を駆け抜ける快感に四肢 が脱力したからでもあった。 「ああ、お姉さま、わたし、イッちゃいますぅっ!お願い、イ カせてくださいぃっ!!」 耐えきれなくなった祐巳が、まだ蕾のように小振りな、しか し屈伸姿勢で下向きだったために重力に引かれて大きめにしだ れた乳房をふるふると震わせながら、全てをゆだねたお姉さま にオルガズムの許可を懇願した。 「いいわよ、おイキなさいっ!祐巳っ!!」 「あああああんんっ、おねえさまあっ!」 絶頂に達した祐巳の秘奥からどっと蜜が溢れ、飛沫となって 祥子の顔を濡らした。そして同時に、力尽きた祐巳がくたくた とベッドに崩れ落ちた。 顔じゅうに飛び散った可愛い「妹」の愛液を、祥子は指先で 丁寧に拭い、その指をきれいに舐めとった。この平凡で冴えな い後輩少女の濃密な味と香りは、しかし、どんな極上のヴィン テージ・ワインだろうと足元にすら及ばない、と令嬢は恍惚と 酔いしれた。 そして祥子は、まだ荒い息をつきながら倒れている祐巳に、 再び上からのしかかった。 祥子のしなやかな黒髪が広がり、まるで二人を一つに束ねる かのように包み込んで、絡みついた。 その髪の感触、密着する肌と肌、柔らかな乳房、火照ったぬ くもり、甘い吐息、伝わってくる心臓の鼓動、そして、優しい 瞳…。 そのうちの一つすら、祐巳にとっては今日の今日まで、いく ら焦がれても得られない幻の夢でしかなかった。それが、今や その全てを一斉に自分のものにできたのだ。これが夢なら覚め ないで、と祐巳は何度も思った。 祥子にとっても、この愛くるしい少女への想いを、こうして 現実のものにできるなどとは少しも思っていなかった。いつも 少女の行動に指弾を加えてきたのは、叶えられない気持ちの裏 返しに他ならなかった。厳しい叱責にしょげかえる祐巳の姿に、 いつも締めつけられるような思いを抱えながら、素直になれな い自分を呪っていたのだ。 だが、今こうして愛しい少女と生まれたままの姿で肌を重ね 合えて、この小さな、ガラス細工のようにか弱く、しかし激し い想いを秘めた少女を、祥子は心から、自分の愛で祝福したい と思った。 「お姉さま…。わたし、幸せです…」 「祐巳…愛してるわ…」 そう言った二人はさらに一つになろうと、互いの身体を強く 抱きしめあった。そして互いの想いを一つに混ぜ合わせようと、 何度も何度も激しく求め合った。 *** 「祐巳…」 「はい?」 「私、今夜だけ不良になるわね…。無断外泊なんて、生まれて 初めてよ。きっと大騒ぎになるわ」 「あ、そ、そうですねえ、あ、あは、はは…。でも、朝になっ たらどうしましょう?私の服じゃ、お姉さまには…」 特に大柄ではない祥子だが、祐巳はあまりにも小柄で、おそ らく祥子が着られる服は無い。 「かまわないわ」 こともなげに祥子が言い放った。 「祐巳と一緒なら、平気よ。裸で学校でもどこでも行くわ」 冗談じみているが、一徹な祥子の性格では、本気で実行しか ねない。 「お、お姉さま、それは…」 絶句した祐巳。お姉さまの言葉は嬉しかったが、さすがにそ れはマズイと思った。 顔色を何色にも変えて慌てる祐巳に、祥子が思わず吹き出し た。 「わかったわ、祐巳」 そう言って祥子は立ち上がり、電話をかけた。両親にではな く、邸内の、誰か信の置ける人物にであろう。明日の朝一番に 祐巳の家まで自分の制服と鞄一式、それと着替えを持ってくる ように言いつけて、電話を切った。 喜びに押し潰されそうな祐巳が、ふと壁時計に目をやった。 まだ11時を過ぎたばかり…!!。 二人の夜は、まだまだ長い。そう思って、祐巳はベッドに戻 ってきた祥子に、再びすがりついた。 びっくりしたけど、こうしてお姉さまと結ばれることができ たのは、結果的にはあのへんてこりんな魔法少女のおかげよね…。 あれ、そう言えばあの子、いつの間に、どこに行っちゃったん だろう…?? ようやくシェイクン・ハートの不在に気がついた祐巳だった が、再び肌を重ねてきた祥子お姉さまの口づけを受けると、そ のことも脳裏からは再び忘れ去られてしまった。 *** 二階の窓の灯りが消え、結ばれた少女たちがさらに愛を確か め合う闇を迎えたのを、外から見上げる目があった。 路傍の街灯が照らす下に、シェイクン・ハートとフォスティ が満足そうに佇んでいた。 その時、シェイクン・ハートの身体に変化が起きた。全身に 蛍のような光がいくつも沸き上がり、少女の身体の回りをクル クルと弧を描きだした。そしてその光が全身を包み込んだその 次の瞬間、16歳の色気過剰なメイド魔法少女の姿が消えた。 そしてその後には、もとの姿とは似ても似つかない、ちんちく りんな12歳くらいの女の子が現れたのだった。 あのメイド服と一応同じ黒のエプロンドレスは、ゴシックロ リータというにはあまりにシックにくすんでいて、えらく地味 である。背中に背負った赤いランドセルで、少女が小学生程度 であることがわかる。そして何より、あの高慢なほどに自信満 々だった顔が、どこかはにかんだような苦笑を浮かべた、内気 で、どこかおどおどしたような表情になっている。 唯一、あの魔法のハタキだけが、その手に残っている。 「…よかったね、あの二人」 少女…シェイクン・ハートの真の姿である幼い少女が、ぽつ んと、しかし心から嬉しそうに呟いた。 「ああ、そやな。これで今回の定期課題もみごとにクリアやな。 査問官のオッさん連中も見直すこと請け合いや。家柄だけで話 は決まらんってこと、わからせて…」 「フォスティ」 少女が顔をこわばらせた。 「…言わないで」 「…あ、ああ、ええと…。ほな、帰ろか。明日はまた学校があ るんやろ」 「うん」 少女はホッと息を吐いて、初めてニッコリ笑った。
(続く)
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