For the Money!処女買います
 
 
 
 ゴクリと酒瓶をラッパ飲みしながら、白蛇のナーガは焚き火
の火を確かめた。もうちょっと温かければ起きていても辛くな
いのに、とナーガは苦虫。

 まったく、他に何かうまいやりようは無いのかしらね。やれ
やれ、とため息をつきながら、ナーガは焚き火から視線を上げ
て、周囲の真っ黒い森を見回した。

 夜の見張りはお尻にキツいのよ。まして最初の見張り番は最
悪。4,5時間しか眠る時間がないのに、4時間以上も起きて
なきゃならないなんて…昼間あんなことがあったっていうのに…。

 ナーガは再び酒瓶を大きく呷ったが、とうとう空っぽになっ
てしまった。顔をしかめて、ナーガは空き瓶を焚き火の中に投
げ込んだ。瓶は燃えさしと黒焦げの薪に当たって、ガチャンと
鳴って、薪を何本も跳ね飛ばした。

 ナーガは、一緒に旅を続けてきた女魔道士を見やった。

 リナ・インバースは、ナーガがまた酒を飲みながら見張りを
していたと知ったなら、きっとカンカンだろう。でも見張り交
代の準備をするまではどうってことないし、アルコールの影響
もまだ(ほとんど)効いてないし、大したことじゃないわ、と
思った。もっとも、リナはそうは思わないだろうけどね。

 ナーガは腰を下ろしていた薪の山から立ち上がると、旅の相
棒の元に歩み寄った。もう身体の緊張はすっかりほぐれていて、
ナーガはリナの横に座り込んだ。膝まで丈のあるロングブーツ
を脱ぐとホッとした。そして、脱いだものを積み始める。脚に
巻いた薄手の布を解いて巻きあげて置く。さらにその上に鞘に
収まった剣、さらに肩当て、その他の装備品と続く。
 とうとうナーガはブラとパンティだけの姿になった。

 ナーガは毛布の下にそっと滑り込んだ。全身すっぽり入り込
んで、ナーガは再びあたりの様子を窺った。ナーガには作戦が
あった。以前にうまく行った作戦。いったんぬくぬくと眠り込
む寸前までいって、もう起きていられなくなったら、そこでリ
ナを起こす。リナはその後の夜の見張りをずっとやるはめにな
る。リナはカンカンだろうが、そうなったらもう手遅れ。

 すでにナーガのまぶたは重くなっていた。アルコールに文句
を言うわけにはいかない。飲み始めた時に酒瓶はすでに半分空
いていた。安眠を保証するには十分な量が残っていた。

「う〜ん…」
 ナーガは一人呻いた。心は昼間にあった出来事に飛んでいた。

***

 今日の朝早く、二人はかなり大きめの町に通りかかった。そ
こに二人の興味を惹く奇妙なものがあった。大通りのど真ん中
に派手な売春宿があったのだ。おまけに、店の正面で顔見世の
女の子たちが臆面もなく自分たちを売り込んでいたのだ。

 ナーガは必死に憤懣を押し隠した。いつもこうではないのだ
が、こういう女たちへの悪印象を抱いたというよりも、自分が
夜の女に間違われた直後だったからである。

 その時のリナの反応がひどく記憶として蘇った。さっさと通
りすぎようとした二人だったが、ふとナーガは、リナの顔が真
っ赤に染まったことに気づいた。耳まで真っ赤にして、リナは
視線をまっすぐ前に向け、ガラス窓の中で二人に向かって乳首
をクリクリさせているトップレスの女を必死に無視しようとし
ている。

 そんなリナを逃すわけもなく、ナーガはもっと恥ずかしがら
せてやろうとからかった。

「ふ〜ん…ああいう女は金のためなのかしらね?それとも、人
に見られるのが好きなのかしら?」
 商売女たちのショーに親指を向け、ナーガが訊いた。

「金のためでしょ」
 あからさまに歩くペースを速めて、リナが早口で答えた。

 そういう返事ではナーガを止められない。
「たかが銀貨数枚で、ああいうことができるって、どういうこ
とかしらね?」

 不意を突くような、ぶっきらぼうなリナの返事。
「楽して金が手に入るなら誰だってやるわよ」

「楽して?」
 疑うように繰り返すナーガ。
「身体を売るのは、楽な事じゃないわ」
 すぐに言い返したナーガだったが、あんまり熱く言いつのる
のはまずかった、と、すぐに後悔した。

 だがリナは言い訳っぽく言葉を続けた。
「まさか、あたしがあいつらと同じようにやったら、十分後に
は財布をコインいっぱいにして立ち去っているわよ」

***

 もしリナがそんなことをしようものなら、結果がどうなって
も絶対にそのショーを仕切ってやるわ、とはナーガもさすがに
言えない。でも、他の立場なら…。

 ふと、隣に寝ている女魔道士のことをそんなふうに考えてい
たナーガは、そろそろ時間が迫っているのに、ひどく時計の針
の進みが遅いように感じていた。

「リナ」
 美少女魔道士をそっとつつきながら、ナーガが低い声で言っ
た。

「んん?」
 寝返りもせずに、目を開こうともせず、リナが応える。

「もうじきアンタの見張り番の時間よ」
 眠気が染み込むような声で、ナーガが静かに言った。

「見張り番なら、時間になったら起こしてよね」
 ナーガから身を離すように寝返りを打って、リナは枕を頭か
らかぶる。

 食い物だろうと生死の危機だろうと、寝起きのリナには何の
役にも立たない。だが、リナはやがて目を覚ました。リナが再
び目を覚ますまでどれくらいの時間がかかるのか、ナーガは経
験から知っているのだった。

「ねえ、リナ」
 再びナーガが声をかけた。その声は酒のせいか、少し震えて
いた。

 返事をするのに一瞬遅れたリナ。
「…ん?」
 リナはまだ見張り交替の時間なのかどうかわかっていないら
しい。

「昼間のこと、憶えてる?町で、あの売春宿の前を通った時」
 ナーガの脳裏にある考えが湧き上がっていた。

「はあ?」

 ナーガがもう一度言った。
「あの飾り窓のショーを見た時よ」

 ナーガは、何も言わないのがリナの「イエス」の返事だとわ
かっている。
「ちょっと考えたんだけど、リナが言ってたあれ…」
 咳払いするナーガ。
「リナはできるの?その、ああいう「ウリ」を」
 ナーガはすぐ言い添えた。
「その、ちょっと、本気に聞こえたから」
 ようやく話が見えてきた。

 不安げなナーガをよそに、リナはしばらく押し黙っていた。
「うん、ま、たぶん」
 問題を軽視しているかのように、返事は繰り返された。

「そんなの、信じられないわね」
 ナーガは口ごもった。自分自身ではもっとポンポン反論でき
るというのに。自分が最初から酔っ払っているのをリナは気づ
いていたんだろうか、とも思った。

 だが、ナーガへの返事は凍りついた空気だけだった。ナーガ
は待った。眠かったことももう忘れていた。とうとうナーガは
思い切って問いをぶつけた。

「誰かがリナの処女を金貨100枚で買いたい、と言ってきた
ら?」

「な、なんで、わたしが処女だなんて断言できるのよ!?」
 リナはいきなりヤレヤレと目を回したが、その声は怒りをは
らんでいたものの裏返ってしまって、動揺しているのがバレバ
レだった。

 ぴゅーぴゅーとナーガは口笛を吹きながらしらばっくれた。
リナの方は冗談では済まない。

 リナはナーガの目をじっと見据えた。
「なんで断言できるのって訊いてんのよ?」
 我慢の限界だった。

「だってえ、今だってリナの顔、真っ赤だもの〜」

「うぎゅ!」
 リナはぶんむくれ、憤然として枕に顔を埋めた。

「それに、こっちとしてはずいぶんリナにチャンスをあげるよ
うにしてたんだけど〜、でもリナが単独行動してる間に、そう
いうチャンスをモノにできたのって今まで見たこと無いし〜」
 イタズラっぽい笑い声で締めるナーガ。

「その通りよ!わたしは処女ですっ、それで満足っ?」
 リナは枕に突っ伏したまま喚いた。ナーガにはとっくに気づ
かれている真っ赤になった顔を見せないようにして。

「じゃあ、リナはまだ…」
 そう言いかけたナーガに。

「したことないわよっ!」
 枕で返事は籠もっていたが、その声はナーガをびびらせるの
にじゅうぶんだった。あんまりリナをいじりまくってからかい
すぎたら、火球(ファイヤーボール)が飛んでくるならまだし
も、下手をしたら赤の竜神スィーフィードの加護の元に竜破斬
が放たれても文句は言えない。

 頭を冷やすと、またナーガのからかいの虫が動く。
「でもさ、本当に誰かがリナにそれだけの金を積んだらどう?
特別にはずむからっていう人がさ」
 言葉を切って、ナーガは本音を吐くチャンスを探った。
「そういうのってたいてい、グダグダになっちゃってさ、それ
で…」
 ナーガの言葉が途切れる。
「…たっぷり後悔するはめになったりして…。で、特別にはず
むってのが、船いっぱいの大金で、ホクホク顔で帰ってきて…」

「あるわけないでしょ、そんなこと」
 ようやく枕から顔を上げたリナが呟いた。昼間の出来事への
照れ隠しはもうおさまっていた。
「だいたい、見ず知らずの人となんかやらないわよ」

 ナーガが一瞬考え込んだ。
「…じゃあ、もしアタシが、金貨千枚出すからリナの処女が欲
しいって言ったら?」

 二人の会話がどの方向に行くのかナーガにもそれまで予想は
ついていなかったが、今となってようやくナーガは自分が最初
から何を求めていたのかようやく自覚したのだった。アルコー
ルで元から赤く染まっていたナーガの顔が、今は火照るほどに
真っ赤だった。
 そして焚き火の灯りの中、リナの顔も同じように赤面してい
るのがナーガの目にもはっきりわかった。

「もしアタシが、って…?」
 相棒が話の行き先に、リナはあっけにとられた。急にいたた
まれない空気になった。

 ナーガは枕に頭を横たえて目を閉じた。

 明日になれば全部無かったことになる、アタシは飲み過ぎて
いただけ、だいたいリナはアタシにそんな気持ちなんか…ずっ
と…。

「ナ、ナーガ、本気なの?」
 リナが半分怯えたような声で訊いた。

 ナーガはもう自分を抑えられない。
「昼間の時からずっと本気よ」
 理性的な判断とは真逆に、ナーガが言う。

 リナは両手を自分の頬に当てた。ずっと火照りっぱなしの頬
から手に熱が伝わる。

 金貨千枚ったら、すごいじゃん、大金じゃん。

 ゴクッと息を呑んで、リナは必死で理性を保とうとする。

「五千っ」
 大金に有頂天になったリナの脳裏から、いきなりその言葉が
出た。

 そんなことするはめになるんなら、びた一文まけるわけには
いかないわっ。

 ナーガは枕から顔を起こすと、眉をひそめた。こんなリアク
ションは予想の遥か先だった。だが、こんなチャンスを逃すわ
けにはいかない。

「いいわよ」
 ナーガがキッパリ言い放った。

「あのねえ、そんな大金どこから工面するのよ」
 ナーガが同意したことよりも、大金のことですっかり気を抜
いたリナが息せき切って言った。

「それくらい持ってるわよ。あたりまえでしょ。怖じ気づいた
の?」
 ナーガは冷静に訊き返したが、リナが尻込みしたらどうしよ
う、と思っていた。金貨五千枚はリナにとってはじゅうぶんす
ぎるほどの大金だが、それでもナーガにとってその値段は安い
くらいだった。

「まさか…」
 どっちつかずのリナの返事。
「わ、わたしはただ…」
 とうとうリナは毛布から身を起こした。毛布が膝の上に落ち
たので、着ていた薄手のシャツ一枚の姿が露わになった。

「リナがしたくなくても、それはそれで何かを変える必要は無
いわ」
 ナーガはそう言い換えたが、内心ではこれからの展開に息が
詰まりそうだった。

 今のはもちろん嘘。あともうひと押しで、リナの初体験が…。
 そう思うと体中が震えるほど。

「ナーガが本気なら…ナーガにそんな大金があるんなら…」
 リナは視線をそらし、焚き火を見つめ、自分からの明言は避
けながらナーガにお鉢を回す。

「ええ、あるわよ」
 身を起こしたナーガはゾクゾクした。ナーガはそっと手を伸
ばし、リナの頬を撫でた。女魔道士は身をよけなかった。目を
閉じ、むしろその手に身を任せていた。

「お金のため…」
 そう呟いたリナの声は、小さすぎてナーガには聞こえなかっ
た。ナーガの仕草に反応して、リナも手を伸ばしてナーガの顔
に触れると、思い切ってその唇にそっとキスした。

 ナーガは躊躇せず、お返しにむさぼるようなキスをした。優
しく舌も使ってリナの唇の上を、唇の間を舐った。そしてとう
とう焦らすようにリナの口の中に舌を入れていった。
 リナも自分の舌で控えめにナーガの舌に触れ、絡めていくと、
ナーガは背筋がゾクゾクした。

 ぱっと身を離したリナの顔は真っ赤だった。
「ナーガ、呑んでたでしょっ」
 文句を言うリナの声にいつもの厳しさは無い。

「安心して、酒の勢いでこんなことしないし」
 ナーガはそう言って、何があっても途中で止めたりしないよ
うになだめた。こんなチャンスはもう二度とこない、というの
は間違いないのだから。

「それは問題ないのよ。問題はわたしのお金。昼間のことを思
い出してみて、素面だって証明しなさいよ」
 チクリとトゲのあることを言ったリナだが、その言葉は思い
もしないほど楽しげだった。

「そんなことくらい、え〜と…」
 ナーガの言葉が途切れた。今起きている出来事は確かなのに、
何もかもが夢の中のようだった。リナの顔に焚き火の灯りが揺
らめいて影を落とし、リナの髪を微風が靡かせ、近くの小川の
香りを運んでくる。これがもしもナーガが最初からお膳立てし
たものだったとしても、これ以上の完璧さを求めることなどで
きなかっただろう。

 再びナーガは、手袋を脱いだ手でリナの顔を撫で始めた。

「…初体験なんだから、優しくしてよね」
 リナが無邪気に喉を鳴らした。

 これが何かの演技なのか、それとも純粋なおねだりなのか、
ナーガには判別がつかなかった。だがナーガの心を軽くしたの
は確かだった。

 ナーガは毛布をはね除けて前に押しやると、リナの背中に手
を回し、そっと地面に横たえた。ナーガの唇はリナの反応より
も素早く再び標的を定めた。だが今回はナーガもリナも大胆に
舌を絡めたまま、互いの口の中をたっぷりまさぐってから、よ
うやく顔を離した。
 リナの口はミントの味がした。リナが町でアイスクリームを
食べていたのをナーガは思い出した。その味が残っていたのだ
ろう。ナーガは舌をいっぱいに伸ばしてリナの口の内側全部を
舐め回し、味と香りを堪能しながら、唾液を混ぜ合わせた。

 ようやくナーガが、リナの身体の両脇に両手をついて身を起
こした。ナーガはリナを見下ろした。リナの肌は焚き火の灯で
黄金色に輝いていた。リナの下着は真っ赤で、ブラとパンティ
の間、リナのお腹の上の哲学の小径にナーガの視線は釘付けに
なっていた。ナーガはこわごわと手を伸ばすと、指先でそっと
剥き出しのお腹を撫でた。

「ナーガっだめええええ…」
 くすぐったくて笑っているのか、それとも嫌がっているのか
わからない声がリナの口から漏れた。リナがくすぐられるのが
苦手だとナーガも知ってはいたが、どうしてもやめられなかっ
た。

 リナの反応に、ナーガはリナの下半身の方に位置をずらして
いった。顔がリナのお腹のところまで来ると、リナが気にして
いる貧乳がよく見えた。ナーガはそっと顔を寄せると、リナの
おへそにキスした。そこよりもっと上にキスしようと、ナーガ
は再び顔を上にずらしていた。
 その間、ナーガの唇がお腹に触れるたびにくすぐったくて、
リナの身体が緊張するのがナーガにもよくわかったが、いやが
るそぶりを見せはしなかった。そこでナーガはそのまま顔をず
らしていき、リナのブラジャーにまで達した。

 リナの意志を確認しようとナーガは見上げたが、それに対し
てリナは恥ずかしそうに顔を背けてしまった。ナーガが指をブ
ラの下に当てて、カップを上にずらしてしまうと、リナの乳房
が露わになった。きれいなおっぱいだと思ったが、ヘタなこと
を言うとリナが誤解しかねないと思って、何も言わないことに
した。
 その代わり、片方の乳首を口に含んでそっと歯で噛み、反対
の乳首を指でクリクリすると、乳首が両方ともしこってきた。

「痛くない?」
 軽く乳首に歯を立てて、ナーガが訊いた。

「う、ううん…」
 リナは息を乱してビクビクと身を震わせた。
    
 両方の乳首を順に攻めながら、ナーガはピッチを上げた。今
度は乳首を摘む代わりに、胸全体をこね回した。手の動きに合
わせてリナが全身を揺らし、やがてリズミカルに腰まで軽くガ
クガクさせてきたので、ナーガはほくそ笑んだ。

「どうかしら?」
 胸からリナの顔の上に移ってきたナーガが訊いた。

「浮遊(レビテーション)の魔法を使ってるみたいな感じ…」
 リナの声が途切れたのは、ナーガがまた顔を寄せてキスをし
たせいだった。

 ナーガに対抗するようにリナも両手を上げてナーガの胸に触
れた。そしてビキニ越しに深く乳房を揉み始めると、上になっ
ていたナーガの息がすぐに荒くなっていくのがわかった。
 それに応じてナーガはなんとか身を起こしてリナの手を逃れ
ると、両手を背中に回してビキニのブラのホックを外して脇に
放り投げ、再びのしかかってキスを始めた。

 またナーガがリナの乳首を弄ってきたので、リナも再びナー
ガの乳房を弄び始めた。ただし今度はナーガと同じく直にナー
ガの乳首を弄ることができた。でもナーガの巨乳に、リナは乳
首だけでは我慢できなくなっていた。ナーガが不満に思うかも
と思ったが、手のひら全体でナーガの乳房を捏ね回していると、
リナはそんなことを気にもならなくなって作業に熱中してしま
った。

 トップレス姿のナーガは、リナの乳首から手を離し、股間に
移していった。リナのパンティ越しの股間に指を滑らせてみる
と、すでにすっかり濡れているのに気づいた。ナーガは人差し
指でパンティの脇を引っ張った。その指をリナの下のお口に沿
って上下に滑らせると、キスしていたリナの息が詰まり、乳房
を揉むリナの手の動きがさらに激しくなったのがわかった。

「すごく濡れてる…」
 そう呟いたナーガも、アドレナリンのせいで全身がいっぺん
に腫れあがってしまったかのようだった。

「う、ううんん…」
 呻くリナは、何とかしてナーガの股間にも手を伸ばそうとす
るが、ナーガの身長が高いせいで届かない。指先がナーガのパ
ンティの上端にかすめるのがやっとだった。んもうっ、と不満
そうな声を漏らしたリナに、ナーガが気を利かして腰を少し下
げ、キスを中断し背中を丸めるようにしてリナの手に届くよう
にしてやった。リナは素早くその機に乗じ、ナーガのパンティ
の腰ひもの下に指を入れた。

「ナーガだって濡れてるじゃないの」
 いつもならナーガの十八番のちょっと高飛車な言い回しで、
リナが言い返した。

 ナーガは笑って腰を上げると同時に、顔を寄せてキスをした。
こうなるともう金の問題じゃなくて、行動が全て。ナーガはリ
ナも自分と同じようにこうしたいと思っているんだと悟った。
そう思うとますます駆り立てられ、ナーガは指をさらに押し込
んでリナの下のお口を弄り、円を描くように撫で回した。

「リナたんはこういうのもイイのかしら?」

 呻いただけで、リナは腰を突き出すようにして動かそうとす
る。

「あら、ダメよ、ちゃんと言わなきゃ」

「イイの…」
 リナがキスする口を離して喘ぐ。
「してえ…」

 下腹部を硬直させ、のけぞってしまったリナ。ナーガがいき
なり指を二本、第二関節まで突っ込んできたのだ。

「あはあああ…」
 リナは喘ぎながら、ナーガの指をもっと呑み込もうと腰を突
き出す。

 ガクガクと全身を震わせっぱなしのリナに、ナーガは全く自
分が動く必要もなかった。リナはナーガの手に向かってゆっく
りと腰を使い、ナーガの手のひらにクリトリスをこすりつけて
いた。

「これで処女喪失?」
 ナーガがキスを止めて訊く。

「うん…」
 エッチしたせいでこんなに濡れちゃうなんて、と思いながら、
リナは頷いた。

 しばらくして我に返ったリナは、まだナーガの乳房を揉んで
いる自分に気づいて、ハッとして両手を下ろした。

 ナーガはリナの脇にごろんと横になると、リナの肩を抱き寄
せたので、二人は顔と顔を合わせる姿勢になった。ナーガは身
体を少し上にずらし、リナの顔を自分の胸元あたりになるよう
にして、リナの手を自分のパンティに届くようにすると、自分
もリナのパンティに手を伸ばした。そしてナーガはゆっくりと
リナのあそこを優しく撫で始めた。

「これ以上は別料金、金貨五千枚よっ…」
 懶げにリナが言った。

 ナーガの手が止まった。
「初体験の代金は払うんだし、ここで止められるわけないじゃ
ないの。これだって初体験の一部でしょうが」
 ドライに言うナーガ。

「でも、処女喪失はしちゃったもん」
 まだ声も絶え絶えだったが、リナはそれでも自分の正当性を
主張する。

「こっちはまだものたりないのっ。これはセット料金っ。それ
に、もしアンタの言う通り初体験はそれ、二回目はこれって言
うんなら、二回目が同じ値段ってありえないでしょっ」

 ちょっと考え込んでしまったリナに、ナーガはまた指をリナ
の下のお口に這わせたので、リナは身震いしてしまった。

「じゃあ、三千…」
 リナが言う。

「五十っ」
 反対の手でリナの乳首を弄りながら、ナーガがキッパリ言う。

「千…」
 アソコを撫で続けるナーガの手に、リナはどうしようもなく
腰を押しつけるしかない。

「百っ」
 再びナーガが指を挿入して言った。

「…売った」

 リナがガクンと顔を寄せた。そこがちょうどナーガの胸元だ
ったので、リナは思わずナーガの乳房を手で持ち上げて、その
乳首を口に含んだ。だがやっと肝心なことを思い出すと、反対
の手をナーガの股間に伸ばすと、相手と同じようにアソコをま
さぐり始めた。

 ナーガは横たわったままリナの愛撫を堪能したい気分だった。
だいたい、リナのイッた回数だけが問題みたいだけど、それじ
ゃ面白くも何ともない。それに、もう金がらみでリナをイカせ
ることもない、とナーガは考えていた。

 リナの胎内に挿れていた指に、ナーガはもう一本追加した。
リナのアソコがキツキツで、このピチピチな身体に指三本は無
理かな、とナーガは思った。ところが逆襲とばかりにリナがほ
っそりした指を一本ナーガのアソコに挿入した、と感じた途端
にすぐ二本目が入ってきた。

 たちまちナーガの全身に快感が押し寄せ、この小柄な美少女
魔道士への愛撫を必死で続けた。だがとうとうそれもできなく
なってしまった。今やリナが主導権を握り、ナーガの背中に片
手を回してしがみつき、乳首にしゃぶりついたまま、ナーガの
股間に指を三本挿入しようとしていた。

「あっ…あああっ!…リナぁ!」
 全身が硬直したナーガは、リナの細い指を自分のアソコがギ
ュッと締め付けているのが、そして同時にリナが乳首に歯を立
てたのがわかった。だが、もう止めることなどできなかった。

 一本、また一本…とリナは続けた。喘ぐナーガを、リナがぎ
ゅっと抱き寄せる。リナの胸がナーガの腹部に押しつけられる。
そして、二度目の絶頂がナーガを包んだ。今まで、言葉にもで
きないようなこんな時間を過ごしたことは無かった。何もかも
が濡れそぼり、熱く火照っていた。

 痛いほどに指を締め付けられたが、なすすべもなく我を失っ
たナーガの姿にリナはうっとりした。あのナーガを操り人形の
ように自分が支配している。指を動かすたびにナーガが締め付
け、悶え、喘ぐ。何もかもリナの手の上なのだから。

 とうとうナーガの締め付けが緩んだ。ナーガの首ががっくり
とのけぞり、荒い息づかいの中、その全身は艶やかな汗が浮か
んでいた。ナーガの双乳に挟まれたリナの顔も汗で濡れていた。
だがナーガの股間に伸びているリナの手を濡らしているのは、
汗ではなかった。
 名残惜しげにリナは身を起こしたが、ナーガの背中にがっち
りしがみついていた手は力の入れすぎで痺れてしまっていた。

 ナーガはごろりと横に転がったが、その下腹部はまだひくひ
くして、喉の奥からゼイゼイと息をついている。下腹部が痙攣
するたびに、股間がドクンドクンと濡れていくのが自分でもわ
かった。パンティはもうすっかりぐしょぐしょなのに、愛液が
お尻の間を伝っていくのが感じ取れた。ナーガは両手で自分の
身体を撫でさすり、両の巨乳をいやらしく捏ね回しながら、大
きく喘いだ。

「ああん…、最高…」
 必死で空気を吸おうとしてナーガは喘いだ。

 友人が悦楽に溺れている姿を目にして、身を震わせ、汗まみ
れのリナは、自分もこれと同じ快感を味わいたくてたまらなく
なった。知らず知らずのうちに、リナの手は自分の股間に伸び
ていた。たちまちリナは、指がナーガのアソコに締め付けられ
ていることも忘れ、友人の喘ぎ声も聞こえなくなってしまった。
 ただ感じるのは火照る身体の熱と、夜陰の空気と、指の動き
だけだった。

 リナのパンティは濡れ、下の唇もじゅくじゅくしてきた。リ
ナはお尻を上げると、パンティを膝まで下ろし、後は蹴るよう
に脱ぎ捨てた。こっちに、またそっちにと、転げ回るリナは敷
布からはみ出て、今やお尻を芝に押しつけながら自慰に没頭し
ていた。

 主導権を奪い返すチャンスと気づいて、のけぞったままだっ
たナーガが首をもたげた。昂ぶったナーガは焚き火に身を寄せ、
熱気で汗を乾かし、肌は触れないほど熱くなっていた。そんな
ナーガがリナの様子に気づかないわけがない。足を地面にしっ
かり付けて、アソコを夜の空気に晒したまま、ナーガは両手を
支えにブリッジした。それはナーガにとって景気づけのような
ものだ。

 そろりそろりと、ナーガは四つん這いでリナに接近した。近
づくごとに、牝の匂いがむせ返るほどに嗅ぎ取れた。この匂い
にはどんな者だって正気ではいられないだろう。ナーガは恐る
恐る手を伸ばすと、リナの膝を押さえた。

 リナは一瞬動きを止めて、顔を上げた。

「ここ…」
 ナーガはそれ以上何も言わなかったが、すぐに意味を悟った
リナは、両膝を左右におっぴろげたまま、両手を自分の胸に当
てた。わたしの全てをナーガにあげる、の意味。
 ナーガは手を伸ばし、リナのアソコにそっと指を当てて上下
に滑らせた。たちまち指は愛液でつやつやになった。ナーガは
リナの中に指を一本、また一本と挿入した。そしてゆっくりと
抽送し始めた。

 リナの身体がびくんっと固くなったのがナーガにはわかった。
リナの膣圧が指を締め付けてくるのが感じられた。自分の乳首
を弄るリナの手の動きが速くなった。ナーガもますます指の動
きを早めた。
 上半身を支えながら、ナーガはリナの股間に顔を寄せた。最
初のひと舐めは繊細に。まるでそれはナーガにとってもリナに
とっても何かの実験を始めるかのようだった。味は濃厚で、お
世辞にも美味とは言えなかったが、ナーガはもう頭がいっぱい
だった。ヘアの舌触りもたいしたことはないのに、それでもひ
と舐めしたら、二回、三回と舐めてしまい、もう手遅れだった。

 舐めていくうちにどんどん良い味になっていく。最初のキツ
かった香りも慣れたせいか薄まって、気にならなくなった。指
を抽送していくうちに、一番美味しいのは湧きたてのリナの愛
液だと気づいたナーガは、リナから引き抜いた自分の指を貪る
ように舐め回した。

「あっ…ああんっ!」
 リナは腰を突き出し、ナーガの顔にグイグイ押しつけて、息
が続くように体勢を変えようとした。だがナーガの責めは続い
た。リナが動くたびに新たな滋味がどんどん湧き上がってくる。
 またナーガが責める。リナは悲鳴をあげながら、ナーガも予
測の付かないほどの勢いで腰をガクンガクンと揺さぶった。し
かしナーガは責めの動きを何とか保とうとする。ナーガの長い
舌がリナの陰唇の頂で固くしこっている肉芽をぴちゃぴちゃと
舐ったり、ねっとりと包み込んだりした。

 再びリナは全身をこわばらせ、それまで乳首を弄っていた両
手を地に着け、爪を芝に食い込ませて引きちぎった。急にナー
ガが動けなくなった。リナが両膝をギュッと閉じ、ナーガの頭
を挟み込んでしまったのだ。

「あああっ…っあああああんんんっ!」
 リナが絶叫しながら全身をえび反らせた。脚の筋肉が突っ張
り、胴体は汗に濡れて焚き火の明かりを反射した。そしてよう
やくリナはぐったりと脱力した。両脚も力無く地面に落ちた。

 ナーガは首のあたりをさすりながら身を起こした。両耳がリ
ナの脚でひどく挟み込まれてしまったのだ。天国から真っ逆さ
まに落下したかのようにピクピクと痙攣している小柄な少女を、
ナーガは見つめた。

「も…もう…だめぇ…」
 横向きに転がって脚を閉じ、リナが呟いた。ナーガが身を反
らすと、その体勢からはリナのアソコが丸見えだった。ぎゅっ
と固く閉じられた陰唇は、リナ自身の愛液でつやつやと濡れ輝
いていた。

 長い夜だった。どのくらい時間が経ったのかナーガにはよく
わからなかったが、けっこう夜も更けたに違いなかった。ナー
ガはゆっくりと毛布を手にして、二人の上に掛けた。毛布の下
は暑すぎるくらいだった。

 横になって、親友の眠る姿を見ていると、ナーガは矢も楯も
たまらず自分自身の欲望を満たし始めずにはいられなかった。
あれだけの大金の代償として、このリナの寝姿をムダになんか
できるわけがない。結局ナーガが満足するにはその夜いっぱい
が必要だった。そしてナーガは自分の股間に指の魔法をかけっ
ぱなしのまま眠り込んでしまったのだった。

***

 ナーガが重いまぶたをゆっくりと開けた。いつも朝日のまぶ
しさは厄介だが、酒を飲んだ夜の後では尚更だった。だが横た
わったままのナーガは、昨夜飲み過ぎたわけではない。なのに
全身ガタガタだった。
 ナーガがふと横を見やると、リナが焚き火の傍でフライパン
を手に何かやっている。

 昨夜のことが徐々に思い出されてきた。最初は自分の正気を
疑ったナーガは、次にはこれが現実かどうかを疑った。身を起
こしたナーガは、まだ濡れそぼったパンティだけの姿だった。
それで全ての疑いは晴れたと納得しないわけにはいかなかった。

 これまでの人生で生まれて初めて、ナーガは何をどう言えば
いいのかわからなかった。

 幸いなことに、リナが目覚めたナーガに気づいて声をかけて
きた。

「あ、朝食できたよ」
 リナの声はウキウキしている。

「ありがと…」
 だが、再びナーガは言葉を失った。何を言っても自分には似
つかわしくないような気がしてならなかった。何気なさを装っ
て、ナーガは傍に放り出していたブラジャーに手を伸ばした。
ブラを着け、さらに肩当てとブーツを除く残りの服も身にまと
うと、ナーガは焚き火に歩み寄った。

 腰を下ろしたものの、ナーガはやっぱり言葉が見つからなか
った。リナが食事を前に差し出したので、ナーガは朝食にあり
ついた。空きっ腹には何でも美味いとは言うが、実際にリナの
朝食は美味かった。
 食べながらナーガはちらっ、ちらっと、リナを盗み見た。リ
ナはやっぱり上機嫌のように見える。なぜなのか、ナーガは訝
しがった。

 それはつまり、リナももっとこういうことをしたいってこと?
それとも、もっと二人がマジな深い関係になりたいって望んで
いるってことなの?

「あのさ…、今日はどうする?」
 ナーガは二人の会話でこういう受け身の役割になるのに慣れ
ていなかったが、あまり強引に出るわけにもいかないし、何よ
りナーガはあまり明け透けな手段はとらずに、リナの今の気持
ちをそれとなく知りたかったのだ。

 リナは焚き火から視線を上げた。
「そうねえ…とりあえず、代金を払って欲しいわね」
 そう言ってリナは満面の笑みを浮かべた。

「ああ、そうか…」
 ナーガは苦笑して、頭を手で掻いた。

 リナはナーガに向かって手を差し出した。
「金貨5800枚、きっちり…」

「ちょ、ちょっと待って、5800?話が付いたのは五千と百
だったでしょ?」
 余計な七百がどこから出てきたのか理解できず、ナーガが言
い返した。差し出したリナの指の爪に、昨夜リナが地面に食い
込ませた時の土が残っているのを、ナーガはなぜか気になって
しまった。

「いーえ、5800よっ。五千はわたしの初体験代。百は二回
目。あとは一回ごとに百ずつよ」
 カナリアを食った猫のような顔でリナが言い切った。

「あの後、七回もやったっけ?」
 呆れて口をぽかんと開けたまま、ナーガが問いただした。

「そうよ、途中で代金の交渉するなんてわたしらしくないでし
ょ。なんせアレの真っ最中だったんだからさ」
 再び例の笑顔満面。
「それにさ、これってわたしからすれば出血大サービスよ。値
引き交渉もしてないんだから」
 ナーガがいかにお買い得だったかを力説するリナ。もっとも
リナ自身がどれだけ思いっきり楽しんだか、そしてどれだけエ
ッチ方面で学んだか(もっとも野郎相手の場合に役に立つかは
疑わしい知識だが)を、ナーガの値引き交渉材料として言わせ
るつもりは毛頭無かった。

 ナーガはふうっとため息をついて、また頭を掻いた。
「ったく、こすっからい商売女ね、アンタって」
 苦笑したナーガがふと見ると、リナの乳首が立っていること
に気づいた。

 リナの笑顔がまた大きくなる。
「安心して」
 ウインクするリナ。
「次は割引してあげる」

***

(エピローグ)

「ちょっと!待ちなさいってば!」
 石畳の道を足音も荒々しく、リナは前を駆けていくナーガの
後を追いながら叫んだ。

「おほほほほほほほほほ!」
 哄笑するナーガは、半ばスキップするように走っていたが、
長い脚のおかげでリナにたっぷり差を付けていた。
「そんなノロマな足で、捕まえられるもんなら捕まえてごらん
なさい!」

「ナ〜〜〜〜ガ〜〜〜〜〜っっっ!」
 吠えるリナがさらに必死になって追う。
「金貨8300枚も借りがあるのよ、あんたは!!!」
 今やリナの走る一歩ごとに大地が震撼し、真っ赤な炎のオー
ラがリナを包みこんでいた。そのせいで、町の人々はみな家の
中で息を潜めていた。

 振り返ったナーガもさすがに腹の底から恐怖が湧き上がって
くる。
「金は返す当てがあるって言ったでしょ!」
 そう言ったナーガも、もはや何よりも我が身の安全とばかり
にスピードを速めた。

「そう言ったのはもう二ヶ月も前じゃないのよ!」
 リナが宙に飛び上がった。
「火球(ファイヤーボール)っ!」
 魔法がリナの手から放たれた。

《どっかーーーーん!!》

 魔法がちょうどナーガのほんの数歩後ろで炸裂し、その衝撃
でナーガは前に押し出され、そのせいで一歩か二歩、足の運び
が乱れた。

「明日には払うってばっ!たいした金額じゃないでしょ!」
 言い返したナーガだったが、リナの怒りの炎は収まらない。
とうとう二人は町の郊外にまでやって来た。隠れる場所が多く
なり、とばっちりの被害が及ぶものも少なくなる。そうなれば
リナをとっちめられるとナーガは踏んだ。

「たいした金額じゃない、ですってえ〜!!」
 喉を振り絞ってリナが叫んだ。
「わたしの処女を奪ったくせに!」

「買ったのよ!」
 何とか隙を増やそうとしながら、ナーガが言い返した。

「踏み倒そうとしてるくせに!」

「リナ、冷静になりなさいな!お金は工面するから、約束する
わ!」

 その時ナーガは、背中にゾクゾクと何か絶望的な冷たいもの
が走るのを感じ、そっと振り返った。
 リナは追うのを止めて立っていた。微かに風に乗って詠唱の
声が聞こえた。

「黄昏よりも昏きもの…」

 リナが両手を頭上に伸ばした。すでに身の回りには真っ赤な
エネルギーが集まっている。

「血の流れより紅きもの…」

 ナーガのスピードが一気に上がった。
「飛翔(レイ・ウィング)っ!!」
 叫ぶやいなや空に舞い上がった。

「そう簡単に逃がすもんですかっ!」
 息を詰めてそう呟くと、リナは呪文を続けた。

 何の危険も感じていなかった近所の羊飼いが、ふと世話をし
ていた羊の群れから顔を上げて、二人の女魔道士の姿を視界に
捉えた。羊飼いはその顔から笑顔を消すこともできなかった。
 羊飼いは不運にも笑顔を顔に貼り付けたまま、至近距離の竜
破斬(ドラグ・スレイヴ)の衝撃波を喰らってしまった。後に
は何も見えず、再び何かが聞こえることも無かった。


完

 

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