用意周到
二人は豪華絢爛なホテルの一室にいた。 その理由は単純明快。こういった類の状況は、どちらの家で あってもふさわしくないものだから。 時に物事を進めるには苦労して骨を折ることになるのと同様、 人生というものはどこそこかまわずに愛情を爆発させていいほ ど単純ではない。物事を運ぶのには手順というものがあり、そ れこそ小笠原祥子がかわいい「妹」に一緒に過ごしながら常に 教えてきたことだった。 話し方、歩き方、所作、食事の作法、そして、物事の考え方。 そして今日…祥子は別の新たなことを教えることになる。 急いでここにやってきた二人だったが、無計画だったわけで はない。祥子は前もって電話で予約していたが、それはもちろ ん柏木の名前でであった。柏木優はそんなことを気にも留めな い人間なので、ホテル側はいつも優にそうしておくのと同じよ うに、部屋の鍵を祥子のために部屋の前に置いておいた。 これは祥子の考えではなく、祥子にこの場所を伝え、優の了 承をとりつけておいたのは、祥子の赤毛のいとこだった。 祐巳は部屋のしつらえに気後れしてしまった。豪華で、祥子 にふさわしい完璧さ。二人のために最高のディナーと、ワイン ボトルが用意されている。 完全無欠の、愛の巣。 この部屋で優が獲物を美味しくいただいちゃったのかもしれ ない、と祥子はふと思ってしまった。そして祐巳の弟ももしか してその毒牙にかかったのかも(今はまだでも、いずれは…) などと考えて、祥子はゾッとすると同時に苦笑してしまった。 祥子は祐巳の背後から両腕を回し、愛情あふれた声で訊いた。 「気に入ったかしら?」 祐巳は本当にどういえばいいかわからなかった。こんな状況 に置かれたこともなかったし、全くこんな事をするつもりもな かったのだから。 「は、はい、お姉さま」 息を詰まらせて祐巳が言った。いつものオドオド、でも愛く るしく、神経過敏な祐巳。 「そう。それじゃ、食事にしましょう」 祥子が先に立って、祐巳の右手をとった。祐巳はコクンと頷 くと、ディナーが満載のテーブルに歩み寄ったが、今の祐巳の 身体が求めていたのは食事ではなかった。祐巳の全身が祥子の 手の感触に悲鳴をあげていた。 祥子は小柄な少女に寄り添っていが、テーブルにまだつかな いうちに右に顔を向け、祐巳の手をそっと引いた。そしてその まま、ベッドに向かって行った。 祐巳は黒髪の上級生をハッと見上げ、そして自分がどこに向 かっているかに気づくと、目を輝かせた。祐巳は祥子に身を寄 せ、足を停める前に声をかけた。 「お姉さまも『お腹が空いてる』んですね」 祥子は祐巳の言葉に真っ赤になったが、年下の少女に気後れ するわけにはいかないと、返事をした。 「祐巳もでしょ」 そして素早い動きで、「妹」の唇にそっと口づけした。 顔を離して、祥子が言い添えた。 「でも、どんな『お料理』を用意してるかはまだ何も言ってな くてよ」 その言葉に、祐巳の頬が真っ赤に染まる。 「…お姉さまってば!」 祐巳はそれしか言えなかった。こんなふうにしばしば閉口さ せられ、時には身の置き場もないほどに思わされてしまっても、 祐巳は祥子のことを愛しているし、これが愛する人の一面だっ た。祥子が祐巳を気まずくさせるどころか、明るい気分になっ てもらおうとしていることも、祐巳にはわかっていた。 これからがキスの本番、とばかりに祐巳はもう待ちきれなく なり、自分の想いを伝えるように舌を這わせた。二人がベッド にたどり着く前に、祐巳のぎこちない両手がロングヘアの令嬢 の服の上からまさぐり、脱がせようとする動きに、祥子は大き く喘いだ。 だがこんな時にもたしなみが染みついている祥子は、誰でも ない、最愛の少女に対しては、淑女として男のような乱暴な真 似はしたくなかった。だから気持ちよくなりながらも祐巳にし たいようにさせてやっているのは、祥子がそれほどに祐巳を愛 しているからであり、そして祐巳を初めて会った時同様に汚れ のないままにしておきたかったからだった。 祐巳は祥子の首筋にキスを降らせ、両手で隅々まで触れてく ると、祥子は祐巳と一緒に空を飛んでいるかのように思えた。 だが祥子は祐巳の一挙手一投足、キスの一回一回までも記憶 にとどめ、いつでも思い起こせるように心の奥底に封じ込めて しまった。 年下の小柄な少女は、思ったよりもずっと素早く祥子の服を 脱がしてしまった。そして熱い想いのままに祥子をベッドに押 し倒した祐巳は、いつものように愛らしかった。 「…いいですか?」 祐巳がいつもとは違って「お姉さま」と呼びかけなかったこ とに、祥子が気がつかないはずはなかったが、それでも祥子は もちろんその事には触れずに答えた。 「いいわよ、祐巳」 祥子は小さな少女の髪を撫でた。祥子は祐巳の髪が好きだっ た。 祐巳は祥子にニッコリ笑いかけると、再びお勤めに戻った。 祐巳は祥子をセクシーなランジェリーだけの姿にしておいた。 というのも、それを剥ぎ取ってしまったら、祥子の艶やかな裸 身を目の当たりにしてしまうと思うと、つい気が引けてしまっ たからだった。 だが、祐巳がそう考えてしまうのも無理からぬことではあっ た。本能に身を任せつつも、祐巳は優雅な磁器人形を扱うよう な注意深さをギリギリ取り戻した。 シルクのブラ越しに乳房に触れてくる祐巳の手の感触を感じ、 そして少女の香りを吸い込んだ。バカバカしいかもしれなかっ たが、この少女は愛らしい、桃の香りがした…。だから祥子は 桃の香りが大好きで、誰かが好きな食べ物は何かと訊いてきた ら、これからずっと間髪入れずに桃が好きって言うでしょうね、 と思うと、祥子は苦笑を禁じ得なかった。 甘い吐息を漏らしながら、祐巳は最愛の祥子の身体を思うが ままにした。 口から唾液を糸のように引きながら、滑らかに隅々まで口づ けしていくことで、祐巳は自分が祥子に触れているということ が夢なんかではなく、自分が一人ではないということを確かめ ようとした。 でも、あせって今のこの時を台無しにはしたくなかった。 これからどうしたらいいのか祐巳には深い考えはなかったの だが、幸いなことに、自分のしたいことをどうすればいいのか は自分の身体に任せておけば良かった。それに、今の祐巳なら 祥子にとって何をしても全てが特別なものになってしまうのだ から。 祥子の美脚があまりに神々しく見えて、祐巳は吸い寄せられ るように顔を寄せ、右手を祥子の膝に置くと、真っ白い太股に ぐっと顔を近づけて、手で押さえたままキスをした。すると祐 巳の左のポニーテイルが祥子の「真ん中」に当たって、想像も できないほどの喘ぎ声が祥子の口から漏れた。祥子が祐巳のキ スにばかり気をとられていて、あまりにも突然のことだったか らである。 その様子に祐巳は笑みをこぼし、自分がうまいことやったん だと思ったが、それと同時に祥子が祐巳を胸まで引き上げると 耳元に囁いた。 「祐巳、はしたなくてよっ」 今まで祥子から何千回と言われ続けてきたこの言い回しには、 祐巳にとって特別な反応を引きおこす効果があり、祐巳もそれ を抑えることすらできないのだ。 祐巳は目を回し、真っ赤に頬を染めてうつむいてしまった。 こうすればたいていは気が落ち着くのだが、今回はうつむいた 祐巳の視線の先に祥子の胸がまともにあったせいで、祐巳はま すます赤面するばかりだった。 優位を取り戻した祥子は、この小柄な妹の身体の奥に熱い想 いがじゅんっと湧き上がっていることに気づいていた。そして それが全部自分に向けてであってほしかった。 祐巳の行為をやめさせようとしなかったのは、気持ちよかっ たからどころではなく「最高に」気持ちよかったからだった。 今それをやめさせたのは、この状況で完全な優位を保ちたか ったからだった。その時まで、祥子は自分がどれほど祐巳のこ とを欲しいと思っていたか、そして祐巳もまた自分のことをど れほど欲しいと思っていたかを、わかってはいなかったのだ。 祥子はまず祐巳を仰向けに、超豪華キングサイズのベッドの ちょうど中央に寝かせると、服を脱がせにかかった。上着を一 度に脱がすと、祐巳は目をギュッと閉じて真っ赤になった。祥 子があまりにも丁寧に念入りだったからである。 祐巳をすっかり生まれたままの姿にしてしまうと、祥子は祐 巳の横で両膝を立て、祐巳の顔から小振りな乳房へとなぞるよ うに片手を滑らせ、そしてぎゅっとわしづかみにすると乳首を 愛撫しながら、祐巳の耳に熱い吐息を漏らし、耳たぶをしゃぶ って訊いた。 「祐巳、気持ちいい?」 祐巳は返事代わりに喘ぎながら、笑顔を見せた。祥子の愛撫 は最高だった。祥子の左手が祐巳の内股に優雅に滑り込み、小 さな子供をあやすように祐巳のあそこを指先でそっとまさぐっ た。…ほぼ同じ場所を上下に動かすと、祐巳はビクンッと背中 をえび反らせた。 少女を魅惑する術にも祥子は長けていた。祥子は祐巳の胸元 に顔をすり寄せながら、時々祐巳の目を盗み見た。全くの無抵 抗な状態になってしまった祐巳は、もう蛇に睨まれたネズミ同 然だった。たとえ祥子に抗おうとしてもできなかった(もっと も、そんな気になるわけがないが)。 祐巳は天国にいる気分だった。祥子の愛撫は、今まで遭遇し たこともないほどに最高の経験だった。 「紅薔薇のつぼみ(ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン)」 は自分の手札を全て明かすことにし、プティ・スールのありと あらゆるところをキスし、舐め、指でつまんだ。祥子は祐巳を 最高のやり方で初めての絶頂に導いてやりたかった。そしてそ のギリギリ直前でずっと焦らし続けた。祐巳が哀願してくるま で。 祥子は祐巳の上にまたがり、全身で上から覆い被さった。今 こそ最高の愛撫をしてあげる時と判断したのだ。祥子は祐巳の お腹のおへそに沿って指を這わせ、そのまま股間に向けて滑ら せていくと、祐巳がまるで命令でもされたかのように喘ぎ声を あげた。 指がどんどんと秘所に入り込み、すぐに敏感な小さな蕾を見 つけ出した祥子には、妹がどれほどここを弄って欲しいと思っ ているか、どれほどこの異常で官能的な喜びに満たされている か、手にとるようにわかった。 祥子は祐巳の顔にひとまずお別れのキスをすると、そのまま 下に、下にと移動していった。…そしてついに祐巳の愛らしく 鋭敏な肉蕾を眼前にすると、祥子は舌でその肉芽を滑らかに舐 めあげながら、同時に指をさらに下に向けて、入口を見つけ出 し、祐巳が永遠に覚えているようにとばかりにじっくりと弄り だした。 愛する少女を全裸にしてベッドに迎えて、その欲望を限界点 以上に越えさせてしまったと感じた祥子は、とうとうそこであ きらめ、自分の妹を「解放」させてやることにした。 しかし祥子は当たり前のことで満足するような女性ではなか った。特別なことをしなくては、と思った祥子は、それを実行 に移した。 祥子が指を一本祐巳の胎内に根元まで挿入すると、祐巳は身 体の底から甘い女の喘ぎ声を発した。祥子は目の前に給仕され たキャラメルを舐め続けながら、祐巳の膣内を入念に、まるで 何かを探すかのようにこね回した。 そして、祥子の指が何かに当たった。祥子自身の腕前だけで なく、祐巳が大きく喘いだことでも、それがわかった。 祥子の甘美な愛撫を受けて、祐巳は呻くばかりで、年上の少 女に向かってゆっくりと腰を使い始めていた。この快感が今の 祐巳の全身を支配する原動力であり、自分の動きに合わせて反 応する祐巳の姿を凝視しながら、この少女を悦ばせることに夢 中になっていた。 強烈な祥子の手の動きに、祐巳が絶頂に達すると、切れ切れ の言葉が耳に入った。祐巳が囁いたのは他でもない、祥子の名。 そのことに祥子は完璧に満たされた。祥子は小柄な少女を腕 の中に抱き寄せ、全身を撫でさすって落ち着かせた。深い満足 感に浸りながら。 だが、祐巳がすっかり我に返ると、まだ愛しい姉に同じ「解 放」をもたらしていないことに気づいた。 そこで祐巳はチラッと「お姉さま」に向かって誘惑するよう な一瞥を投げかけ、これ以上ないほどのしぐさを見せた。 「お姉さまぁ、わたしにもさせてください…」 祐巳の幼い甘え声は効果覿面だった。 「…ええ、お願いね」 最愛の恋人の口からそんな言葉が発せられてしまっては、祥 子にはそれしか言いようがなかった。 祐巳は祥子の乳房を艶めかしくその手にとって乳首を味わお うとし、ひと舐めして祥子の反応を窺った。祥子はあっという 間に顔を赤く染めていた。祥子が赤面するなんていつもなら見 られない表情は、祐巳にとっては新鮮だった。しかもこんな些 細なことだけでこれだけの反応を起こさせたことで、少女は勇 気づけられてさらに先に進んだ。 祐巳は片方の乳首を口に含んで止むことなく吸い続けるとと もに、もう片方の乳首も忘れることなく手を添えて、きゅっと つまんでみると祥子が大きく喘ぐのが聞こえた。 祐巳は果てしなく年上の少女を責め続けた。太股を舐め、首 筋に歯を立て、お腹にキスし、乳房を揉み、祥子の内奥の欲望 を駆りたてた。…祥子をついに約束の地に導くその瞬間に至る まで。 耐えきれなくなった祥子が妹を押しのけようとした寸前、祐 巳が祥子の最も深い胎内を刺激したその瞬間、祥子はぎゅっと 目を閉じ、よがり声をあげながら首をのけぞらせた。 祥子の反応を知って、少女はさらに先に進むことに決め、全 身を触り、さすり、舐めた。恋人がますます強烈な大声の反応 をしてくるたびに、祐巳はしかしますます祥子の中に侵入し、 ついに完全な体勢に達することができた。 祥子の敏感な肉芽に鼻を擦りつけ、舌で祥子の胎内をまさぐ り、奥深くにまで伸ばしたのだ。 祥子が限界ギリギリまで追い詰められていくのを目にしなが ら、祐巳の舌は侵入をやめようとはしなかった。祥子が髪に指 を絡ませてきたと祐巳が感じたとたん、祥子は祐巳の顔を股間 に押し付け、その口に向かって激しく腰を使った。 だがそれも長くは続かず、高慢な姉はビクッと全身をこわば らせ、祐巳の名前を叫びながら絶頂に達し、オルガスムに全身 を痙攣させたのだった。 二人の愛の営みは睦言の囁きとわずかな愛撫での表現になっ ていき、やがて互いを夢の領域に誘って深い眠りについたのだ った。 一つ、確かなこと。 紅薔薇姉妹は、もはや普通の少女の関係ではないということ。
完
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